おとぎ話が始まる場所 ノイシュヴァンシュタイン城の雪景色での冒険

皆さんご存じのディズニーの城の原型は、ドイツで最も人気のある場所の一つである、ノイシュヴァンシュタイン城から来ているとされています。特に冬に降り注ぐ真っ白な雪に覆われた「ノイシュヴァンシュタイン城」は、美しすぎる光景として『天空の城』と称されています。湖や松の森、雪山に囲まれた夢のような景色は多くの人を魅了しています。

ノイシュヴァンシュタイン城( Lukas Gojda / PIXTA)

 

しかし、旅行ガイドブックに掲載されている最高の全景撮影ポイントは、実際にはマリエン橋(Marienbrücke)の方向からノイシュヴァンシュタイン城の側面を撮影するものであり、正面からの写真はドイツの旅行ガイドによれば「不可能」とされています。

冒険心あふれる香港の写真家、ケルビンさんは、何度もノイシュヴァンシュタイン城の正面写真を撮影しようと試みましたが、毎回何らかの遺憾があり、城が修理中だったり雪が降っていなかったりしました。
 

ケーブルカーでの初めての出会い

ケルビンさんが初めてドイツを訪れたのは2016年、20歳の時でした。彼はドイツ国立観光局からの招待を受け、撮影のためにドイツを訪れました。ドイツの最大の特徴は、世界で最も多くの城がある国であり、約2万を超えます。

2016年の7月、ドイツでの撮影中、ケルビンさんはノイシュヴァンシュタイン城の美しい外観とその歴史に深く魅了されました。

この城の誕生はまさに童話のような物語です。城の設計と建設を推進したのは、幼少期をここで過ごした国王ルートヴィヒ2世です。

彼は新しい城を建てるという夢を抱いていました。1864年、彼は18歳で王位を継承し、一生を夢のような城の建設に捧げました。外観と内装のデザインの基盤となったといわれているのが、ドイツ歌劇の作曲家であり指揮者でもあるワーグナーの楽曲です。

1869年に城の基礎が築かれ、ルートヴィヒ2世は総設計者として、彼が愛するワーグナー作曲のオペラ『ローエングリン』に登場する『白鳥の騎士』からとって、この城を「ノイシュヴァンシュタイン」と名付けました。「ノイシュヴァンシュタイン」とは『白鳥の石城』という意味を持ちます。

城の建築面積は2557平方メートルで、外観デザインにはゴシック、バロック、ビザンチンの建築様式が組み合わされており、城全体には生き生きとした白鳥の形が散りばめられています。

ところが、この芸術的な王が美しい城で過ごす日々はとても短かったのです。英年41歳で早逝した彼は、生前わずか数十日間しかこの城で過ごせませんでした。しかも、当時はまだ城の3分の1しか完成していませんでした。彼の短い生涯、芸術への情熱と城の夢への渇望は、その悲劇的な物語として、今日まで語り継がれており、この城に夢幻的な色彩を添えています。

ケルビンさんがドイツを訪れた際、彼はブランデルシュローフェンへのケーブルカーに乗り、途中でノイシュヴァンシュタイン城を通り過ぎる際にシャッターを切りました。彼はガイドに向かいの山に登り、写真を撮ることができるか尋ねましたが、ガイドからは「山に登る方法は誰も知らない」と言われ、正面からの写真を撮ることはできないと告げられました。

しかし彼にはルートヴィヒ2世と同様に、熱い情熱があり、『虎穴に入らずんば虎子を得ず』が彼のモットーでした。

 

ノイシュヴァンシュタイン城の一般的な側面図(proslgn / PIXTA)

 

冒険の道を進み、城の修理で失望して帰る

香港に戻った後、ケルビンさんは山に登る経路を注意深く調査し、3Dマップ、衛星写真、地形判断を通じて、ついに山に登る小道を見つけました。危険がいっぱいでも、少なくとも行ける道があることは分かり、ガイドが「不可能」と言ったことが打ち破られました。

2016年12月、ケルビンさんは友人たちと再びドイツを訪れ、その時に感じたことを「人生でこれまで登った中で最も危険な山」と語っていますが、当時の彼の登山経験はそれほど豊かなものではなかったのです。今は 登山用に整備されたハイキングコースになっていますが、当時は、途中で土は緩み、岩は絶えず滑り落ち、川渡りも必要だったのです。登山は完全に個人の力に依存していました。友人たちに同行してもらい、3人で協力して山を登り、なんとか1時間足らずで理想の撮影場所に到着しました。

3人は興奮した気持ちでノイシュヴァンシュタイン城を眺めましたが、城の正面には足場が組まれ、クラシックな城の正面入り口の赤レンガの建物は薄い布で覆われていました。ケルビンさんは修復中の城を見つめながら、この城の外観が想像していたほど完璧ではないことに気づきました。天候条件もあまり理想的ではありませんでしたが、少なくとも山に登る方法を探索できたということでした。
 

童話の入り口 続き

その後、ケルビンさんは城の修理状況を定期的にチェックし、当初は2017年秋に完成する予定でしたが、延期が続き、2020年1月まで修理が続いていることを発見しました。

修理が完了したとの知らせを受け、彼はすぐにヨーロッパでの撮影旅行にドイツのルートを追加しました。彼はこの旅行のために十分な準備をしました。

第三回の撮影旅行で、ケルビンさんと仲間は苦労して城の向かいの丘に登りました。修理が完了したノイシュヴァンシュタイン城の壮大な建築が目の前に広がり、その真実の姿を一目見ることはできましたが、彼にとってはまだ完璧ではありませんでした。

「このヨーロッパでの滞在中、半月待っても理想的な大雪を見ることはできず、私が求めていたのはノイシュヴァンシュタイン城の雪景色でした。この作品は未完成の作品と言わざるを得ません」

その後、世界的なパンデミック大流行が訪れ、過去ほど海外旅行が容易ではなくなりました。彼は香港の山々を集中して撮影し、個人の写真集を出版し、写真の旅に専念しました。
 

命を危険にさらして登山、童話の城を実現する

さまざまな新しい探索に忙しく、ノイシュヴァンシュタイン城の雪景色の夢は、彼の心の中に眠ってしまいました。

ノイシュヴァンシュタイン城の向かいの丘に3回目に登った後、ケルビンさんは特にノイシュヴァンシュタイン城の雪景色を撮影することを目標にすることはなくなりました。しかし今年1月、このおとぎ話の城が再び彼の人生に入ってきたのです。

1か月の休暇をもらったケルビンさんは、ヨーロッパの山岳地帯を訪れることにしました。すると偶然にも、彼がイタリアで雪山の景色を楽しんでいる間に、ヨーロッパ全域を覆う大規模な吹雪が起こり、気温が急激に下がり、多くの山岳地帯が氷雪に覆われました。

一般の人にとって吹雪は悪天候ですが、ケルビンさんにとっては雪景色を撮影する絶好の機会であり、待ち望んでいた撮影条件が意外にも現れたのは、喜ばしいことです。彼はすぐにイタリアから車でドイツに向かい、ノイシュヴァンシュタイン城の撮影を再び試みることを決意しました。

その過程は同様に挑戦に満ちたものでした。

深夜、彼は1人で車を運転し、途中で「恐怖の森」と呼ばれる場所を通りました。

山麓に到着してから再び登り始め、雪山登山経験が豊富な彼であっても、雪が厚すぎるために安全上の問題が発生する可能性がありました。彼は二度も引き返そうと考えましたが、諦めることなく、何度も試行錯誤を繰り返し、最終的には当初の撮影場所にたどり着きました。

これらすべてが彼を失望させることはなく、童話の中の幻想的な雪の舞う城が彼の目の前に本当に現れたとき、彼の心はとても静かでした。

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理想的な風景を撮影した後、彼はこの城を「小さなもの」と形容し、この過程が意外と「簡単」であったと思いました。ケルビンさんは、この撮影の旅で奇跡を体験し、作品を完成させることに過度にこだわる必要はないと悟ったといいます。

準備が整ったとき、何度も試行錯誤を重ねれば、いつか「時の流れ」、「環境」、「人間関係」が揃ったとき、意外な驚きを得ることができるということを知ったのです。

曾蓮