【ニュースレターが届かない場合】無料会員の方でニュースレターが届いていないというケースが一部で発生しております。
届いていない方は、ニュースレター配信の再登録を致しますので、お手数ですがこちらのリンクからご連絡ください。

研究:太陽フレアの温度は予想より最大6.5倍高い可能性

イギリスの研究によると、太陽フレアの温度は、これまでの推定より最大で6.5倍高い可能性があるといいます。この研究は、約50年にわたり続いた謎に思いがけない答えをもたらすかもしれません。

イギリス・セントアンドリュース大学が9月3日に発表したプレスリリースによると、太陽フレアとは、太陽の外層大気が突発的に莫大なエネルギーを放出し、その一部が摂氏1,000万度以上にまで加熱される現象です。こうした激しい現象は、地球に届く太陽のX線や放射線を大幅に増加させ、宇宙船や宇宙飛行士に危険を及ぼすとともに、地球の高層大気にも影響を与えます。

同大学の研究では、太陽フレアが太陽プラズマ(太陽風とも呼ばれる)を摂氏1,000万度以上に加熱する証拠を調査しました。太陽プラズマはイオンと電子から構成されています。今回の新たな研究では、太陽フレアに含まれるイオンの温度が6,000万度を超える可能性があることが示唆されています。

他分野のデータを分析することで、研究者たちは太陽フレアが電子よりもイオンを強く加熱している可能性が高いことを発見しました。

この研究を主導した同大学の太陽理論シニア講師、アレクサンダー・ラッセル氏は、「磁気リコネクション」と呼ばれるプロセスが、電子の加熱よりも6.5倍高い温度でイオンを加熱していることを突き止めたと述べています。

これは普遍的な規則であるようで、地球近傍の宇宙空間や太陽風、コンピューターシミュレーションにおいても確認されています。しかし、これまで誰もこれらの研究分野と太陽フレアを関連づけてはいませんでした。

ラッセル氏は次のように説明しています。「太陽物理学では長らく、イオンと電子は同じ温度であるべきだと考えられてきました。ところが、現代のデータを用いて再計算してみたところ、太陽フレアの重要な領域において、イオンと電子の温度差が数十分間持続することが分かりました」

さらにこう付け加えています。「特に重要なのは、新たに計算されたイオン温度がフレアのスペクトル幅と一致していることです。これにより、約半世紀にわたり未解決だった天体物理学上の謎が解明される可能性があります」

1970年代以降、科学界では太陽フレアのスペクトル(極端紫外線およびX線における特定の「色」の太陽放射の明るさの増加)が、なぜ予想より幅広いのかという問題が存在してきました。

これまで科学者たちは、その原因は乱流運動にあると考えてきましたが、今回の研究は、スペクトル線の幅が広がる主因がイオンの温度にあるという新たな可能性を提示しています。

アメリカ航空宇宙局(NASA)によれば、太陽フレアから放たれる強力な放射線は、X線、ガンマ線、電波、紫外線、可視光線など、電磁スペクトル全体に及びます。これは太陽系で最も強力な爆発現象であり、最大級のフレアではそのエネルギーが10億発の水素爆弾に相当します。

NASAの太陽ダイナミクス天文台は現在も太陽の観測を続けており、太陽フレアの発生の様子を撮影しています(上記画像参照)。

太陽ダイナミクス天文台は2010年2月11日に打ち上げられた、地球を周回しながら太陽を常時観測する半自律型の宇宙船です。高さは4.5m、両翼の幅は2m以上あり、総重量(燃料込み)は3,100キロkgに達します。

太陽ダイナミクス天文台は、太陽大気の微細な空間・時間スケールや複数の波長域を同時に観測することで、太陽が地球および地球近傍の宇宙空間に与える影響を理解するための研究に寄与しています。その目的は、太陽活動の変化が地球上の生命や人間の技術システムにどのような影響を与えるのかを解明することです。

陳俊村