計画ではトラックドライバーを確保するため「標準的な運賃」の引上げを行い、賃金を10%上げる。岸田首相は「標準的運賃」の引き上げについて明言した(千和 / PIXTA)

運賃値上げ? 政府が待ったなしの「物流2024年問題」対策の中長期計画まとめる

少子化による若手ドライバーの減少や、高齢化によってトラックドライバーが不足する一方で、最近、アマゾンや楽天市場などのEC市場の急成長で、宅配便の取り扱う荷物は増加している。

トラックドライバーの長時間労働が常態化する中、今年の4月から政府の施策である働き方改革の一環としてドライバーの時間外労働時間が960時間を上限とする規制が設けられ、その他、1年間での拘束時間も改正前の3516時間から、少なくとも3400時間(目標は3300時間)までに抑えるなどの施策が適用される。

これにより運送・物流業者の売上、利益が減少し、労働時間の減少によりドライバーの収入が減少する問題「物流2024年問題」が懸念されており、政府は2月16日その対策の指針となる中長期計画をまとめた。

計画では、2030年までに、荷待ち・荷役の削減、積載率向上、 モーダルシフト、再配達削減などの施策を通して必要輸送力の確保を目指している。

大きな期待を寄せられているのは、19年度に38%と試算された積載率の向上だ。現在、多くのトラックの帰路の荷物の積載が空である現状の改善や、複数企業の商品を同じトラックやコンテナなどに積み込み共同輸配送を進める事によって2030年度には44%まで引き上げる。

工場などの大きな届け先の場合、荷物を届けたものの、他の運送業者が荷下ろししているため、受け入れできず待機を強いられたり、また積み下ろしに時間を取られる現状があった。こうした荷待ち・荷役の時間の問題も2030年度までに1人あたり125時間削減する。

その一方でトラックドライバーを確保するため「標準的な運賃」の引上げを行い、賃金を10%上げる。

「標準的な運賃」とは国土交通省が、長時間労働、低賃金等によりトラックドライバーが確保できず、重要な社会インフラ である物流が滞ってしまうことのないよう、持続的なトラック輸送を維持するために、令和2年4月、事業者が法令を遵守して持続的に事業を行う際の参考となる 運賃として「標準的な運賃」を定めた。

首相官邸のXアカウントで岸田首相は16日、「物流2024問題対応と構造的賃上げに向け、物流業界、荷主となる経済団体と意見交換しました。3月から、政府が定める目安である「標準的運賃」を引上げます。これにより10%前後の賃上げにつながることを期待できます」と述べ、「標準的運賃」の引き上げについて明言した。

この「標準的運賃」の引き上げについては、物価の上昇に繋がる。こうした動きに、「トリガー条項」が凍結されていることに疑問の声が上がっている。

「トリガー条項」とは一定の条件で価格に上乗せされるガソリン税53.8円のうち上乗せ分25.1円が免除される条項で、11年の東日本大震災をきっかけに、復興資金確保のために凍結されていた。

共同通信は16日、政府がガソリンや灯油など燃油価格の高騰を抑えるための補助金について、期限を迎える4月末以降も継続する方向で検討していることを伝えた。

国民民主党代表の玉木雄一郎氏は、Xの投稿で、6.4兆円もの巨額の予算を使った補助金がトリガー発動より高くついており、市場原理も歪めているし、出口戦略もないと指摘している。

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