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胆嚢の守り方

知られざる断食の落とし穴――胆嚢の健康を守るには

健康に関する見解

近年、断続的断食(インターミッテント・ファスティング)は、減量や健康改善の方法として人気を集めています。しかし、この習慣は一部の人において胆石のリスクを高める可能性があり、重症化すると胆嚢炎や、場合によっては胆嚢摘出手術が必要になることもあります。

この記事では、胆嚢の機能を現代医学と中医学の両方の観点から探り、断続的断食を実践する際に胆石のリスクがある人を特定し、胆嚢の健康を維持するためのガイダンスを提供します。

・現代医学の見解: 
現代医学では、胆嚢は肝臓の下に位置する小さな臓器です。その主な機能は肝臓で生成される胆汁を貯蔵し濃縮することです。胆汁は食事中の脂肪の分解と吸収を助けます。脂肪の多い食品を摂取すると、コレシストキニンというホルモンが胆嚢を刺激し、小腸に胆汁を放出させ、消化を促進します。

・中医学の見解: 
中医学では、胆嚢は消化機能だけでなく、エネルギーレベル、精神状態、そして心理状態にも影響を与えるなど、より広範な役割を担っていると考えられています。例えば、胆嚢の調子が良い人は勇敢で決断力があり、胆嚢が弱い(胆のエネルギー不足)人は臆病で優柔不断、夜間の鮮明な夢や不眠症に悩まされる傾向があります。
 

断続的断食と胆石のリスク

胆嚢は消化を助けるために胆汁を濃縮する必要があります。長時間の断食は胆嚢での胆汁の滞留時間を延長させ、胆汁が過度に濃縮される原因となります。過度の濃縮と胆汁中のコレステロール過剰が相まって、胆石形成につながる可能性があります。

急激な体重減量は、この問題を悪化させる可能性があります。なぜなら、大幅な体重減量の期間中、肝臓はより多くのコレステロールを胆汁中に放出するからです。

ある研究によると、非常に低カロリーの食事(1日500カロリー)を摂取した参加者は、適度な低カロリー食(1日1,200〜1,500カロリー)を摂取した参加者と比較して、入院治療や胆嚢摘出手術を要する症状性胆石を発症するリスクが3倍高いことが明らかになりました。 ​
 

ケーススタディ:アンナさんの体験

アンナさんは数ヶ月間、体重を減らすために断続的断食を実践していましたが、上腹部右側に激しい痛みが現れ、吐き気や食後の不快感を伴うようになりました。医師の診断により、軽度の胆石が見つかりました。

現代医学の観点からは、アンナさんの長期間にわたる断食が胆嚢の排出を不規則にし、胆汁の濃縮を引き起こし、胆石の形成を促進したと考えられます。中医学では、断食中のアンナさんの気分の変動や睡眠障害も胆嚢の問題の一因とみなされます。したがって、断続的断食を行うすべての人がこのような症状を経験するわけではありません。
 

胆嚢機能を保護する方法

胆嚢の健康を守るためには、以下の5つの分野に焦点を当てる必要があります:

1. 十分な水分摂取

日常的に十分な水分を摂ることで、胆汁の過度な濃縮を防ぎ、胆石のリスクを減らすことができます。

2. 健康的な脂肪

健康的な脂肪(例:オリーブオイル、ナッツ、アボカド)を摂取することで、定期的な胆嚢からの胆汁の排出を促し、胆汁の長期滞留を防ぎます。また、野菜、果物、魚、ナッツが豊富な健康的な食事は、胆石のリスク低下繋がることが研究で示されています。

3. 食物繊維が豊富な食品

食物繊維が豊富な食品をより多く摂取することは、胆嚢の健康に良いとされています。食物繊維はコレステロールの正常な代謝を助け、胆汁中のコレステロール量を減らし、胆石の発生を予防します。研究によると、食物繊維の摂取量が多いほど、胆石のリスクが大幅に低下することが示されています。

4. 気分と睡眠の調整

中医学の医師は、感情が胆嚢に大きな影響を与えると考えています。バランスの取れた気分を維持し、ストレスや不安を管理し、午後11時前に就寝して良質な睡眠を確保することは、胆嚢の健康にとって非常に重要です。

現代医学では、脳内に受容体を持つコレシストキニンが、消化管と神経系に調節作用を持つことも発見されています。このホルモンは精神と睡眠に影響を与える可能性があります。研究によると、コレシストキニンの受容体は、消化、満腹感、疼痛、気分調節、記憶プロセスなど、様々な生理機能を調節することが示されています。

5. 定期的な健康診断

定期的に健康診断を受け、右上腹部に不快感や痛みを感じた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
 

胆石の高リスク群

以下のグループは、胆石の感受性が高まるため、断続的断食を実践する際には特に注意が必要です。

1. 胆石の家族歴がある人

2. 過体重の人、特に急速な減量を目指している人

3. 糖尿病患者(​糖尿病は肝臓や胆嚢の機能に影響を及ぼし、胆石が形成されやすくなります。2021年のメタアナリシスでは、肥満および2型糖尿病が胆石リスクの増加と独立した因果関係を持つことが示されました。)

4.コレステロール値が高い人
 

胆嚢摘出に対する見解

マークさんは肥満であり、急速な減量を試みた結果、重度の胆石を発症し、胆嚢を摘出することになりました。西洋医学によれば、胆嚢を摘出しても体の機能にはあまり影響がないとされています。しかし、中医学の観点からは、胆嚢の摘出は消化の問題だけでなく、頭痛、耳鳴り、視覚障害、肋骨の痛み、坐骨神経痛などの問題を引き起こす可能性があると考えられています。

この見解は、経絡の概念に基づいています。経絡とは、体のエネルギーが流れる経路であり、体の様々な部位を繋いでいます。胆経は、目、頭、首、肩、腹部の側面、脚の外側、足首を繋いでいます。​ある部位に問題が生じると、他の関連部位にも影響を及ぼす可能性があります。

生化学医学と伝統的なエネルギー医学は、相反するものではなく、むしろ補完的な関係にあります。​これらは異なる二つの医学ではなく、一つの医学の二つのレベルと考えられます。​現在の研究では、医学のエネルギーレベルの側面がまだ十分に探究されておらず、西洋医学の観点からこれらの症状を胆嚢摘出と直接関連付けることは難しいとされています。

つまり、健康管理においてどのようなアプローチを取るにしても、常に胆嚢の健康を守ることを考慮していただきたいと思います。

この記事で述べられている見解は筆者の意見であり、必ずしもエポックタイムズの見解を反映するものではありません。

(翻訳編集 陳武)

慢性的な精神、行動、身体の病気を対象とした統合医療医。中国医学の医師。精神科認定医。統合医療の楊研究所とアメリカ臨床鍼灸研究所の創設者兼ニューヨーク北部医療センターのCEO。『Integrative Psychiatry(統合精神医学)』、『Medicine Matters(医学の重要性)』、『Integrative Therapies for Cancer(癌の統合療法)』に貢献。また、ハーパーコリンズの『Facing East: Ancient Secrets for Beauty+Health for Modern Age(現代の美と健康のための古代養生法)』とオックスフォード大学出版局の『Clinical Acupuncture and Ancient Chinese Medicine(臨床鍼灸と古代中国医学)』の共著者。