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毎日の排便が腎臓の健康と長寿に重要な理由

毎日の排便は、単なる快適さの問題ではなく、腎機能や長期的な健康状態を示す重要な手がかりです。

研究によると、排便の頻度が少ないことは、特にインドキシル硫酸という毒素の蓄積と関連しており、これは腎機能を徐々に低下させ、寿命の短縮と関係しています。

最適な排便頻度の科学的根拠

2024年に『Cell Reports Medicine』に掲載された研究では、1日1~2回の排便がある人が、もっとも健康的な生物学的マーカーを示していることがわかりました。これには、炎症の改善、より効率的な毒素排出、腸内微生物のバランスの良さなどが含まれます。

研究者たちは、1,400人以上の健康な米国成人を対象に、腸内微生物叢、血液化学、生活習慣のデータを収集しました。参加者の自己申告による排便頻度は、便秘(週1~2回)、低正常(週3~6回)、高正常(1日1~3回)、下痢の4つのグループに分類されました。

腎臓との関連

腎機能は、腎臓が血液をどれだけうまくろ過できているかを示す「推定糸球体濾過率(eGFR)」で評価されました。結果として、便秘の人は腎機能の指標が悪化していることが明らかになりました。

なぜこれは重要なのでしょうか? 腎臓は、血液から老廃物や余分な水分を除去し、電解質のバランスを調整し、さらに血圧や赤血球の生成を調節するホルモンを分泌するなど、非常に重要なろ過システムとして働いています。腎機能が低下すると、体内に毒素が蓄積し、老化の進行や多くの病気のリスクが高まります。

便秘、すなわち週1~2回の排便しかない人は、血液中の毒素レベルが高く、特に腎機能が十分でない場合、インドキシル硫酸という老廃物が蓄積しやすい傾向があります。このインドキシル硫酸は腎臓に大きな負担をかけ、不健康な腸内発酵の副産物として生成されます。食物繊維が不足していると、腸内細菌はタンパク質を発酵させ、より多くの老廃物を生み出し、それを体が排除しようとさらに負担を強いられるのです。

一方で、頻繁な軟便のグループは、炎症や胆汁酸の喪失といった兆候が見られ、これは肝臓や胆嚢の機能障害と関連することが多いとされています。胆汁酸が適切に再利用されない場合、腸が炎症を起こし、脂肪が十分に吸収されず、栄養バランスが崩れる可能性があります。

現在の研究では、老化は糸球体濾過率の進行的な低下と深く関係しており、これは高齢者における腎疾患の最大の予測因子となっています。腎機能の低下は寿命の短縮に直結し、排便習慣は長寿研究において極めて重要な関心事項となっています。

排便頻度に影響する要因

研究では、年齢、性別、体格指数(BMI)が排便頻度と有意に関連していることが示されました。

具体的には、若年層、女性、体格指数が低い人は排便頻度が低い傾向にありました。研究者たちは、女性におけるホルモンの変動が排便の変化に関与している可能性があると指摘しています。また、男性は女性よりも食事や間食の量が多いため、これが排便頻度の高さに寄与していると考えられています。

研究チームは、理想的な排便頻度を実現するために関連するいくつかの要因を特定しました。

排便頻度に最も強く影響するのは、果物や野菜の摂取量であると、システム生物学研究所の准教授であり本研究の共同著者でもあるショーン・ギボンズ(Sean Gibbons)氏は述べています。

その他の重要な要因には、十分な水分摂取、定期的な運動、植物中心の食生活が挙げられます。
 

便通を整える自然療法

排便を一定のリズムで維持することが理想ですが、現代のストレス社会や加工食品の普及により、それは簡単ではありません。

インドの伝統医学であるアーユルヴェーダによれば、時折の便秘は、腸内の過剰な乾燥によって引き起こされる「ヴァータ(風)」の乱れに由来し、ストレスによって悪化することが多いとされています。この乱れはヴァータの「下方への動き」のバランスを崩し、腸内の乾燥と排便不良を引き起こします。

ヴァータを整えて定期的な腸の働きをサポートするには、乾燥・冷たい・生の・高度に加工された食品を避け、温かく・湿り気があり・油分を含んだ・しっかりと調理された食品を摂取することが勧められます。たとえば、タヒニ(栄養豊富なごまペースト)は腸の内壁を潤滑し、生のナッツのような乾いた硬い食品や、ヨーグルトのような体を冷やす食品よりも適しています。

また、北半球で冬(冷たく乾燥したヴァータの季節)が終わる頃には、オーガニックオーツ、チアシード、バジルシードといった食品が、腸管を潤滑しながら胆汁や毒素を結びつけて排出を促す、天然の可溶性繊維を提供してくれます。

排便の規則性を改善しようとする人々のために、研究はいくつかのアプローチを支持しています。

食物繊維の摂取を増やす

可溶性・不溶性の両方の食物繊維が重要です。良い供給源には、調理された果物や野菜が含まれます。例としては、皮付きのリンゴ、梨、ベリー、ブロッコリー、ニンジンなどがあります。研究では、リンゴに含まれるペクチンが腸の健康に特に有益である可能性が示されています。

一般的に小麦粉などを含む通常のパンに使われる従来の穀物は、便のかさを増やす目的で推奨されることが多いですが、グリホサート残留物や遺伝子組み換え作物への懸念が利点を上回ることもあります。これに対し、主に野菜中心の食事の一部として取り入れるオーガニックオーツは、より望ましい選択肢となるかもしれません。

水分補給を維持する

水は便を柔らかくし、消化を助けるうえで不可欠です。1日あたり6〜8杯を目安に飲むことで、便秘の予防に効果がある可能性があります。ハーブティーや透明なスープなどの温かい飲み物も排便を促す働きがあります。

アルコールやカフェインなど、脱水を引き起こす可能性のある飲料は避けるのが望ましいですが、季節やホルモンバランス、感情などによって個人の耐性は異なります。すでに便秘傾向にある人でも、他の対策を講じていれば、1日1杯のコーヒーは許容範囲となる場合もあります。

自然療法

アクチニジンを豊富に含むキウイフルーツは、副作用なしに排便の頻度を改善することが確認されています。また、ニレの粉末状の可溶性繊維は、腸を穏やかに整える効果があります。そのほか、穏やかな下剤作用のある食品もあります。たとえば、マグネシウムが豊富な調理済みのケール、キャベツ、カボチャの種(特に事前に浸したもの)は、腸の筋肉をリラックスさせ、結腸に水分を引き込む作用がある可能性があります。

一貫した食事習慣を確立する

消化のリズムを整えるためには、食事の時間を一定に保ち、頻繁な間食を避けましょう。食事の合間に腸を清掃する「移動運動複合体(MMC)」という脳波による腸の活動が働ける時間を確保することが大切です。

定期的に運動する

定期的な運動は腸のぜん動運動を促進し、便の通過時間を短縮します。ウォーキング、ヨガ、水泳、ジョギングなどの適度な有酸素運動を行うことで、腸の活動が活性化し、全体的な消化機能の改善が期待できます。

トイレの姿勢を最適化する

前かがみで腕を支える姿勢(しゃがむ姿勢に近い)は、特に高齢者にとって排便を楽にする助けになります。このような姿勢により、結腸がまっすぐになり、排便がよりスムーズになる可能性があります。

ストレスを効果的に管理する

ストレスは腸の働きを乱し、便秘を悪化させる要因になります。また、排便の自然な衝動を抑えることは臓器にさらなる負担をかけ、問題を深刻化させることがあります。研究では、深呼吸、瞑想、段階的筋弛緩などのリラクゼーション技法を取り入れることで、ストレスを軽減し、迷走神経を通じた腸と脳の良好な連携を保つことができ、健康的な消化が促されるとされています。
 

長期的な視点:毒素排出と長寿

排便の規則性は、単なる日常の快適さのためだけでなく、健康と長寿を支える包括的なアプローチの一部です。毒素の排出を促進することで、長期的に腎臓の健康を守ることができます。

バランスの取れた食生活、水分補給、定期的な排泄習慣などは、腎機能をサポートし、より長く健康に生きるための基盤となる可能性があります。腸内機能を健康に保つことは、最も見落とされがちですが、実は強力なアンチエイジング対策の一つなのです。

(翻訳編集 日比野真吾)

臨床栄養士および自然療法士として、2009年より消化不良、依存症、睡眠障害、気分障害に悩む方々を支援するコンサルティングを実施。大学で補完医療を学ぶ中で、行動神経科学や腸・脳の不均衡に強い関心を抱く。それ以来、栄養ゲノミクス、トラウマにおけるポリヴェーガル理論、および栄養療法アプローチに関する大学院レベルの認定資格を取得。