ソロモン諸島のソガバレ首相は7月10日、北京の人民大会堂で中国の李強首相との二国間会談を行った (Photo by ANDY WONG/POOL/AFP via Getty Images)

ソロモン諸島首相、北京で習近平氏と会談…懸念深まるグローバルサウスの中国傾斜

ソロモン諸島ソガバレ首相が9~15日の日程で中国を訪問している。ソロモンが台湾と断交し中国と国交を結んで以降、2回目の訪問となる。太平洋戦争で日本が激戦を迎えた要衝の地は現在、米中競争のはざまにあり、その外交動向に注目が集まる。

中国中央テレビは10日、ソガバレ氏は北京の人民大会堂で習近平主席と会談し、治安維持協力を含む9つの文書からなる包括的パートナーシップ条約を締結したと報じた。習氏は「中国と太平洋の島々の国々は共に発展途上の最中にあり、協力の枠組み内で相互支援を強化すべきだ」と会談で述べたという。

中国外務省の報道官によれば、ソガバレ氏は今回の訪中で中国に大使館を開設し、北京、江蘇、広東を訪問する予定。「二国間関係や、双方が関心を持つ国際的、地域的課題について意見交換する」と報道官は述べた。

ソロモンの首相府によれば、ソガバレ氏は中国李強首相の招待で同国を訪問する。費用は中国側が負担するという。

約70万人が住むソロモン諸島は、2019年にソガバレ政権が開始して以降、親中へと舵を切った。2021年は首都ホニアラで反中国、反政府デモと暴動が起こり、チャイナタウンが焼き払われた。オーストラリアが警察部隊を派遣し沈静化を図った。昨年は中国との秘密の安全保障協定を締結したとも報じられ、米豪の警戒を高まらせた。

さらに中国の通信大手華為は、6600万ドルの融資を得てソロモンで携帯電話ネットワークを設置した。ソロモンの議会は債務の負担に懸念を示している。このほか首都ホラニアでは中国国営企業による港湾開発、スポーツスタジアムの建設案が浮上している。

ソロモンで最も人口の多いマライタ州は、ソガバレ政権と対峙していた。台湾との関係維持と中国援助の拒否を続けたスイダニ首長が治めていたのだ。しかし、「中国の背景」によりスイダニ氏は3度の不信任案提出を受け退陣を余儀なくされた。新任のフィニ氏は就任直後に中国大使館に表敬訪問したという。

米国はソロモンのようにグローバルサウス(南半球の新興国)が中国との協力を深めていることに強い懸念を抱いている。今年2月、米国はソロモン諸島に大使館を開設した。

中国の接近を警戒するのは米国だけではない。オーストラリアもまた、ソロモンに警察訓練や装備品を提供してきた。6月末に豪マールズ副首相兼国防相がソロモンを訪れ、同国の軍事部隊と警察部隊の延長を提案し「必要な限り安全保障の支援を行う」と明言した。200人余りの豪州の部隊は昨年、ソガバレ政権の要請を受け派遣され、暴動に対応した。

いっぽう中国の太平洋での影響力は、貿易の増加、インフラ投資、援助などにより拡大の一途を辿る。中国は台湾の孤立化を図り国際的地位を剥奪している。太平洋のキリバスもまた、2019年に台湾から中国へと外交締結先を変更した。

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