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秋分が教える天地調和の知恵 ― 老子の「和の気」と現代養生

「秋分」の節気は、毎年9月23日前後にやってきます。秋が訪れ、昼と夜がちょうど半分に分かれる日です。『春秋繁露・陰陽出入上下』には「秋分とは、陰陽相半ばするなり」とあり、この日の具体的な現れは「昼夜が等しく、寒暑が均しい」ことで、天地が調和する瞬間です。一年の中で天地の陰陽が調和するのは春分と秋分のみ。『淮南子・氾論訓』にも「天地の気は和より大なるはなし。和とは陰陽が調い、昼夜が分かれ、生物が育つ。春分に生じ、秋分に成る」とあります。そのため古来、秋分と春分は非常に重視されてきました。

人々は古くから節気を通じて「天人合一」の養生の道を悟り、日々の生活に実践してきました。では、古人の秋分に対する観察と洞察は、現代の私たちにどのような示唆を与えてくれるのでしょうか?一緒に見ていきましょう。
 

一、秋分の知らせ:今日から夜が昼より長くなる

秋分の日、北半球では昼より夜が長くなる変化が始まります。太陽が赤道を真東から真西に照らし、「昼夜が等しく、寒暑が均しい」状態となります。この日を境に太陽の直射点は次第に南へ移動し、北半球では昼が短くなり夜が長くなっていきます。そして冬至に至るまで、気温も冷え込みに向かいます。秋分は陰陽・寒暑の転換点であり、心身を守るために備えと警戒が必要であることを告げています。
 

二、秋分の「三候」が伝えるメッセージ

古人は秋分を三つの「候」(五日ごとの自然現象)で表しました。『月令七十二候集解』によれば、中原地方の代表的な変化は次の通りです:

  • 一候 雷始めて声を収む:秋分になると雷鳴が止み、雨も少なくなる。
     
  • 二候 蟄虫戸を坯(ふさ)ぐ:冬眠する虫が巣穴の入り口を狭め始め、大寒の頃には完全に塞いでしまう。
     
  • 三候 水始めて涸る(かる):空気が乾燥し、降水量がさらに減り、川や湖、泉などの水量が徐々に少なくなっていく。

地域によって現れる自然現象には差があるとしても、いずれも「自然界の営みが収束に向かう」ことを示しています。これは「冬支度」の始まりといえるでしょう。忙しい現代人にとっては、この節気は生活のリズムや心の持ち方を「ゆっくりモード」に切り替えるサインでもあります。

秋分の時節は、生活のリズムや気持ちを“スローライフ”へと切り替える合図です(Shutterstock)

 

三、古代の秋分「夕月」が示した生命観

『礼記』には「天子は春に朝日し、秋に夕月す」とあります。つまり、天子が百官を率いて春分には太陽を祭り、秋分には月を祭ったのです。上古から清朝に至るまで、君臣ともに天地を敬い、神明の恵みに謙虚で慎み深く感謝を捧げました。清代の『帝京歳時紀勝』にも「春分に日は祭られ、秋分に月は祭られる。これ国の大典なり」と記録されています。

五千年の中華文化は帝制が続いてきましたが、その核心は天道を尊び、それに倣って修身斉家治国平天下を実践する道徳にありました。盛世には、帝王の心に常にあったのは民の幸福であり、天地人の調和でした。しかし道から外れた時代には、君主も民もともに災いに見舞われました。

現代の世界はどうでしょうか。東西を問わず、民主か専制かを問わず、人々は戦火に翻弄され、また生存を脅かす圧迫に怯え、安らぎを見いだすことが難しい時代です。ここ百年余りの間に、人の心は無神論や進化論の仮説、さらに共産主義によって洗脳され、天道や神明の存在を否定し、道徳的価値を軽視してきました。その混乱ぶりは古今未曾有であり、人々が今日直面している苦難は、かつて以上に深刻です。秋分の時節は、まさに人々が深く考え、伝統的価値に立ち返る好機なのです。
 

四、秋分の自然現象は市場経済活動をどう正すのか

秋分の「昼夜均しく、寒暑平らかなり」という現象は、人間社会における「公正・公平」の実践に対応しています。古人はどのようにそれを実践したのでしょうか。

中国古代の諸朝代では、春分と秋分の日に度量衡の基準を校正しました。『礼記・月令』には「日夜分(ひと)しく、則ち度量を同じくし、権衡を平らかにし、鈞石を正し、角斗甬(斛)をす」と記されています。つまり、市場で用いられるさまざまな度量衡の標準を整えて統一し、公平な取引を実現し、不正や紛争を防いだのです。

年に一度の秋分は、目を覚まし己を正す良い時期でもあります。天道に倣い、公平と公正の精神を持って人と接し、誠実に物事を行えば、人間関係も調和し、成功にも近づけるでしょう。
 

五、秋分の「和の気」が示す生命の道

歴代王朝では秋分を過ぎてから「秋決」を行いました。『通典・刑法八・寛恕』には、唐の太宗が即位当初に「立春から秋分まで死刑を執行してはならない」という法律を定めたと記録されています。これは天地陰陽の調和を重んじ、万物の生長を乱さないための善法でした。この制度は清朝まで続きます。

なぜ秋分以降に刑を執行したのでしょうか?それは春分から秋分までは万物が盛んに育つ時期であり、刑罰による「殺気」はその繁栄を妨げると考えられたからです。そこで、自然界に「粛殺の気」が訪れる秋分以降に死刑を執行したのです。これは自然に従い、節気に調和する「天人合一の道」であり、人に生命の調和と円満の道を示しています。
 

六、大自然の法則に倣った秋の養生法

秋分は天地が調和し、万物が実る収穫の季節です。中医学では秋を「養収(収めて養う)」の時とし、人体の陽気が内に収斂(しゅうれん)し始めるこの時期にこそ「養収」を実践し、天人合一の養生の道を体現すべきだとされています。具体的には生活、食事、運動、心の在り方において以下のように実践します。

1.ゆったりと平和に、精神を収める

『黄帝内経』は、秋の養生は「神気を収斂する」ことにあると説きます。心を穏やかにし、外に求めず「志を安らかにする」ことで、秋の乾燥と焦燥の害を減らすことができます。日常では名誉や利益への執着が精気を乱しますが、「養収」とは雑念を払って心を鎮め、執着を解き、休養して精力を蓄えることです。秋の澄んだ空気の中で高所に登り、広大な景色を眺めれば、気持ちが落ち着き、爽快感が得られます。

清代 佟毓秀《登高賞瀑》(国立故宮博物院提供)

2.生活リズムは「養陰」を第一に

秋から冬にかけて人体の陽気は自然に減少し、乾燥は体液を損ないやすくなります。そのため、口渇、不眠、いらいら、のぼせなど「陰虚火旺」の症状が出やすく、体調を崩しやすいのです。大自然の法則「春夏は陽を養い、秋冬は陰を養う」に従い、この時期は潤いを補い、陰を養うことが大切です(陰とは血液や唾液、汗、涙、体液、内分泌など)。精神を無駄に消耗せず、生命力を温存することが養生につながります。生活習慣や食事、心の調整を通じて、内面に潤いを蓄えましょう。

中医学によれば、五臓が充実して気血が旺盛であれば、肌は潤い、筋肉はしっかりし、髪は豊かになります。内臓からの滋養が体の美と健康を保つのです。(Shutterstock)

3.早寝早起きと穏やかな運動

『黄帝内経』は、秋には「早寝早起き」の生活習慣が大切だと強調します。夜は早めに休み、夜明けとともに起きて体を伸ばし、秋の日差しを浴びれば、身心が活性化し、秋に陥りやすい憂鬱を和らげます。現代医学でも、寒くなると血流が滞り血栓ができやすくなるとされ、長く寝過ぎるのは良くありません。朝日を浴び、軽く体を動かす方が健康的です。

秋分以降は人体の精気が収斂し始めるため、運動も過度であってはいけません。発汗しすぎると陽気を損なうので、軽く穏やかな運動が望ましいのです。
『文子』には「老子曰く、天地の気は和より大なるはなし」とあります。秋分の「和の気」はまことに貴重で、千金にも代えがたいものです。この時節にそれを大切に受け入れ、生命を養うことこそ、最もふさわしい養生の道といえるでしょう。
 
 (翻訳編集 華山律)

容乃加