「七五三」幼年の儀式 一生の教養(2) 【和のこころ】

(続き)

千歳飴を食べる:
千歳寿(せんねんのことぶき)を祈る 

七五三に欠かせない千歳飴は、子供たちを喜ばせてくれるものです。当日、神社や寺院に七五三のお詣りをした際に、ご祈祷の授与品として千歳飴をいただくことが多いでしょう。

千歳飴は長さ約1メートル近く、太さ14ミリほどの棒状で、紅か白、あるいは紅白2色の組み合わせになっているものが多いです。千歳飴には、子供がいつまでも健康で長生きできるようにという願いが込められているため、飴は細く長く粘り強くと作られています。日本の文化では、紅白の2色は、縁起の良いカラーとして知られており、見た目にもおめでたい印象を与えます。飴はとても長いので、家族で分け合うのが一般的です。また、飴を割るときに、家族全員で子供の健康と長寿を祈願します。

千歳飴の紙袋には色鮮やかなイラストや縁起の良い言葉が描かれています。よく登場するのは、「松・竹・梅」「鶴・亀」といった縁起物です。鶴と亀は長寿を象徴する吉祥の動物として尊ばれてきました。「寿」は幸福・封祿・長寿・祝賀の意味であり、「松竹梅」は長寿、子孫繁栄の象徴として、生命力や気高さを表すものとされています。

また、「千歳飴」は冬の季語(俳句などの詩文で季節を表す言葉)でもあります。 石塚友二(1906-1986)の有名な俳句「振袖の丈より長し千歳飴」は、この文化の特徴を面白く簡潔に表しています。

「七五三」の儀式では、男子は家紋入りの短い着物の下に幅が広いズボンを履き、女子は7歳になると帯付きの着物を着用します。(Fast&Slow / PIXTA)

現在、「七五三」のお祝いは儀式が行われ、大人も子供も美しく厳かな着物を着て寺院や神社にお詣りし、祈祷します。家族の記念写真を撮り、祖父母や他の親戚を宴会に招待します。 

なぜ、7歳、5歳、3歳で儀式を行うのでしょうか? 
この3つの数字は吉祥の陽数であり、幸福や幸運、長寿を招くことができると考えられています。また、中国の『洛書』(九宮圖)と関係があるとされています。 つまり、『洛書』の中段では西から東までの数字は7、5、3、いずれも陽数であり、その和は15です。

かつて「七つ前は神のうち」と言われ、子どもが七歳になるまでは「神の子」とされました。
これは2つの意味があり、1つは、7歳未満の子供の魂はまだ安定しておらず、夭折になりやすいということです。もう1つは、7歳未満の子供は単純かつ無邪気で、生来の神性を多く保っているということです。「七五三」の儀式が行われた後、子供は神の子から人の子に変わり、幼児から青少年に変わります。 昔は、寺院や神社で「入籍」の儀式をした後、その子は正式に人の子、家族の一員として認められました。

子曰わく、「生けるには之に事うるに礼を以てし、死すれば之を葬るに礼を以てし、之を祭るに礼を以てす」「詩に興り、礼に立ち、楽に成る『論語』」。「七五三」は、日本人が経験する最初の礼儀であり、社会的に認められた最初のしつけと教養でもあります。この儀式を通じて、子供たちに礼儀作法とは何かを教えれば、礼儀を重んじ、節度を守り、礼儀正しく行動するようになります。

日本では11月に入ると、伝統衣装の着物を着る子供がよく見られます。彼らの姿や立ち居振る舞いを見ていると、まるで一瞬で素朴な古代にタイムスリップしたような感覚です。もし、中国の伝統文化が中国共産党政権に乗っ取られたり破壊されたりしていなければ、現代の中国人も間違いなく伝統を重んじ、礼儀作法と節度を守るだろうと、多くの中国人がこれを見て、会心の笑みと感嘆の表情を浮かべるのでしょう。

(完)

脩實