2021年3月、米当局は悪意のある」ハッキングを行ったとして4人の中国人を起訴した (Photo by NOEL CELIS/AFP via Getty Images)

中国のサイバー攻撃、潜在的紛争における中国の戦略を示唆か

米国サイバーセキュリティー・インフラセキュリティー庁(CISA)によると、中国によるサイバー攻撃は、10年前の政治的・経済的スパイ活動から、米国内の水道、電力、その他の重要インフラを混乱させる試みへと発展しており、国内混乱を引き起こし、インド太平洋紛争が発生した際に米国が戦力を投射できないようにするための一環であるという。

過去1年間に、中国共産党軍に所属するハッカーが、ハワイの水道事業体、米国西海岸の主要港湾、少なくとも1つの石油・ガスパイプライン、米国外の電気事業体など、約20の事業体のネットワークを侵害したと、政府関係者や業界専門家が見ていると、2023年12月にワシントン・ポスト紙が報じた。

2023年の米国国防総省(DOD)のサイバー戦略概要が指摘しているように、米国国境を越えたセキュリティ侵害は、米国の同盟国や提携国に対する継続的な脅威を示している。 例えば、ドイツの対外情報機関のトップであるブルーノ・カール(Bruno Kahl)氏は2023年9月、国内の液化天然ガス基地が国家に支援されたハッカーに狙われる可能性があると警告した。 サイバーセキュリティーニュース誌「ザ・レコード(The Record)」によると、同氏は中国とロシアを最大のサイバー脅威として挙げ、これらの権威主義体制が「ドイツの政治、行政、ビジネス、研究、そして社会に害を与えるためにサイバー空間で活発に活動している」と述べた。

一方イギリスでは、セラフィールド原子力発電施設が中国やロシアとつながりのあるグループによってハッキングされたと、ガーディアン紙が2023年12月初旬に報じた。

米国国防総省の概要は、中国の戦略とは、「紛争が発生した場合、中国は米国本土に対して破壊的なサイバー攻撃を仕掛け、軍の動員を妨げ、混乱に陥れ、注意とリソースをそらすことを意図している可能性が高い」と指摘している。

最近のサイバーセキュリティー・インフラセキュリティー庁の開示は、中国による悪質なサイバー活動に関する過去1年間の警告を裏付けるものだった:

  • 米国国家安全保障局、米国連邦捜査局、サイバーセキュリティー・インフラセキュリティー庁、日本の警察庁、日本の内閣サイバーセキュリティセンターが2023年9月に発表した勧告で、中国に関連したハッキンググループについて警告している。 「ブラック・テック(BlackTech)」として知られるこのハッカーたちは、「政府、産業、テクノロジー、メディア、エレクトロニクス、テレコミュニケーションの各セクター(米国と日本の軍を支援する団体を含む)」を標的にしている。
  • 2023年8月、ワシントンポスト紙が、米国国家安全保障局が、中国軍のハッカーが日本の防衛機密ネットワークに侵入したことを発見したと報じた。
  • ニューヨーク・タイムズ紙が2023年7月に報じたところによると、米政府当局者は、中国が米国や世界中の軍事基地に給電する電力網、通信システム、水道を制御するネットワークに悪意のあるコンピューター・コードを隠そうとしていると見ているという。
  • 2023年5月、マイクロソフトは中国のハッカーがグアムの米国インフラを標的にしていたことを明らかにし、中国が民主統治領である台湾を攻撃するために米国領内の通信を妨害する準備をしているとの懸念を呼んだ。 「ボルト・タイフーン(Volt Typhoon)」と呼ばれるこのハッカーらは、少なくとも2021年半ばから活動していたと、マイクロソフトは発表した。
  • また5月には、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国、米国の共同勧告が、中国が知的財産を窃盗し、人工知能をハッキングやスパイ活動に利用していると非難した。
  • 米国国家情報長官室が2023年2月に発表した年次脅威評価は、 「中国はおそらく現在、米国政府と民間部門のネットワークにとって、最も広範で、最も活発で、持続的なサイバースパイ活動の脅威となっている。 中国のサイバー追求とその産業による関連技術の輸出は、米国本土に対する攻撃的なサイバー作戦の脅威を増大させている。 … もし中国が米国との重大な衝突が迫っていると懸念した場合、ほぼ間違いなく、米国本土の重要インフラや世界中の軍事資産に対して積極的なサイバー作戦を行うことを検討するだろう」と指摘している。

サイバーセキュリティー・インフラセキュリティー庁のブランドン・ウェールズ(Brandon Wales) 長官は最近、中国によるサイバー攻撃の拡大によるリスクの変化について概説した。

「もし10年前に質問されたなら、中国は主に経済的、政治的スパイ活動に重点を置いており、経済を発展させ、秘密や戦闘機の設計図を盗み出そうとしている、と答えただろうが、その脅威は確実に進化している。 今日、それははるかに深刻な状況になっており、米国にとってまさに戦略的な課題になっていると思う」と、ウェールズ長官はワシントン・ポスト紙が2023年10月に開催したフォーラムで語った。 同長官はさらに、「地政学的な舞台で行動の自由を享受し、世界中の友好国や 同盟国を守る能力を確保したいのであれば、中国のような敵対的な国を重要なインフラに侵入させ、危機にさらすわけにはいかない」と述べた。

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