日本の夏は、蒸し暑く、気温と湿度の高い日が続き、気候は台湾の亜熱帯とよく似ています。そのような高温多湿の湿熱の中で暮らしてきた台湾の人々は、長年にわたり、身体を内側から整える独自の食養生の知恵を発展させてきました。
台湾料理の基本は「脾胃を温め、熱と湿を取り除く」こと。美味しさはもちろん、真夏の暑さの中でも、身体を軽やかで快適な状態に保つことができます。辛さと刺激の強いインドやタイの料理に比べて、台湾料理は優しく、素材の持ち味を活かした自然な味わいが特徴で、日本人の味覚にもなじみやすいのが魅力です。
台湾の人々は、食材による滋養と香辛料の使い方に長けており、生姜や九層塔(大葉で代用可)、陳皮、ナツメなどを使って脾の湿気を温かく散らしながら、さっぱりとした野菜や冷菜をうまく取り入れて暑さを和らげています。こうした工夫によって、脾胃の気の流れを活性化させ、湿気を体にため込まず、熱も上にこもらないよう整えているのです。
1. 和風三杯鶏(台湾三杯鶏のアレンジ)

おすすめ体質: 脾陽虚、水太り・むくみやすい、食欲不振、手足が冷えやすい
分量: 2人分
材料:
- 鶏もも肉 200g
- 生姜 5枚
- にんにく 3片
- 青ねぎ 1本
- 醤油 大さじ1.5
- みりん 大さじ1.5
- ごま油 大さじ1
- 大葉 適量
作り方:
鶏もも肉を一口大に切り、ごま油で生姜とにんにくを炒めて香りを出し、鶏肉を加えて炒める。醤油とみりんを加えて煮詰め、仕上げに大葉をさっと加えて完成。
養生ポイント:
温かい味付けで脾胃の働きを活性化。疲れやすく、手足が冷えやすい方や、食欲がない方におすすめします。
2. 苦瓜とパイナップルの鶏肉サラダ

おすすめ体質: 湿熱体質、顔の赤み、口の渇き、イライラしやすい方
分量: 2人分
材料:
- 鶏むね肉 150g
- 白苦瓜 1/2本(さっと茹でてアク抜き)
- パイナップル 100g(角切り)
- レモン汁 少々
- 塩 適量
- オリーブオイル 適量
作り方:
鶏むね肉を蒸して細かく裂き、苦瓜とパイナップルと和える。レモン汁、オリーブオイル、塩で味を調える。冷蔵庫で冷やして食べるとより爽やか。
養生ポイント:
体の熱を冷まし暑さを和らげ、肝の働きを整えて気の巡りを良くし、脾を助けて消化を促す効果があります。苦瓜で熱を冷まし、パイナップルで消化を助ける。暑さでイライラしやすい人にぴったり。
3. 小豆とかぼちゃのお粥(養生スイーツ粥)

おすすめ体質: 脾虚湿滞、疲れやすい、ぽっちゃり体質、暑さに弱い方
分量: 2〜3人分
材料:
- 小豆 30g(事前に浸す)
- かぼちゃ 100g(皮をむいて角切り)
- 白米 50g
- 水 600ml
作り方:
小豆を半煮えにしてから白米とかぼちゃを加え、やわらかくなるまで煮込む。仕上げに塩を少々、または枸杞を加えると補血効果もアップ。
養生ポイント:
脾を健やかにして湿気を取り除き、内側から気を補い、熱を冷まして腫れを抑える働きがあります。小豆が余分な水分を排出し、かぼちゃが脾を温めて元気を補ってくれるので、むくみや疲れやすい体質の方におすすめです。
4. 氷砂糖と陳皮の冬瓜茶(夏の養生ドリンク)

おすすめ体質: 多汗・ほてり・口の渇き・ニキビができやすい方
分量: 3〜4人分
材料:
- 冬瓜の皮 200g(薄切り)
- 陳皮 5g
- 氷砂糖 適量
- 水 800ml
作り方:
冬瓜の皮と陳皮を水に入れて約30分煮る。氷砂糖で甘さを整え、冷やして飲むと清涼感がアップ。
養生ポイント:
体内の余分な水分と熱を取り除き、胃腸の調子を整えながら暑さを和らげ、気の巡りを良くして湿気を追い出す作用があります。冬瓜の皮が湿気を排出し、陳皮が消化を助けるので、体がほてりやすく、吹き出物ができやすい夏にぴったりの飲み物です。
結びに
台湾の人々は湿気と暑さの厳しい環境に暮らしながらも、油っこくも辛すぎもせず、「体を温めつつ熱をこもらせない」「軽やかで爽やかだけれど冷やしすぎない」といった食のバランスを大切にしています。こうした“脾を温めて陽気を養い、湿と熱をやさしく取り除く”という食の知恵は、まさに日本の蒸し暑い梅雨や真夏の気候にぴったりです。
中医学では「湿」は陰邪であり、とくに脾を弱らせやすいとされます。だからこそ、脾に動力(陽気)を補い、湿気を体の外へ押し出す力が大切です。
台湾料理は、香辛料や潤いを与える果物、煮込む調理法を組み合わせることで、脾胃の陽気を高め、冷えを避けながら、同時に熱を冷まして暑さを和らげる。その知恵は、まさに「時に順応し、土地の状況に応じて調える食養生」のお手本といえるでしょう。
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