2022年6月に実施された国際海上演習「 Rim of the Pacific(環太平洋)」に参加するため、太平洋を通過するカナダ海軍のフリゲート「HMCSバンクーバー」(ミーガン・アレクサンダー(MEGAN ALEXANDER)三等兵曹/米国海軍)

カナダ、「破壊的」な中国を視野に入れたインド太平洋戦略を打ち出す

カナダは、太平洋国家としての「地域の平和と安全保障の利益」を推進するため、待望のインド太平洋戦略を立ち上げ、中国に対してより厳しい姿勢を示した。

カナダが2018年に米国の要請で中国通信大手ファーウェイの幹部、孟晩舟氏を逮捕して以来、カナダ政府と中国政府の関係はぎくしゃくしている。 孟氏は、詐欺容疑で米検察当局との司法取引に合意し、2021年9月に中国に帰国している。 同時期に、中国は孟氏の逮捕直後から拘束されていたカナダ人2名を釈放した。

2022年11月末に発表された同戦略文書によると「カナダの対中アプローチの進化はインド太平洋戦略の重要な一部」であるとし、中国を「ますます破壊的なグローバルパワー 」と明確に定義している。

中国は国際的なルールや規範をますます無視する一方で、「インド太平洋に多大な影響力」を持ち、「この地域の主要国になる野心」を抱いていると同戦略文書は述べている。

「カナダのインド太平洋戦略は、このグローバルな中国に対する明確な理解に基づいており、カナダのアプローチは、この地域および世界中の提携国のアプローチと一致している」と同文書は述べている。

この戦略文書には、「カナダ国内におけるあらゆる形態の外国からの干渉に対抗」し、カナダのサイバーセキュリティシステムを強化するとともに、「中国に関するカナダの能力を強化」するためにさらなる資源を投入することが明確に示されている。

中国がどのように考え、行動し、計画し、地域や世界にどのような影響力を及ぼしているかについての理解」を深めることを目的とした投資が行われる予定だ。

同文書によると、カナダ政府は「カナダの国益を確実に推進するため」、覚書などのすべての連邦政府の仕組みや構造を見直すという。

インド太平洋地域は、カナダにとって米国に次いで2番目に大きな輸出市場であり、双方向の年間貿易額は約22兆9,670億円(1,680億米ドル)にのぼる。

同戦略文書によると、今後5年間で、カナダはこの地域における経済的・戦略的役割を強化するため、約2,320億円(約17億米ドル)を投資する予定だという。

インド太平洋戦略では、中国市場へのカナダのアクセスを保護する一方で、「市場の中で、そしてその市場を超えて」多様化することの重要性を認めている。

同文書では、インド、日本、韓国、東南アジア諸国連合(10か国)を含むインド太平洋地域の「重要なパートナー」を挙げている。

この戦略では、「地域的にも世界的にも、インドの戦略的重要性とリーダーシップは高まる一方だ」とし、カナダは安全保障、民主主義、多元主義、人権の推進においてインド政府との関係強化に努めるとしている。

東南アジアとの経済関係を促進する取り組みとして、東南アジアでのカナダ貿易ゲートウェイの設立や、同地域初の農業オフィスの設置などが挙げられる。

この戦略の主な目的は、カナダの安全保障上の利益を促進することだ。

カナダのアニタ・アナンド国防相は、「この戦略は、この地域におけるカナダ軍の存在感を高め、パートナーや同盟国との防衛・安全保障関係を強化するものです」と述べている。

カナダは新たな安全保障プロジェクトに約730億円(5億3,580万米ドル)以上を投資し、その50%以上を「カナダのインド太平洋海軍のプレゼンス強化とカナダ軍の地域軍事演習への参加拡大」に充てる予定だ。 (写真:2022年6月に実施された国際海上演習「 Rim of the Pacific(環太平洋)」に参加するため、太平洋を通過するカナダ海軍のフリゲート「HMCSバンクーバー」)

3隻目となる海軍フリゲート艦がこの地域に配備されるほか、「特定の地域パートナーにおけるサイバーセキュリティ能力の開発を支援する」ための多部門イニシアチブが創設される予定だ。

また、この戦略では、カナダとオーストラリア、ニュージーランド、英国、米国との長年の情報同盟をさらに推進することも約束している。

カナダ政府は、「台湾海峡や東シナ海、南シナ海の現状を脅かすいかなる一方的な行動に対しても、提携国と共に対抗し続けていく」と述べた。

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