古くには一人前の男子を『丈夫』と呼び、それが更には、「勇気ある立派な男子」をも指すようになりました。( yosan / PIXTA)

丈夫【ことばの豆知識】

学生時代の友人に「○○大丈夫」というのがいて、「○○ますらお」と読みます。知り合った当初からずっと、「だいじょうぶ」がなぜ「ますらお」なのか、不思議でなりませんでした。

中国の周の制度では、男子は背丈が一丈に達してはじめて成人と認められたことから、古くには一人前の男子を『丈夫』と呼び、それが更には、「勇気ある立派な男子」をも指すようになりました。そして、その『丈夫』をほめる意味で、頭に『大』の字を冠して『大丈夫』ということばが生まれ、現代でも『大丈夫敢做敢当』(男子たる者、思い切ってやり、潔く責任をとる)のように使われます。

このことばが日本に伝わった当初は、やはり「一人前の立派な男子」を指し、「(大)丈夫」と書いて「(だい)じょうふ/(だい)じょうぶ」と読まれ、更には、「立派な男子」を意味する日本古来の「ますらお」ということばにもこの漢字が当てられるようになりました。

また、「立派な男子」は堂々としてしっかりしていることから、日本語では「丈夫」が「堅固でこわれにくい」という意味に派生し、「大丈夫」が「まちがいない」という意味を持つようになったようです。

ところで、中国語では近代のころから『丈夫』に「夫」の意味が観察されるようになります。夫は「立派な男子」であった/あってほしいということからすれば、ごく自然な派生だと考えられますが、この用法は日本語には伝わりませんでした。

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