誰かに相談すると病気になりにくい? 脳の老化を遅らせ、認知症を予防する(2)

(続き)

悩みを打ち明けることを習慣化しましょう

この研究は、心の中にあることを積極的に人に話す重要性を示すだけでなく、人は身近な人を気遣い、悩みを聞いてあげることは、その人の心身の健康に大きな効果をもたらすことを示すものです。

例えば、子供が親とおしゃべりをし、考えていることを聞くことで、親の認知機能の老化を遅らせ、認知症を予防することができます。 また、親子の良好なコミュニケーションや、子供に話しかける習慣を身につけることは、子供の成長に伴う心身の健康にもつながります。

「私は刑務所に勤務していました。あちらの人たちは全員麻薬常用者です。そもそもなぜ麻薬を摂取したのかと尋ねると、プレッシャーに負け、また相談相手もいなかったというのが一般的です」と柯氏は言います。これらの麻薬常用者は、医師、看護師、教授、教師、エンジニアなど多岐にわたり、そのほとんどが仕事のプレッシャーや精神的ストレス、職場でのいじめなどが原因で麻薬を摂取し始めたようです。

この人たちの状況は、《考え事は誰が知るか》という歌に似ています。 他にリラックスやストレス発散の方法がなく、話す相手もいなくて、どのように家族と話せばよいのだろうか、仕方もわかりません。ずっと話すことに慣れていないため、話しても解決しないのではと恐れています。柯氏は、彼らは自分を抑えることを選択し、誰かがドラッグを勧めると、間違った方法で発散しリラックスしてしまうのだと言いました。

このような話題があまり注目されないのは残念です。 多くのメディアに寄稿している柯俊銘氏は、ウェブサイトでは男女関係の文章はよく見られますが、傾聴や薬物・アルコール依存などの話題の記事はいつも不足していると嘆きました。しかし、これは人々の精神的な健康や身の安全と密接に関係しているのです。

相談を受けたらどうすればいいのか?

では悩みを相談されたときに聞き手が気を付けるべきことは何でしょうか。
柯俊銘氏は、傾聴するときに心がける8つのことを紹介しています。 

1.相手が本当に話したくないのであれば、無理に話させない。
まずは気遣いを伝えれば十分であり、必要であれば、話を聞く準備ができていることを相手に伝えましょう。

2.時間と場所に気を付ける。
多くの人が来て邪魔になるような騒がしい場所は避け、リラックスして自由に話せる場所を選びましょう。また、眠たくなるような時間帯を避けてください。

3.聞いているときは、聞くことに集中し、質問しない。
相手の目を見て親身になって聞きましょう。途中で必要に応じてティッシュペーパーを渡したり、肩を叩いたりなど。話を聞きながらスマホをいじるなどの態度は避けましょう。

4.安心感を与える。
話を聞いた後、相手が話したことをもう一度繰り返し、相手を安心させることが大切です。

話を聞くときは、肩を叩いたり、慰めるなど、相手を安心させましょう。 (mits / PIXTA)

5.相手の要求を聞く。
その人がどう感じているか、どうしたいか、助けが必要か、などを聞いてフォローする。

6.先入観をもたないで聞く。
相手はこうに違いないと勝手に決めつけると、「私の考えていることがわからない」と思われ、二度と話したくなくなる可能性があります。柯俊銘氏は、「時間がなく、早くすませたいがために簡単なコミュニケーションにすると、相手の話を全て聞いていないので、相手に嫌な思いをさせてしまう」と強調しています。

7.ポジティブなフィードバックをする。
ネガティブな反応や、火に油を注ぐようなことは避けましょう。
例えば、「あなたの夫はひどいね、思い切って離婚したら?」、「彼は浮気をしていると思う!」、と言ってしまうと、かえって相手の気分が悪くなったり、考え込んでしまったり、ストレスが溜まったりします。相手はただ話を聞いてほしいだけの場合もあり、必ずアドバイスをする必要はありません。

8.相手の感情に流されない。
聞き終わった後はすぐに気持ちを切り替えましょう。
「 私たちは心理カウンセリングの仕事をしていて、毎日多くの人の愚痴を聞いていますが、私はしっかり切り替えている」と柯俊銘氏は言います。

(完)

蘇冠米