7月24日に中国・文昌宇宙センターから中天宮宇宙ステーションの2番目のモジュールを輸送するロケットが打ち上げられた。参考写真(Photo by -/CNS/AFP via Getty Images)

スペースXは「軍事的脅威」…中国、スターリンク対抗で独自通信網を建設

中国が「スターリンク」に対抗する通信衛星網の開発を急いでいる。国家的に優先度を上げて、数万もの衛星を打ち上げる計画が進む。数年内にスターリンク同様の機能を備えることを目指している。西側の専門家は、宇宙軌道が過密状態に陥る可能性を指摘する。

通信衛星の代名詞な存在といえば実業家イーロン・マスク氏率いるスペースX社のスターリンクだ。多数の衛星を低軌道に張り巡らす「通信衛星コンステレーション」サービスによって、地球人口のほとんどをカバーできる通信網を広げている。光ケーブルや基地局電波に頼らない空からの通信により、山間部から離島に至るまで高速通信が可能となった。

戦禍に見舞われるウクライナへの民間の情報支援はよく知られる。ドローン誘導に使用したりロシア側の動向の情報提供など実質的な軍事支援にもなっているとの観測もある。機密性に優れた、政府向け、特に国家安全保障部門向けサービス「スターシールド」も開始している。

中国軍網「スターシールドは脅威」

スターリンクのアンテナを通じて通信サービスを受けるウクライナの市民たち。2022年11月ヘルソンで撮影(Photo by -/AFP via Getty Images)

こうした「軍事」成果を目の当たりにして、中国軍は「脅威」(中国軍網、昨年12月27日付)と位置付けている模様だ。中国とロシアの軍事専門家の言葉をならべ「米国の宇宙での軍事的な覇権を求める野心が露わ」になったと警戒感をむき出しにした。

中露の専門家はスターシールドを次のように分析する。米軍への地球観測、機密保持された通信を提供し、敵側のあらゆる通信手段を傍受し、詳細な偵察を可能とする。さらには核兵器や核弾頭を効果的に管理することができる。

「スターシールドの出現は、低軌道衛星の軍事化転換を加速させ、米国が積極的に宇宙資源を独占し、現行の作戦体系を覆す野心を明らかにした」と論じた。

こうしたなか中国は目下、独自の通信網に取り組んでいる。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)21日付によると、中国の軍事研究者たちが衛星群の展開を急ぐよう勇んでいる。

中国の民間企業、北京天兵科技は、一度に最大60個の衛星を打ち上げ可能なロケットの開発研究を行っている。これはスペースXの「ファルコン9」ロケット同等の積載能力で、再利用も可能だという。

4月、天兵科技はこのロケットの建造に大きな進歩を遂げた。初めて液体燃料ロケットを軌道に送り込んだのだ。中国のロケットの運搬能力は2年後に倍増すると、香港の航空宇宙コンサルタント会社代表はWSJ紙の取材に答えている。

重要な技術領域における自律を目指す中国は、2020年4月に開いた国家発展改革委員会で、衛星幅広ネットワーク開発を新しい基礎インフラプロジェクトリストに加え、国家の優先事項の一つとした。

昨年後半、国際電気通信連合(ITU)は中国から少なくとも2つの「通信衛星コンステレーション」サービスの申請を受け取っている。そのサービスは合計で最低でも7000個以上の衛星の運行を意味する。

一部の研究者は、将来的に宇宙の通信衛星は過密状態に陥り、さらに中国のコンステレーションが米国の衛星市場での優位性に挑戦状を突きつける恐れがあると予想している。

米VOAによれば、現在中国は700以上の衛星を軌道上で運行させており、そのうち約半分は世界に広がる米国の軍事設備を追跡する目的があるという。約30個以上が中国のGPS全球定位システム「北斗」システムを形成している。

米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)は昨年12月の報告書で、中国が衛星広帯幅接続を「一带一路」通信基地設置プロジェクトとして一緒に推進する可能性があると述べた。

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