アメリカ下院の委員会は2月3日、「アメリカ未来農業者協会(FFA)」と中国農業企業シンジェンタ・グループ(Syngenta Group)との協力関係、および同協会が推進するいわゆる「多様性・公平性・包括性(DEI)」関連活動について、調査を行っている。議員らは、この調査が国家安全保障に関わるほか、FFAの免税非営利団体としての適格性にも関係すると指摘している。
Foxニュースが2月4日に、この調査は下院歳入委員会と、議会内のFFAコーカスが共同で主導していると伝えた。
中共系企業との協力関係を調査
下院歳入委員会のジェイソン・スミス委員長と、議会FFAコーカスのトレイシー・マン共同議長は連名で、FFAの最高経営責任者スコット・スタンプ氏に書簡を送り、関連文書および詳細な説明の提出を求めた。対象として、中国共産党(中共)の支配下にある中国企業との契約内容、財務上の支援、シンジェンタ社員がリーダーや顧問として関与した際の役割、さらに同社がFFAのDEI戦略の策定・推進にどの程度関与したかなどを挙げている。
スミス氏は、アメリカの免税非営利団体が外国勢力から悪意ある影響を受けていないかを調べる調査を拡大させる中で、FFAを調査対象にする理由について、同協会と中共の支配下にある組織との関係が、意思決定に影響を及ぼしており、深刻な懸念があるためだと説明した。
書簡では、FFAが教育を通じて将来の農業分野の指導者を育成してきた役割を強調し、全米数千の支部を通じて100万人を超える学生にサービスを提供していると指摘する。
スミス氏は、「FFAは次世代の農業従事者を教育し、アメリカ農業の発展を促進し、食料供給と国家安全を守るうえで重要な役割を果たしている。この使命が損なわれることは決してあってはならない」と述べた。
議員らは、アメリカの農業分野が中共が影響力を行使する場となってはならず、とりわけ次世代の農場経営者や食料生産者の育成に関わる可能性がある以上、この協力関係は徹底的に検証する必要があると指摘した。
書簡ではさらに、「わが国の外国ライバルと協力し、いわゆる『ウォーク政策』を本来の使命より優先することは、全米のFFAが免税資格を維持する要件を今なお満たしているのかという深刻な懸念が生じる」と強調している。
中共系企業が「軍事企業」に指定
シンジェンタ・グループは2017年以降、中共政府の国有企業である中国化工集団(ケムチャイナ)の完全子会社となり、その後、中国中化(シノケム)に統合された。
トランプ政権1期目中に、ケムチャイナとシノケム両社を中共の軍事企業に指定した。この指定は、中共が進める軍民融合戦略に関与する企業を特定し、米政府資金へのアクセスを制限するためのものだ。
これらの指定は2021年に一度解除されたものの、その後シンジェンタを再び中共の軍事企業として指定した。これは、同社と中共政権との関係が依然としてアメリカ側の懸念事項であることを示している。
多くの州や連邦機関が農業分野における中共系企業の保有や影響力を制限している中で、シンジェンタがFFAの指導部、プログラム、学生と密接に接触している。議員らは、中共の国有企業がアメリカ農業界の次世代リーダーに影響を及ぼす恐れがあるとして懸念を示した。
書簡では、「中共には、バイオテクノロジーや農業関連の知的財産を盗用するなど、経済スパイ活動における数々の前科がある。それにもかかわらず、FFAが、中共の国有企業に対してアメリカ農業界の次世代リーダーたちと直接接触する機会を与えている事実に驚いた」と記している。
中共系企業がDEI推進を後押し?
議員らはまた、FFAがDEIプログラムを支持・推進している点を批判し、こうした取り組みによって、同協会が本来重視すべき農業教育の軸から外れ、身分や属性を優先する方向へと傾くことで、学生の間に分断を生む恐れがあると指摘している。
書簡では、「全米FFAの目標は、学生を一つの共同体として結束させることであり、彼らを特定のカテゴリーに分類し、押し込めることではない」」としている。
議員らは、FFAにおけるDEI推進の過程で、シンジェンタ・グループが何らかの役割を与えられ、同協会の戦略的方向性に不当な影響を及ぼしたのではないかと疑問を呈した。
今回の調査は、免税組織が外国勢力の影響を受けるリスクに対する議会による監督をより広範囲に実施すべきかという問題にも及んでいる。特に農業と食料安全保障を、国家安全保障上の課題として一段と重要視するようになっていることが背景にある。
議員らは、ブルック・ロリンズ農務長官の言葉として、「農場の安全は国家の安全だ」と引用した。
シンジェンタとFFAの密接な関係
2022年、シンジェンタは全米FFAと提携し、奨学金制度の創設、地域社会への寄付、農業教育の支援などを開始した。
同年、両者はFFAが推進するDEI戦略の策定を発表した。この協力関係は、引き続き注目の的となっている。すでに多くの州やアメリカ農務省が、中共企業と密接な協力関係を持つことは、安全保障上の懸念を引き起こすとの認識を示している。
FFAは不正行為を否定
FFAは声明で、同団体は非営利かつ超党派の組織であり、農業教育を通じて学生のリーダーシップ、個人の成長、キャリアの成功を支援することに専念していると説明した。また、農業コミュニティの寄付者やスポンサーから支援を受けているものの、いかなる寄付者の見解も推進しないとしている。
同協会は、議会からの照会に全面的に協力しているとし、調査が進行中であることを理由に、これ以上のコメントは控えると述べた。シンジェンタ側は取材要請に応じていない。
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