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筋トレが脳に良い理由

筋力トレーニングの利点は、筋肉の発達だけにとどまりません。

高齢者においては、筋力トレーニングが認知機能の向上、脳の健康的な神経ネットワークの維持、そして脳の萎縮速度の低下と関連していることが報告されています。

アメリカでは、およそ20%の高齢者が定期的に筋力トレーニングを行っています。あなたは試したことがありますか?

脳の衰えを遅らせる

ある研究では、軽度認知障害のある高齢者を対象に、24週間の筋力トレーニングが脳構造に与える影響を調べました。

ブラジルの参加者たちは、週2回、日を空けて午前中にトレーニングを行います。各セッションは1時間で、指導者の監督のもと、10種類の主要筋群(筋肉のグループ)の運動が組み込まれていました。トレーニングには、レッグエクステンション(脚の伸展運動)、チェストフライ(胸の開閉運動)、レッグカール(脚の屈曲運動)、ラットプルダウン(広背筋の引き下げ運動)、レッグプレス(脚押し運動)、シーテッドロー(座った姿勢での引き寄せ運動)、ヒップアブダクション(股関節外転運動)、カーフレイズ(ふくらはぎの持ち上げ運動)、リバースクランチ(逆腹筋運動)、シットアップ(腹筋)などが含まれていました。

トレーニング期間後、参加者は記憶力が向上し、「レイ聴覚言語学習検査(言語学習とエピソード記憶を測るテスト)」で良い成績を示しました。さらに、脳の健康を示す重要な指標である白質の構造的健全性が改善しました。

非トレーニング群とトレーニング群のどちらも、左海馬や楔前部などの一部で灰白質の減少が見られました。しかし、右側の脳領域の体積が減少したのは非トレーニング群だけであり、筋力トレーニングがその部分を保護する可能性が示唆されました。さらに、トレーニング群では左海馬の萎縮が少なく抑えられました。海馬と楔前部は、空間記憶や視覚処理に重要な役割を果たす部分であり、アルツハイマー病ではしばしば障害される領域です。

追跡研究では、トレーニングが終了した後も一部の効果が持続することが示されました。後帯状皮質に見られた変化は時間とともに薄れましたが、海馬の一部は保護された状態が約1年間続きました。

これらの効果の一部は、血流の改善によるものと考えられます。

「筋力トレーニングは、脳への酸素や栄養の循環を促進し、老廃物の除去を助けることで、脳機能をサポートし、神経変性と、マスターパーソナルトレーナーで機能栄養士のポール・エーレン氏は「エポックタイムズ」に語りました。

エーレン氏はさらに、筋力トレーニングは「前帯状皮質」という、モチベーション・努力・粘り強さに関連する脳領域も活性化させると述べています。

「困難や不快に感じる課題をやり遂げるとき、この領域がより活発になり、体積が増すこともあります。これが神経可塑性と認知機能の向上に寄与すると考えられます」と彼は話しています。
 

安全に始める

筋力トレーニングの重要性を理解していても、実際に始めるのは簡単ではありません。

可能であれば、エーレン氏は資格のあるコーチを見つけることを勧めています。「安全で効果的なプログラムを指導し、正しいフォームを教え、長期的に進歩を記録するサポートをしてくれます」と彼は言います。

さまざまな方法を試すときは、自分の体の反応に注意することが大切です。持続的な筋肉痛、睡眠の質の低下、食欲不振、慢性的な疲労感などがある場合は、何かがうまくいっていないサインかもしれません。トレーニング自体と同じくらい、体の反応を観察することが重要です。

「そうした時こそ、良いコーチの存在が助けになります」とエーレン氏は述べています。

コーチングはまた、筋力トレーニングを始める際の自信を高める効果もあり、モチベーションを維持しやすく、パフォーマンス向上にもつながります。

とはいえ、トレーナーがいなくても、長時間の激しいセッションをしなくても成果は得られます。少量の筋力トレーニングでも、若者・高齢者を問わず筋力や身体機能を改善することができます。効果的で現実的なアプローチとして、次の2つの方法があります。

  • 高負荷・低頻度トレーニング:週あたりのセッション回数を減らし、重いウエイトを使う方法。
     
  • 低負荷・高頻度トレーニング:軽いウエイトや自重で短時間・高頻度に行う方法で、「レジスタンス・エクササイズ・スナッキング」とも呼ばれます。

初心者の場合、筋肉をつけるには軽い重量で15回以上、中程度の重量で9〜15回、重い重量で8回以下の反復を、限界に近い状態まで行うことで効果が得られます。筋力を高めたい場合は、一般的に重い重量の方が効果的です。

経験者の場合は、トレーニングの頻度と負荷の増加が重要になります。継続的に進歩するには2つの原則が欠かせません。1つは「漸進的過負荷」で、重量や回数を少しずつ増やしていく方法。もう1つは「変化」で、一定の期間ごとに種目や強度を変えることを指します。

ただし、変化が多ければ多いほど良いというわけではありません。特に毎回エクササイズを入れ替えると、一貫性を保つのが難しくなり、過度な筋肉痛や疲労を招くことがあります。エクササイズの変化の効果は「逆U字カーブ」に従い、適度な変化は筋肉成長を促しますが、やりすぎは逆効果です。

エーレン氏は、トレーニングを継続するためのコツについても語っています。それは「意志の強さ」ではなく、「脳を成功に導く環境を整えること」だと言います。彼は「ドーパミン・スタッキング」と呼ばれる方法を使い、過去に良いセッションにつながった小さな習慣を繰り返すことで、脳内のやる気や快感に関係する神経伝達物質のドーパミンを活性化させ、トレーニングへの意欲を高めます。

「私はコーヒーを飲み、ジムへ向かう車の中でロックミュージックを流し、いつものウォームアップを行います」
 

食事を調整する

筋力トレーニングの効果を最大化するには、食事の工夫が大きな違いを生みます。

栄養士のスーヘインズ氏は「エポックタイムズ」に対し、トレーニング前にはタンパク質・炭水化物・健康的な脂肪を含むバランスの取れた食事を摂ることが、運動時のエネルギー供給と満足感を高めると述べています。

「トレーニング後は、ヨーグルトとフルーツ、またはアーモンドバターのサンドイッチのように、タンパク質と炭水化物を組み合わせて摂ることが重要です。これにより、筋肉内のグリコーゲン(エネルギー源)を補い、筋肉修復をサポートします」と彼女は説明しています。

食事は通常、運動の3〜4時間前が理想で、軽食(スナック)は運動の1時間前または後が適していますと彼女は補足しました。スポーツ栄養に詳しい管理栄養士に相談すれば、より個人に合ったプランを立てることができます。

質の高いタンパク質を十分に摂ることも大切です。エーレン氏は、体重1㎏あたり約1.8〜2.2gのタンパク質を推奨しています。例えば体重約79㎏の男性なら、1日あたり鶏胸肉約4.5~6枚分に相当します。

「特にトレーニング前後では、デンプン質の炭水化物を恐れないでください」とエーレン氏は言います。

デンプン質の炭水化物は、運動中の主なエネルギー源であるグルコースの供給源です。特に高強度・短時間の運動では重要で、トレーニングの前後に炭水化物を摂ることで、エネルギーの利用効率を高め、パフォーマンスを向上させ、筋肉内グリコーゲンの回復を早めることができます。

筋肉と筋力をつける際に、過食や食事制限のしすぎはよくある問題です。
「筋肉をつけるには、カロリーの摂取量を消費量より少し多くする必要がありますが、過剰すぎると体脂肪が増えてしまいます」とエーレン氏は言います。

また、特に60分以上のトレーニングを行う場合は、水分補給も欠かせません。
「普通の水でも十分ですが、ココナッツウォーターのような電解質飲料の方が、汗で失われたミネラルの補給に適している場合もあります」とヘインズ氏は述べています。

(翻訳編集 井田千景)

ゼナ・ルー・ルーは、健康ジャーナリストで、健康調査ジャーナリズムの修士号を持ち、機能栄養に特化した認定健康およびウェルネスコーチです。スポーツ栄養学、マインドフルイーティング、内的家族システム、および応用ポリヴェーガル理論のトレーニングを受けています。彼女はプライベートプラクティスで働き、英国に拠点を置く健康学校の栄養教育者としても活動しています。