紅海の要衝バブ・エル・マンデブ海峡が米中対立の重要なチョークポイントに

2026/05/07
更新: 2026/05/07

論評

ホルムズ海峡の封鎖により、世界の関心はバブ・エル・マンデブ海峡へと移った。この海域では、米海軍の優位性により、重要なエネルギーのチョークポイント(海上交通の要衝)の支配においてワシントンが中国に対して優位に立っている。

米国とイランの紛争は、エネルギーを巡る米中間の競争を激化させた。ホルムズ海峡が事実上封鎖されたことによる混乱は、世界のエネルギー市場がチョークポイントにいかに脆弱であるかを浮き彫りにし、他の重要な輸送ルートの重要性を一層高めた。

ホルムズ海峡が機能不全に陥ったことで、バブ・エル・マンデブのような代替海上回廊に注目が集まり、エネルギー輸送の支配を巡る競争が激しくなっている。

バブ・エル・マンデブ(「涙の門」)は、最も狭い地点で幅約18マイル(約30キロ)しかない海峡であり、世界の海上貿易の約12%が毎日ここを通過する。

ペルシャ湾からヨーロッパへ石油を運ぶ船舶は、アラビア海を北上し、アデン湾に入り、この海峡を通過して紅海へ入り、さらにスエズ運河を通って地中海へ向かう。このため、この海峡は他に代替経路のない回廊の南の入口となっている。

いずれかのチョークポイントが封鎖されれば、この航路全体が機能不全となり、船舶は喜望峰を回るルートへ変更を余儀なくされる。その場合、航程は約3,500海里増加し、航海日数も10〜14日延びる。

2023年後半からフーシ派の攻撃が紅海の航行を妨げた際、船舶はスエズへ向かうのを避け、バブ・エル・マンデブの通過自体を回避した。その結果、スエズ運河の通航数は2023年11月の2,068隻から2024年10月には877隻へと激減した(ロイズ・リスト・インテリジェンスによる)。

法的には、この海峡は北東のイエメン、南西のジブチとエリトリアの3か国の管轄に属し、単一の国家が完全に支配しているわけではない。

実際には、米国と中国はともにジブチ沿岸に軍事拠点を設けており、中国共産党軍の支援基地は、米軍のキャンプ・レモニエ基地から約7マイル(約11キロ)の距離にある。

このため、バブ・エル・マンデブは両大国が至近距離で影響力を競う唯一のチョークポイントとなっている。

キャンプ・レモニエはアフリカにおける米国唯一の常設軍事基地であり、5千人以上の軍人・民間人が所属するアフリカ軍(AFRICOM)の統合任務部隊の拠点である。

この基地は対テロ作戦や危機対応の拠点として機能しており、2023年のスーダンからの米大使館職員の避難作戦にも使用された。

さらに、チャベリー飛行場は2013年9月から米軍の無人航空機運用拠点として稼働している。

キャンプ・レモニエは、地域におけるより広範な米軍の体制の一部である。バーレーンに司令部を置く米第5艦隊が、ペルシャ湾、紅海、アラビア海における海軍作戦を統括している。

また、インド洋中央部のディエゴ・ガルシア基地が兵站支援を提供し、燃料や弾薬、前方展開艦艇を供給している。

一方、中国のジブチ基地は2017年に建設された初の海外軍事拠点であり、中国が運営するドラレ港に隣接している。

米国は2014年にロシアの基地建設を阻止し、キャンプ・レモニエに10億ドルを投資していたが、その2年後にジブチが中国基地を承認した際には「不意を突かれた」とされる。

この近接性は摩擦を生んでいる。2018年5月には、米空軍が「軍用レーザーが米軍パイロットの目に照射された」と報告し、その発信源は中国基地とされたが、中国側は関与を否定した。

両基地は同じチョークポイントにおける競合拠点だが、その能力は対等ではない。

中国の施設は兵站・補給・非戦闘員退避を目的とした支援拠点であり、戦闘部隊ではない。空母打撃群もなく、基地外に戦力を投射する能力も持たない。

この非対称性は増援の問題で顕著になる。

中国本土からジブチへ艦隊を送るには、マラッカ海峡を通過するか、オーストラリア西岸を回るルートしかない。

前者では米国がインドネシアとの防衛協力やシンガポールのチャンギ海軍基地へのアクセスを通じて阻止可能であり、後者でも米第5艦隊とディエゴ・ガルシアのネットワークが存在する。

つまり、中国が米国の影響圏を避けてジブチへ到達するルートは存在しない。

戦時には、中国のジブチ基地は孤立し、補給・増援・艦艇の交代が困難になる可能性が高い。

中国は外洋海軍(ブルーウォーター・ネイビー)の構築を進めているが、持続的な運用能力はまだ確立していない。長期作戦を支える第二の海外基地もなく、実戦経験のある空母打撃群の運用ドクトリン も不足している。

したがって、この基地は自立した兵站体系を持たない前方拠点であり、戦時には資産であると同時に弱点にもなり得る。

中国は長期的な対策として「真珠の首飾り」と呼ばれるインド洋の港湾ネットワークを構築している。パキスタンのグワダル港、スリランカのハンバントタ港、ミャンマーやタンザニアの候補地などが含まれる。

これらはまだ軍事基地ではないが、将来的な補給拠点として整備が進められている。

結論として、バブ・エル・マンデブは米中競争が最も直接的かつ物理的に集中するチョークポイントである。

ただし、現時点では米国が優位に立っている。より大規模な基地、機能的な兵站ネットワーク、外洋海軍力、そしてフーシ派との戦闘で蓄積した実戦経験を持つからである。

一方、中国は自力で維持できない前方拠点に依存しており、米国が影響力を持つ海上交通路に依存している。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
経済学者、中国経済アナリスト。上海体育学院を卒業後、上海交通大学でMBAを取得。20年以上アジアに滞在し、各種国際メディアに寄稿している。主な著作に『「一帯一路」を超える:中国のグローバル経済拡張』(Beyond the Belt and Road: China's Global Economic Expansion)や『A Short Course on the Chinese Economy』など。