中国人権派弁護士の余文生氏(大紀元)

北京で自宅軟禁状態の元人権派弁護士「一刻も早く脱出したい」

「これは(監視機)は、中国では人権が恣意的に蹂躙されている証拠だ」ー。北京の著名な元人権弁護士余文生氏は自宅ドアに取り付けられた監視機を強引に取り外して廊下に投げ捨てた。8日、ツイッターに投稿した映像で当局に対する抗議の意をあらわにした。

余氏は、第20回共産党大会を機に政権に見切りをつけたという。目下最大の望みは「中国からの脱出」であると失望感を隠さない。

余氏によると、欧州連合(EU)のミシェル大統領の訪中前から始まった事実上の自宅軟禁状態は9日時点も続いている。中国共産党は政治的・外交的に敏感な時期を迎えると異見者を拘束するなどして一層言論を厳しく弾圧する。

法輪功迫害や土地収用、香港民主化運動などに法的支援を続けてきた余氏は、これまで何度も収監され、拷問も受けている。直近では国家主席の公選制導入などを求める憲法改正を提言したため、2018年に転覆扇動で逮捕、4年の懲役刑を受けた。今年3月に釈放されたが、当局の監視下に置かれている。

変わり果てた中国

余氏は最近、米ラジオフリーアジアの単独インタビューに答え、4年間とその後の監視生活について語った。過去に拷問を受けた後遺症で、今も右手で字を書くことができないという。

「過去4年で中国はあまりにも変わり果ててしまった。有能だった人権派弁護士は今やほとんど弁護士免許をはく奪され、残された人たちも多くは政府との正面対決を恐れ、声を上げられないでいる。環境が悪化の一途を辿っている」

余氏は国外への脱出を希望しているが、余夫婦は当局から出国を禁じられているため海外渡航はできない。

「今の生活は家族がそばにいることを除けば、基本的に刑務所にいるのと同じだ」「現在の中国社会は、私たち人権弁護士や人権擁護者のみならず、社会全体が恐怖に包まれている。もはや、幸せや豊かさ、希望を感じられない」と余氏は心中を吐露した。

中国の弁護士界では、11月の反ゼロコロナ抗議デモ「白紙運動」の参加者に無償の法律支援を提供する動きがある。人権派弁護士が全国で一斉拘束された2015年の「709事件」以来の弁護士の再集結となる。

しかし、余氏は歓迎の思いと共に同志らが再び弾圧されることを懸念している。すでに「白紙運動」のデモ逮捕者を支援する弁護士の中で多くが当局からの嫌がらせや脅迫を受けているという。

以前の大紀元のインタビューによると、余氏の父親は中国空軍将校で、外国要人接待も担当。 父親が香港や海外の新聞を持ち帰ることもあり、余氏は少年時代から、松明の薄明かりを頼りに国外情報に触れる機会があった。こうした背景から、余氏は人権と自由の尊重を堅持していく姿勢を示している。

余氏は収監中に2021年度の人権のノーベル賞と称される「マーティン・エナルズ賞」を受賞している。

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