新発見!【アルツハイマー病】は自己免疫疾患だった

少し前に、カナダの科学者たちが、アルツハイマー病の原因について、自己免疫疾患である可能性を示唆しました。

アルツハイマー病は自己免疫疾患!?

世界保健機関(WHO)によると、世界には約5千万人の認知症患者がおり、毎年1千万人が新たに発症しており、およそ3秒に1人が認知症と診断されていることになります。

アルツハイマー病の原因については、長年、「アミロイドβ仮説」が有力視されてきました。しかし、アルツハイマー病患者におけるいくつかの現象が仮説と一致しないため、論争も起きていました。例えば、脳にアミロイドβ斑が溜まっても、アルツハイマー病でない場合もあり、アミロイドβの除去を目的とした薬剤の臨床効果については不明な点も多くありました。

アミロイドβと脳神経細胞。(健康1+1/大紀元)

カナダの科学者たちは最近、アルツハイマー病患者の脳に見られるアミロイドβが、実は体の免疫反応によって放出される物質であることを示唆する論文を発表しました。 さらに彼らは、アルツハイマー病は脳を中心とした自己免疫疾患であると推測しています。

自己免疫疾患とは、体内の免疫システムが体を攻撃することによって引き起こされる病気です。

脳が外傷を受けたり、細菌が存在すると、脳内で免疫反応が起こります。アミロイドβはこの免疫反応が複合的に作用したものです。

通常、アミロイドβは脳の免疫システムの一部であり、異常なタンパク質ではなく、脳内の正常な分子であると考えられています。

しかし、このアミロイドβには免疫調節・抗菌作用があることが実験によって明らかになっています。そのため、誤って自分の神経細胞を攻撃し、神経細胞が壊死して分解されます。

すると、分解された物質が近隣の神経細胞に広がり、さらにアミロイドβタンパク質の放出を誘発します。そして、最終的にはアルツハイマー病につながる慢性自己免疫サイクルに発展していくのです。

またある実験では、アミロイドβタンパク質は単純ヘルペスウイルスに有効で、大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、クレブシエラ・ニューモニエなど、さまざまな細菌を死滅、分解することがわかりました。研究者らは、今回の発見が、アルツハイマー病が自己免疫疾患であるという考えを裏付けるものであると考えています。

アルツハイマー型認知症は、発症のきっかけが多岐にわたり、臨床症状も複雑なものです。しかし、アルツハイマー病が自己免疫疾患である可能性を示す手がかりは、研究の中で他にもありました。

1993年に『科学』(Science)誌に掲載された論文では、アルツハイマー病の原因が免疫系の問題である可能性が示唆されています。これは、抗炎症剤がアルツハイマー病を緩和することが、小規模な試験で確認されたからです。

アルツハイマー病の解毒剤になる!?
抗炎症作用があるトリプトファン代謝物

研究者たちは、もしアルツハイマー病が自己免疫疾患であるならば、他の自己免疫疾患と同様に、治療法があるかもしれないと考えています。 そうすれば、他の自己免疫疾患と同様に、アルツハイマー病も内因性調節因子によって治療や介入を行うことができるのです。

しかし、カナダのトロント大学の化学教授でクレンビル研究所、所長のドナルド・ウィーバー氏は、《大紀元》のインタビューで「アルツハイマー病は自己免疫疾患かもしれないが、関節リウマチなど他の自己免疫疾患の治療に使われる薬がこの病気に有効であるとは限らない。脳の自己免疫をターゲットにした新しい薬剤を特別に設計・開発する必要がある」と語りました。

ウィーバー氏はさらに、彼のチームの研究は、「アルツハイマー病が自己免疫疾患であるという新しい理論に基づいた新しい治療法の設計 」に焦点を当て、「人間の脳に共通する化学物質を特定し、それを起点としてアルツハイマー病の新薬を設計すること 」が目標であると述べています。

そして研究結果から、ある種のトリプトファン代謝物が抗アミロイドβ凝集活性を持つことを発見しました。これにより、トリプトファン代謝物がアルツハイマー病を対象とした免疫異常の新規治療薬の開発に役立つ可能性があることが示されました。

人間の脳腸軸のコミュニケーション・メカニズムに基づいた治療法を提案する科学者もいます。例えば、特定の腸内フローラの活性を高めることで、神経活性を持つトリプトファン代謝物を生成し、アルツハイマー病などの神経変性疾患に介入・治療することができるといいます。

李路明