台湾軍の漢光演習で、多連装ロケット砲を使った訓練が行われている(I-Hwa Cheng/Bloomberg via Getty Images)I-Hwa Cheng/Bloomberg via Getty Images)

米国防次官、下院議長訪台後の中国軍による大規模演習…侵攻の「予行演習」

米国のコリン・カール国防次官(政策担当)は、中国共産党が向こう2年以内に台湾侵攻する可能性は低いが、台湾への軍事的圧力を強める可能性はあると指摘した。また、8月のペロシ下院議長の訪台後に中国軍が実施した大規模な演習は、台湾侵攻を想定した「予行演習」だったと論じた。

カール氏は4日、ブルッキングス研究所で開かれたフォーラムで、中国は台湾や西太平洋付近での将来の軍事行動への道を開くために、台湾海峡での「ニューノーマル(新常態)」の構築や国際社会に中国の対台湾政策を容認させようと圧力をかけていると述べた。

中国は8月のペロシ米下院議長の訪台に反発し、台湾周辺で大規模な軍事演習を実施した。カール氏によれば、これは周辺海域の封鎖や侵攻がどのような形になるかを試す「予行演習」だったと述べた。「(習近平国家主席は)おそらく2027年までに中国軍が(侵略)能力を備えるだろう」と危機感を示した。

またカール氏は、中国軍が国際空域・海域で活動する米国や同盟国の航空機・艦船に接近したり、追尾したりするなど危険な行動を繰り返して「勢力圏の確立」を図っていると指摘。こうした台湾海峡での「安全で専門的でない」活動によって、数年以内に衝突を誘発しかねないとした。

その一例として、南シナ海の海上で5月、中国軍機が豪軍のP8哨戒機に接近しフレアと小さな金属片「チャフ」を放出した威嚇行為を挙げた。少なくとも1片がオーストラリア軍機のエンジンに入った。カール氏は「大災害を引き起こす可能性があった」と非難した。

米中の軍事力のバランスについて問われたカー氏は、中国は驚くべき軍事近代化を進めており米国との格差は縮まっているが、米国は依然として世界で最も有能な軍隊であると答えた。また、2027年を念頭に、米軍は依然として多くの行うべきことを認識していると強調した。

さらにカール氏は、米陸軍と海兵隊は同盟国とともに新しい取り組みを採用しているとした。これには、中国を念頭に設けた安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」を通じて、米英が技術協力しオーストラリアに原子力潜水艦を配備することや、日米豪印4カ国の協力枠組み「QUAD(クアッド)」が含まれる。

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