2024年3月22日、モスクワの郊外クラスノゴルスクで起きた銃撃事件により、クロッカス・シティ・ホールのコンサートホールが全焼し、少なくとも133名が死亡した。このテロ行為についてISISの過激派が犯行を認めている(Photo by STRINGER / AFP)

モスクワ銃撃テロ ロシア市民を襲撃した ISIS-Kとは

米国の情報筋によれば、3月22日にモスクワ郊外のコンサート会場で多くの死者を出した銃撃事件が発生したのは、イスラム国(ISIS)によるものであるとロイター通信が報じた。

事件は、ロシアのクラスノゴルスク市で、ロックバンド「ピクニック」のライブ中に起きた。会場のクロッカス・シティ・ホールが焼失し、少なくとも133人が死亡した。イスラム国は、このテロ行為の犯行を認めている。

この事件に先駆けて、米国は警告を発していた。米国大使館は3月7日に、過激派がモスクワでの大規模集会を標的にする可能性があるとし、米国市民に大規模集会への参加を避けるよう勧めていた。

米国大使館は、どのような攻撃が予想されるかや脅威の詳細については言及しなかった。ロシア連邦保安庁は、イスラム国のアフガニスタン支部ISIS-Kによるモスクワ南西部のカルーガ地方にあるユダヤ教会堂への攻撃を、数時間前に未然に防いだと発表していた。

ISIS-Kがロシアを標的にする理由に関する情報は、深刻な国際的な関心事となっている。

ISIS-Kの概要

イスラム国ホラサン州(ISIS-K)は、イスラム国(IS)が中央アジアおよび南アジアに宣言した支部であり、2014年末、アフガニスタン東部に現れた。イラン、トルクメニスタン、アフガニスタンの一部を領域としている。

その行為は過激で残虐だ。

ISIS-KはISの中でも特に活動が活発な支部の一つであり、2018年にはメンバーの数がピークに達したが、それ以降は減少傾向にある。

米国は、ISIS-Kを依然重大な脅威と捉えている。今年3月、米連邦議会で米国中央軍の司令官マイケル・クリラ将軍は、ISIS-Kは欧州やアジアでの攻撃作戦能力を迅速に高めていて、6か月以内に、アフガニスタン外で米国や西側諸国の利益を警告なしに攻撃できる能力を備えるだろうと予測していた。

しかし、米国本土への攻撃の可能性については低いとしていた。

米国は、2021年のアフガニスタン撤退後、ISIS-Kを含むアフガニスタンの過激派組織に関する情報収集能力が低下している。米軍は予想される攻撃の大まかな概要は把握できるものの、撤退前のような詳細な情報を得ることができなくなっている。

ISIS-Kの攻撃事例

ISIS-Kは、アフガニスタン国内外での攻撃活動において、イスラム寺院を含む様々な対象を狙っている。

2021年、米軍がカブールから撤退する途中に、ISIS-Kはカブール国際空港で起こった爆発攻撃に関与した。米軍は13人の米兵を含む多くの犠牲者を出した。

また、2022年9月には、カブールのロシア大使館で発生した自爆テロの責任を主張した。今年初頭にはイランでの2件の爆発を引き起こし、約100人が亡くなったと報じられている。

ISIS-Kがロシアを狙う背景

3月22日にロシアで発生したISIS-Kによる攻撃は、ロシアに対する敵意の高まりを示している。

専門家たちは、ISIS-Kが近年、ロシア及びその指導者であるプーチン大統領への反対姿勢を鮮明にしていると分析している。

ワシントンのスーファン・センターのコリン・クラーク氏は、ISIS-Kがプロパガンダを通じてプーチンを批判し続けていると述べている。ウィルソン・センターのマイケル・クーゲルマン氏は、ISIS-Kがロシアをイスラム教徒に対する圧制の共犯者と見なしていると指摘している。

クーゲルマン氏によると、中央アジア出身でモスクワに不満を抱く武装勢力もISIS-Kに参加しているとのことだ。

関連記事
ウクライナ保安庁(SBU)は7日、ゼレンスキー大統領と複数の高官を対象としたロシアの暗殺計画に関与したとして、国家反逆などの容疑でウクライナ国家警備局の大佐2人を拘束したと発表した。
5月6日、米国ホワイトハウスは、ロシアによる法輪功学習者の逮捕に対して、再び声を上げ、中共とロシアの関係の強化に懸念を表明した。 中国での法輪功学習者に対する迫害は、生きたままの臓器収奪を含めてすでに有名だが、先週、ロシア警察が突然4名の法輪功学習者を逮捕し、その中の46歳のナタリア・ミネンコワさんが2ヶ月間の拘留を受けたことが判明した。
5月2日に開催された、米連邦議会上院軍事委員会の公聴会では、「世界の脅威」について議論され、ヘインズ総監は中共とロシアの秘密協力が政治、経済、軍事、技術の各分野に及び、特に台湾問題にも大きな影響を与えていると述べ。
ロシア当局は中国共産党と歩みを揃え、自国内で信仰への弾圧を強めている。モスクワ市トゥシンスキー地区裁判所は4日、法輪功学習者であるナタリヤ・ミネンコワ氏(46)について、2カ月間の拘留を命じた。
5月3日早朝、ロシア警察による法輪功学習者の家宅捜索が5件あった。「望ましくない組織」のために活動した疑惑で、4名が拘束された。ロシアの主要メディアが報じたが、法輪功に関して、中国共産党による誤った情報をそのまま流している。