ジョー・タコピナ弁護士とドナルド・トランプ前大統領 (Alessandro Sabattini/Getty Images)

「トランプ氏が手錠をかけられることはない」弁護士が起訴の異常性を指摘

米ニューヨーク・マンハッタン地区検察のアルビン・ブラッグ検事がドナルド・トランプ前大統領を起訴した件で、トランプ氏の弁護士を務めるジョー・タコピナ氏は、前大統領が司法取引に応じる可能性は「ゼロだ」と断言した。

タコピナ氏は、起訴状はまだ公開されていないが、弁護団は訴えを棄却する申し立てを行うつもりだと示した。

先週金曜日、同氏は米NBCのインタビューで、「トランプ大統領はこの件に関して司法取引に応じないだろう。そんなことにはならない」と語り、可能性は「ゼロだ」とした。

「犯罪はない。私たちにはしっかりとした法的な異議申し立てがあるので、裁判にかけられるかどうかは分からない」「(トランプ氏は)マール・ア・ラーゴに身を隠すつもりはない」とタコピナ氏は述べた。

トランプ氏をターゲットにした起訴状はまだ公開されていない。通常、被告人が罪状認否のために出廷した後に裁判所が公開する。

タコピナ氏はABCニュースとのインタビューで、先週木曜日の展開はトランプ氏にとって「衝撃的だった」と述べた。

「最終的に法の支配が勝つことを、私たちも彼も期待していた。検事や弁護士として32年間法律家をやってきた私の意見として、昨日でこの国の法の支配は死んだと感じている。これはプライドで言ってるのでも、気晴らしで言っているのでもない」

「これは米国史上前例のないことだ。罪状認否以外のことをするつもりはない。彼らは裁判所の周りのブロックを封鎖し、裁判所を閉鎖するそうだ。私たちはそこへ行き、裁判官と面会し、無罪を主張し、申し立てについて話すことになるだろう。この事件の法的可能性に関して、早急かつ非常に積極的に行うつもりだ」

別の訴訟でトランプ氏の代理人を務める弁護士のジム・トラスティ氏はCNNに対し、「前大統領の弁護団は裁判になる前に訴えを棄却しようとするだろう」と語った。複数の法律専門家も同様の発言をしており、トランプ氏は時効を理由に、あるいはブラッグ検事の訴えが誤った法理論に基づいていることを理由に、この訴訟をはねのけようとする可能性があるとしている。

トラスティ氏はCNNに対し、「ごく短期間で棄却の申し立て、あるいはいくつかの棄却の申し立てがなされると思う」と述べ、申し立ては数日以内に提出される可能性が高いと付け加えた。

2023年3月23日、ニューヨークのマンハッタン地区検事局に到着するアルビン・ブラッグ検事。 (Andrew Caballero-Reynolds/AFP via Getty Images)

ジョージ・ワシントン大学のジョン・バンザフ教授を含む一部のアナリストは、トランプ氏が「選択的執行」を主張できると述べた。つまり、検察が特定の容疑で誰かを標的にしようとしているが、一般的には同様の犯罪を犯した他の人々を告発していないということだ。

トランプ氏に対する起訴の異常性を指摘したタコピナ氏は、ABCニュースに対し、「今回の事件には本当に前例がない…これは個人資金で行われたことだ」と述べた。報道によると、ブラッグ氏は、2016年の選挙期間中に不倫の噂を隠すためにポルノ女優のストーミー・ダニエルズ氏に口止め料を支払った疑いでトランプ氏を調査していたが、トランプ氏はこれを否定している。

「法律的には、もし支払いが個人資金で行われ、候補者の選挙キャンペーンに関係ないのであれば、それは選挙運動の対象外であるとされている。今回も明らかにそうだった」とタコピナ氏は述べている。

トランプ氏は手錠をかけられた状態で引き回され、逮捕写真を撮られると思うか、という質問に対して、タコピナ氏は、「彼らはできる限りの評判作りを試みるだろう」としながら、トランプ氏が 「手錠をかけられることはない」と述べた。

「逮捕写真について言えば、彼らはトランプ氏を引きまわすことで喜びを得ようとするに違いない。でも、状況は違うと思う。ここには多くの団体が関わっているが、彼らが人事を尽くしてこれをサーカスみたいなものにすることを許すとは思えない」

フロリダ州のロン・デサンティス知事はツイートを投稿し、前大統領の引き渡しに協力しないとした上で、ブラッグ検事が左翼の大富豪ジョージ・ソロス氏から資金提供を受けたという疑惑と関連付けている。デサンティス氏はトランプ氏と同様に2024年の大統領選を視野に入れているとされるが、同氏は正式に立候補を表明しておらず、立候補するかどうかも明らかにされていない。

トランプ氏は、2020年の選挙後の活動に関する連邦政府の捜査や、同選挙に関連するジョージア州の捜査、そして大統領退任後の政府記録の取り扱いに関する連邦政府の捜査において、さらなる法的問題に直面している。同氏はこれら3件の不正行為を否定し、政治的に自分に危害を加えようとする取り組みの一環であると主張している。

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