8月の対中輸出は前年同月比1割の減少となった。有識者は日中デカップリングの好機と考えている (Photo credit should read TOSHIFUMI KITAMURA/AFP via Getty Images)

対中輸出1割減、進む販路の多様化 有識者「好ましい傾向」

財務省が20日に発表した8月の貿易統計によると、中国向けの輸出額は1兆4350億円となり、昨年同月比1割減となった。9カ月連続の減少だ。中国の禁輸処置により、水産物を含む食料品は41.2%減となった。有識者は取材に対し、中国依存からの脱却は良い傾向であり、デカップリングなど貿易構造を見直す良いきっかけになると語った。

中国への輸出品を品目別にみると、鉄鋼が27.8%減の394億円、一般機械は8.6%減の3037億円、自動車は2.3%減の899億円だった。中国共産党が東京電力福島第一原発の処理水海洋放出によって講じた対日世論戦・外交戦の影響により、水産物を含む食料品の輸出は41.2%減の141億円だった。

半導体分野でも変化が見られた。日本と米国、オランダは7月、先端半導体製造装置の対中輸出を規制することに合意したが、ブルームバーグによると、実施までに数カ月かかり、影響は今後に出てくると考えられている。こうしたなか、8月の半導体等製造装置の中国への輸出量は20.6%減となったが、価格ベースでは0.9%増の1113億円となった。

対中輸出の減少について、長尾敬前衆議院議員は取材で「非常に好ましいことであり、今後もこの傾向が続くべきと考える。中国依存体質こそが今まで異常だった」と語った。

対中輸出で減少した分は「価値観を共有できる他国に販路を開拓していくべき」だとし、「デカップリングを含むわが国の輸出の基本構造を見直す良いきっかけにするべきだ」と指摘した。

中国共産党による外交戦、世論戦を受けて、日本国内では対中輸出分を内需に回すなど、対中依存から脱却する努力が続いている。

くら寿司は20日、国産の水産物の消費を後押しするキャンペーンを始めると発表した。原発処理水放出による風評被害を抑え、中国の全面禁輸の影響を受ける漁業者を支援するのが狙いだ。

議員や議事堂職員らを対象とする議員食堂には、日本海でとれた魚介類を使った寿司を提供する「金沢まいもん寿司」が今月19日にオープンした。

政府も水産業者に対する支援策を打ち出し、中国以外の輸出先の開拓や国内加工体制の整備などを促進している。岸田首相は8月31日、首相官邸で記者団に「中国市場だけに依存せず、世界の和食ブームを機会として、持続的・安定的に事業が発展していくよう、特定国依存を分散するための緊急支援事業を創設する」と述べた。

日本の2022年の水産物輸出(3873億円)のうち、中国向けは871億円で最も多かった。

中国政府の禁輸措置は科学に基づかず、政治的だと各界の識者は指摘する。シンクタンク「国家ビジョン研究会」代表理事の無盡滋氏は「多少儲かっても、正義がない国とは付き合うべきではない」と述べる。

「義のない国とは付き合うな」 日本のあるべき対中国姿勢とは

エコノミスト・森永康平氏は大紀元の取材で、日系企業は「中国でビジネスをやれば儲かる、というように非常にシンプルというかピュアな考え方をしてしまう。共産党の怖さやリスクをあまり考えていない」と指摘。チャイナリスクへの認識が広がればできれば、撤退する企業が出てくるだろうと述べた。

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