小池百合子東京都知事、11月撮影 (Photo by Tomohiro Ohsumi/Getty Images for TOKYO LIGHTS)

東京都「太陽光パネル設置義務化」条例案、賛成多数で委員会可決 15日にも本会議で成立

東京都・小池知事が進める「太陽光パネル設置義務化」条例案が13日、都議会環境・建設委員会で賛成多数で可決した。15日の本会議でも可決され、成立する見通し。

議会の最大会派である自民党は反対を表明した。義務化の意義などは説明不足で都民の理解が十分に得られていないこと、またパネル製造過程の強制労働を含む人権問題への懸念を挙げた。

東京都は環境確保条例改正案として、新たに建てられる一戸建て住宅への太陽光パネルの設置をメーカーに義務付ける制度を今回の定例会に提出した。全国初となる制度で、都は2025年4月の施工を目指す。都は2030年までに温室効果ガス排出量を半分にする「カーボンハーフ」を掲げ、補助金や支援策などで再エネ事業を拡充させている。

いっぽう、中国の新疆ウイグル自治区で、太陽光パネルの主要な原材料であるシリコンの採掘などにおいて、少数民族の人権弾圧と強制労働が行われているとの懸念がある。米欧などではすでに指定の中国メーカーのパネルの輸入制限を実施している。

7日の都議会代表質問では、菅野弘一議員(自民党)がパネル設置について、人権侵害が問題視されていることを踏まえ「日本の首都・東京が太陽光パネルの義務化に取り組むとなれば、国際社会から強い視線が向けられる」と指摘した。

これに対して小池知事は、設置義務化とCO2削減効果は2030年カーボンハーフの実現に必要不可欠と強調。人権問題は「グローバルなサプライチェーンでの課題であるとの認識の下、SDGsを尊重した企業の事業活動を促進する」と述べ、具体的な人権問題への言及は避けた。

太陽光パネル等の設置義務化については設置意義などをめぐり、6日、エネルギーや政策専門家は上田令子議員(無所属)と共に都庁で記者会見を開き改正案の反対意見を表明した。

東京大学公共政策大学院の有馬純教授は、東京都のパネル設置義務化は中国製の再エネ製品への依存度が増大し、地政学的リスクにつながると警鐘を鳴らした。

上田議員は8日の議会一般質問で、施主には設備費、撤去費を負担し、故障や災害のリスクもあると指摘。「都民には設置に対し拒否権が保障されるべき」と訴えた。

一部の国会議員も都の政策に批判的な立場を示している。来日したドルクン・エイサ・世界ウイグル会議総裁が5日の会見で、中国製太陽光パネルとジェノサイド(大量虐殺)問題に言及したことについて、「都の太陽光パネル施策に限定されることではなく、中国製の太陽光パネルを良しとする全ての人が我が事として耳を傾けるべき言葉」と小野田紀美議員は指摘した。

関連記事
米フロリダ州のデサンティス知事は、同州の畜産業とその住民を保護するため、培養肉を公式に禁止する初の法案に署名し、同法が成立した。7月1日から施行される。
昨今の日本の環境教育は、もはや教育の名に値しない「環境運動」と化している。エネルギー政策の専門家である杉山大志氏は、「今の環境教育は、ただCO2を減らせと子供たちに叫ぶだけの洗脳だ」と手厳しい評価を下した。
内閣府への提出資料に中国国営企業のロゴが入っていた問題は、国会とネット世論をどよめかせた。「中国共産党の浸透だ」とする論調に対し、有識者はむしろ「『使える愚か者(Useful ideot)』が日本の政策決定に関わっていることこそ問題だ」と指摘する。
「業界表示によって、一般消費者が廃棄物削減のための解決策を信用しすぎるようになった」と主張する人たちがいる。彼 […]
日本のエネルギー政策は、CO2削減に偏重するあまり、産業空洞化を招き、国力を毀損しかねない危機に直面している。エネルギー政策に関する提言を行う杉山大志氏は、「エネルギードミナンス計画」を提唱し、エネルギーコストの低減と安全保障の確保を最優先する現実的な政策転換を訴える。