岸田文雄首相(Photo by KAZUHIRO NOGI/AFP via Getty Images)

「岸田総理は外務大臣時代に何を?」拘束邦人の解放…中国側への要求遅れに批判

「岸田総理は外部大臣として何をされましたか」。2016年夏にスパイ容疑で邦人が拘束された当時、岸田首相は外相だった。中国側への申し入れが半年以上遅れたことについて、福島伸享衆院議員(有志の会)は質疑で、邦人保護のための外交手段の遅れや不足を指摘した。

日中青年交流協会の元理事長、鈴木英司氏は2016年7月に北京で拘束された。外務省の記録によれば、拘束から2カ月あまりの間、ASEAN会議や外相会談など、王毅外交部長と岸田外相(いずれも当時)は数回にわたる対話機会があった。にもかからわらず、「公開記録では具体的な申し入れが行われた形跡が見られない」と福島議員は14日の衆院予算委で述べた。

岸田首相は邦人拘束について、拘束から8か月後となる楊潔チ国務委員との東京での会談で伝えたほか、安倍晋三首相と中国共産党党首・習近平の首脳会談といったトップレベルでも強く求めたと答えた。

中国共産党政権は拘束した外国人に対して、検察による刑事手続きに入る前、国家安全部による超法規的な「居住監視」という3カ月間ものホテル等での軟禁措置を行う。福島議員は、日本政府はこの期間を有効利用して、政治的解決に持ち込むべきだったと強調する。

例として、2か月と比較的短期間で解放された北海道大学法学研究科教授の岩谷將氏のケースを挙げた。安倍首相は当時、スパイ容疑で拘束された岩谷氏の早期帰国に向け、2019年10月に訪日した王岐山国家副主席や、同11月のタイ訪問で李克強首相に直接、働きかけていた。

2015年5月以降、解放されたケースも含めると少なくとも17人の日本人が中国で拘束された。最近の事例では、昨年3月に拘束されたアステラス製薬の社員がいまだ帰国できていない。この事案について、岸田首相は拘束から8か月後の同年11月の日中首脳会談で申し入れをしている。

「物事のついでに言うのではなくて、まず真っ先に日本人を救うぞという意識を、拘束されてからすぐに言わなければならない」「早いうちに総理自ら政治的な解決を言うしかないのでは」。福島議員はトップレベルでの対話の遅れを指摘した。

岸田首相は、これまでの拘束事案について「居住監視期間も含めて様々な形で積極的に中国に働きかけを行っている」と説明した。

公安調査庁と邦人の接触

国内外の情報を監視し収集する法務省公安調査庁。緊迫する東アジア情勢のなかで、中国の情報収集の重要度は増している。「情報の力で国民を守る、それが公安調査庁」というのがスローガンだ。

いっぽう、中国共産党側への情報漏洩は懸念されている。裁判資料等によれば、北海道大学の岩谷教授も、日中青年交流協会の鈴木元理事も、公安調査庁との接触があったという。

「だから拘束されているのだと思う。こうした状況では、中国の情報を持ってる人は誰も怖くて公安調査庁と接せられない。中国情報は取れなくなっているのでは」と福島議員は語気を強め、情報管理対策の徹底強化を訴えた。

小泉龍司法務相は、「情報保全体制に万全を期している」と強調しつつ、公安調査庁の詳細な業務について回答を控えた。岸田首相は、日本を取り巻く不安定な国際情勢を受け「万全の情報保全体制は必須であると認識している」と述べるにとどめた。

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