(大紀元)

焦点:中国の次世代原潜、静粛性大きく向上 海中の軍拡競争激化

[香港 10日 ロイター] – 中国が次世代の弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)の運用を2020年代末までに開始するとの見方が、安全保障政策に携わるアジアの政府関係者やアナリストの間で強まっている。

ロシアの技術支援を受けて静寂性が飛躍的に向上するとみられる「096型」は、探知が難しく、米国や同盟国にとって脅威が増す。海中の軍拡競争を一段と激化させる可能性がある。

米海軍大学は5月に開催した会議で中国の原潜について議論。同大の中国海事研究所が8月に発表した研究論文は、新型艦の監視ははるかに難しくなると予測している。ロイターが取材したアナリスト7人のほか、アジアを拠点とする3人の軍事顧問によると、この結論には信憑性がある。

潜水艦の乗務員だった海軍技術情報アナリスト、クリストファー・カールソン氏は、「096型は悪夢になりそうだ。探知するのは極めて難しいだろう」と語る。

米国をはじめインド太平洋地域で軍事活動する各国は、軍の配備と有事への備えを強化する中で、核ミサイルを積んだ中国の原潜を監視する取り組みを中核に据えてきた。096型が就役すれば、対応の強化を求められる。

米国防総省は昨年11月、中国海軍が南シナ海の海南島から従来型の094型原潜による「完全武装の核抑止パトロール」を日常的に実施していると明らかにした。しかし、中国の最新鋭潜水艦発射ミサイル「JL―3」を搭載する094型は、騒音が比較的大きいとされている。

先の研究論文は096型について、隠密性、センサー、兵器の面でロシアの最新鋭潜水艦に匹敵すると指摘。米国とインド太平洋の同盟国に「深遠な」影響を及ぼすだろうとしている。

論文はまた、ロシアの技術の「模倣的革新」に基づき、ウォータージェット推進装置や内部静音装置など、特定の分野で技術が飛躍的に向上した可能性についても詳述している。

ロイターはロシアと中国の国防省にコメントを求めたが、回答を得られなかった。

カールソン氏はロイターに対し、中国がロシアの「至宝」である最新技術を手に入れたとは考えていないが、ロシアの改良型アクラ旧原潜に匹敵するほど隠密性の高い原潜を製造することになるだろうと語った。

「改良型アクラ級原潜の探知と追跡には苦労している」と、カールソン氏は言う。

<冷戦を想起>

新型SSBN登場の見通しは、すでに激化している水中の監視戦を著しく複雑化させるだろう。

冷戦時代、西側が旧ソ連の「ブーマー」原潜の追跡に力を入れたことを想起させるかのように、中国の潜水艦の追跡は国際的な取り組みの様相を強めている。日本やインドの軍当局が、米国、オーストラリア、英国を支援している形だとアナリストや政策担当者は言う。

対潜水艦戦の訓練も増えており、東南アジアやインド洋周辺には米国製の対潜哨戒機P―8(ポセイドン)が配備されている。

米国、日本、インド、韓国、オーストラリア、英国、ニュージーランドが運用する対潜哨戒機は、海中の音を拾うソノブイのほか、海面を走査してはるか下にもぐる潜水艦を探知する高度な技術を駆使している。

SSBNの静粛性が向上するという見通しが、米英豪による安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」を後押ししている面もある。

シンガポールを拠点とする防衛アナリスト、アレクサンダー・ニール氏は、「中国は、AUKUSが進める最初の潜水艦よりも早く新世代潜水艦を開発しそうな勢いだ。両社の能力が同等だとしても、これは極めて重大な事だ」と言う。

もっとも、中国の潜水艦が技術的にAUKUSと同等になったとしても、AUKUSの運用能力に肩を並べるには今後10年間、集中的な訓練が必要になるだろうとニール氏は話す。

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