広がる中共の静かな浸透 台湾企業家が語る「中国愛と中共愛は別物」
台湾社会に対する中国共産党(中共)の「静かな浸透」が、現場を知る台湾企業家の証言で浮き彫りになった。農民を煽動してきた過去の手法をそのまま台湾にコピーし、多数派の民意を世論操作で動かす中共。中国本土でのパンデミック体験も踏まえ、陳氏は「中国を愛するあまり、中共を誤って愛してはならない」と強く警告する。
「中共の論理は実は非常に単純であるが、同時に恐ろしい」
台湾北部のある宮廟の新任主委でもある台湾企業家・陳家金氏(仮名)は、「恐ろしさ」とは制度でも軍事でもなく、長期間にわたる低強度で、ほとんど気づかれない形の社会的浸透であると語る。
長年にわたり中台を往来し、中国で会社を設立した経験を持ち、医療機器の研究開発にも携わる陳氏は「大紀元時報」の取材に応じ、次のように述べた。
「私は政治家でも学者でもありませんが、実際の体験と多くの事例を目にしてきました。これは陰謀論ではなく、中共が数十年にわたり一貫して用いてきた手法なのです」
そして、国民党の愛国者たちに対して、「中国」と「中共」を混同しないよう呼びかけた。
過去の農民から今の台湾人へ 中共がコピーする「煽動のロジック」
陳氏は、中共の手口は極めて単純なロジックに基づくと指摘する。「中共はかつて中国国内でどのように民衆を支配したか、そのやり方をほぼそのまま台湾社会にコピーしている。彼らは昔、農民をどう煽動したか、そのままの手法で台湾人を煽動している。農民は愚かではなかった。ただ、知識が足りなかったのだ。このやり方を台湾という大きな社会に持ち込むのは極めて危険である」
陳氏は分析する。台湾で政治的操作を見抜く知識と判断力を備えた層は、実際にはごく少数である。
「仮に識別力を持つ知識層が2割程度だとすれば、残りの8割は悪ではないが、見抜く力が足りない。それでも彼らには投票権がある」
だからこそ、中共はかつて農民を動員した手法を使い、この多数派の民衆を煽動し続けているという。
「このような操作が立法院(国会)の政治構造と結びつけば、その影響はさらに深刻である」
友好を装う世論操作 台湾内部協力者の役割
具体的な浸透工作の手口について、陳氏はこう説明する。
「中共が最も得意とするのは『強制』ではなく、『時間をかけて友達になること』である」
「現地の協力者たちは、まず挨拶に来て友好的に接し、『兄さん』『姉さん』と親しげに呼びかけながら、地元の高齢者たちに自分たちは仲間だという意識を抱かせていく」
こうした小さな輪が増えていくうちに、誤情報が巧みに流れ始める。
「彼らは誤った情報を投げ込み、それを受け取った人々がさらに拡散する。しかし、その風向きは最初から意図的に設定されている。中共は世論操作が非常に巧みなのです」
陳氏は強調する。こうした操作は中国本土からだけでなく、台湾内部の協力者も関与している。
「中国」と「中共」を混同する台湾人
陳氏はまた、心を痛めている現象について語る。「多くの国民党支持者は本来、忠実で愛国的である。しかし問題は『中国』と『中共』を混同していることである」
「これは極めて危険な誤解である。中共は本来、国民党の父殺しの仇なのに、いまや『親しく協力できる相手』のように包装されている」
中共が浸透過程で台湾人に直接任務を与えることがあるかについて問うと、陳氏はこう答えた。「一般人に対してはそこまで明確には話しません。しかし『キーマン』とみなされる人物には、間違いなく具体的な任務があります」
また、中共が台湾人を中国本土へ旅行や見学に招待する目的も単純であるという。
「彼らは訪問者に大陸の良い面だけを見せたいのです。帰国後に中国は素晴らしいと語りさえすれば、その時点で中共の目的は達成されます」
一方、キーマンに対してはまったく異なる方法が取られる。「彼らは段階ごとに、どんな文章を共有すべきか。今何を発言すべきかを具体的に指示します。すべて戦略的に設計されています」
陳氏は嘆く。「台湾は宣伝戦や情報戦で、中共のように長期的に戦う体制的余裕がなく、戦略的に不利な立場にあります」
パンデミック下の中国で見た体制の残酷な日常
中国での生活経験を振り返り、陳氏はパンデミック期の過酷な現実を語った。「当時、住んでいた団地は封鎖され、物資が欠乏しました。キャベツ1個が100元(約2千円)もするほどでした。買えば生活費が尽きてしまうほどで、生き地獄のようでした」
さらに、目の前で人が飛び降りたり、首を吊ったりする光景を実際に見たという。「本当にありました。噂ではなく現実です」「これは恐ろしいことです。中共はもはや人間ではありません」
陳氏の声は沈んだ。「あの体制のもとでは、人命の尊厳が完全に踏みにじられています。子供でさえ体制の道具として育てられ、時には犠牲となるのです」
「かつて中共による臓器摘出の話をしても誰も信じませんでしたが、今では皆が知っています」
「正気」を保つことの重要性――私心が「中共の邪霊」を呼び込む
中共の浸透や金銭的誘惑にどう対処すべきかについて、陳氏は次のように語った。「人を本当に守るのは賢さではなく正しさです」「実際、中共は人々が想像するほど賢くありません。多くのことを私たちから学び、それを歪めて利用しているのです」
だからこそ、公明正大に行動することが鍵であると強調する。「しかし、正々堂々と生きるうえで最も恐ろしいのは、心に少しでも私心が生じることです。欲が出た瞬間、中共の邪悪な力に引き込まれやすくなるのです」
「自分の行いが正しければ、たとえ苦難があっても神が守ってくれる。失ったお金も、いずれ戻ってくる可能性があります」
「しかし、お金目当てで最初から中共に迎合したり協力したりすれば、その代償は極めて大きい」「心に邪な思いが生じれば、一歩一歩、取り込まれてしまう。これは簡単なことではなく、正気を保つために不断の努力が必要です」
天網恢恢(てんもうかいかい) 中共迎合の代償と因果応報
善悪の因果応報について、陳氏はある友人一家の体験を語った。「私の友人の祖父はかつて高い地位にあり、一族の事業は大いに繁栄し、上場企業も所有していました。しかし後に友人一家が廟を訪ね事情を尋ねると、主事者は『あなたの家系には高位にあった者が多く、積んだ悪業も多い。助けられる範囲は限られる』と告げました」
「つまり、かつて多くの悪事を働いた報いは、自分自身ではなく子孫に降りかかる場合があるということです」
陳氏によると、その友人一家はその後、不運が相次ぎ、結婚もうまくいかず、次世代には心身の不調や知的障害も現れ、事業も衰退していった。
「天網恢恢――天の網は広く緩やかであっても、決して悪を見逃さない。自分が優秀だからといって好き勝手にしてはならない」
「これは迷信ではなく、私が実際に見聞きした事実です」
「その一家はかつて莫大な富を持ち、事業も成功していました。しかし次の世代になると、家庭もうまくいかず、事業もうまくいかず、人生そのものがつまずいてしまったのです」