クリスマスケーキの時期になると、いつも思い出してしまう(ささざわ / PIXTA)

「クリスマスケーキ」【私の思い出日記】

義兄(姉の夫)は、買い物好き。とくに食料品の購入が著しく、仕事の帰りに美味しそうなものを見つけると買って帰るので、姉が献立が狂うと嘆いていた。戦争中の食糧難を経験した反動とのこと。年末から年始は、兄にとっては大手を振って買い物ができる時だった。

クリスマスは、いつも大きなデコレーションケーキを用意して私たちをよんでくれた。それも、スーパーやコンビ二で受けとる冷凍のケーキではなく、町のおいしいケーキ屋さんにたのんでおいたデコーレーションケーキを用意してくれた。

今から三十数年前のクリスマスの夜に、姉の家に行くと、デコレ―レーションケーキが3個もならんでいた。二家族7人なのに、なんと三個だ。いくらなんでも、どうなっているの。しかし、いつもパパのことを「買い買い虫」と言っている姉がニコニコしている。びっくりする私たちに「パパ説明してあげて」と姉が笑っている。

兄は、役所で青少年の相談の部署にいた。その時、相談に来ていた少年がいた。彼は何とか立ち直り、ある大手のファミレスのアルバイトとして働き始め、定期的に兄のところに顔を出していたという。あるクリスマスシーズンの時に、兄のところに来て、ファミレスのクリスマスケーキの販促があるので買ってほしいと。兄はわかった任せろと言って、役所中に声をかけ、正確には忘れたが、信じられない数(確か100個近く)のケーキの注文をとってきたらしい。

その少年がクリスマス当日、御礼にケーキを1個持って来てくれた。当然人に勧めたからには、兄もケーキを一つ予約した。そして兄のプライドであるケーキ屋特注のケーキと計3個のケーキにかこまれて、とても楽しい夜だった。そして、その少年の売り上げ数は全国一で、そのファミレス誌に社長と並んだ記念写真が載ったらしい。今となっては定かではないが、その会社に就職したとも聞いた記憶もある。クリスマスケーキの時期になると、いつも思い出してしまう。

もう一つ、忘れられない場面がある。兄のうちに遊びに来ていた苦学生のアメリカの青年の帰国のお別れパーティでの出来事。兄がのし袋を胸から取り出し、彼にお餞別を渡した。日本人ならその意味がすぐわかるが、彼は怪訝な顔をしてのし袋を開けた。お札が何枚も出来てびっくり。「何?」と言った。兄は、「それはあなたへのスカラシップ」「こんなにもらえない」等のやり取りの後、兄は「そう思ったら、将来、誰かに返してあげて」と。彼は涙ぐみ、私達ももらい泣きをした。

彼は幼少期に実母をなくして寂しい思いをしたので、寂しい人の気持ちがわかる人だった。2017年に80歳で天国に逝った。お通夜の時、彼の好きだった「アメージンググレイス」を聴きながら、順番に兄の思い出を語りあった。私の番がきた時、クリスマスケーキのことが頭に浮かんだ。亡くなっても人の心に残る、そんなエピソードを沢山持った人だった。

 

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