日本でもすっかりお馴染みの「マーボー豆腐」。いまや世界中で食されています。(gontabunta / PIXTA)

マーボー豆腐の由来

日本でもすっかりお馴染みの「マーボー豆腐

豆腐、牛肉、香辛料(山椒、唐辛子、ニンニク、あるいはネギのみじん切り、豆板醤など)で調理されるこの四川料理は百年あまりの歴史を誇り、いまや世界中で食されています。

このマーボー豆腐に由来する1つの物語をご紹介しましょう。

時は清代、第10代同治帝の頃、四川の成都北門順河街に「巧巧(ちょちょ)」という美しい娘が住んでいました。巧巧の顔にはあばた(痘そうの傷跡で、中国語では「麻子」という)がありましたが、彼女の美しさに何の影響もありませんでした。

巧巧は17歳の時、心優しい陳志灝(ちんしこう)という男性に嫁ぎました。陳さんはある食用油の工場の管理人でしたが、彼はそこで働く人たちが、毎日、大変苦労していることに気付き、賃金をできるだけ多く支払うようにしました。これによって、陳さんはみんなから信頼され、尊敬されていました。

夫婦の幸せな時間は瞬く間に過ぎ、10年の歳月が経った頃、陳さんは船の転覆事故で亡くなってしまいました。二人には子供がいませんでしたが、陳さんの妹が同居していて、陳さんの死によって、巧巧と義妹の生活は苦しくなりました。

陳さんからの恩を忘れられない従業員たちは、この二人を助けるために、「ある策」を考えました。彼らは毎日、油を売りに行く途中で巧巧の家に寄り、それぞれが家から持ってきた野菜、米、肉、豆腐などを持ち寄り、巧巧に食事を作ってもらうことにしたのです。皆はわざと少なく食べ、残した分を巧巧と妹の食事にあてたのでした。

暖かい友情に支えられ、巧巧は生きていく意志を固めました。彼女は精一杯、腕を振るってより美味しい料理を作るよう努力しました。その中でも彼女が作った「羊肉豆腐」の味は格別でした。

ヒツジ肉と豆腐に唐辛子や浜納豆(はまなっとう)などの調味料を加えて調理したもので、肉体労働者たちの食欲を満たし、疲労回復にも効果がありました。皆の称賛を受けたこの料理は、たちまち周辺の地域に広まっていきました。二人は家を小さな飲食店に改造して商売を始めます。すると、彼女たちの料理はとても美味しいと評判を呼び、商売はますます繁盛しました。

巧巧が亡くなった後、人々は彼女を追想して「羊肉豆腐」を「麻婆豆腐」と改名しました。「麻」は巧巧の顔のあばた(麻子)を、「婆」は彼女に対する尊敬を表します。現在、麻婆豆腐に使われていた羊肉は牛肉や豚肉に変わりましたが、この料理の背景となった友情の物語は、今でも語り継がれています。

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