子どもの抑うつを防ぐために 親ができる5つの寄り添い方

21歳の大学生が、重度の抑うつと心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症しました。彼は医師にこう語りました。「父は、僕にとても大きな傷を与えました。」幼い頃、父親はしばしば殴るぞと脅し、さらには飼っていた猫や犬を傷つけると脅したこともあったといいます。ある時は、父親に腹部を殴られて床に倒れ、その後も蹴られました。成長してからは、「姉より劣っている」と繰り返し批判されるようになり、ついには父親の前で「あなたが憎い」と口にしたといいます。

一方で父親は医師に対し、「息子は怠けがちなので、厳しくしつけなければ問題になるのではないですか。私も子どもの頃、父に同じように育てられました。一緒に遊び、食事をし、運動もしてきました。なぜそこまで私を憎むのか分かりません」と話しました。

ニューヨーク北部医療センターのCEOで精神科医の楊景端医師は、この患者と父親のエピソードを紹介し、性格が内向的で繊細な子どもほど、親の関わり方が適切でない場合、心理的な不調を抱えやすいと指摘しています。
 

思春期の若者は、以前より不幸を感じやすくなっている

近年、子どもの心の健康問題はますます深刻化しています。今年発表された大規模調査では、かつては中年期に幸福度が最も低くなる傾向がありましたが、現在では思春期の若者が最も不幸を感じている層になっていることが示されました。

人気の抗がん作家であり、台北医学大学公衆衛生学科の名誉教授でもある韓柏檉氏は、新唐人テレビの番組『健康1+1』で、親が子どもに過度な期待を寄せ、医師になることや名門校への進学を望むあまり、幼少期から多くの計画や制限を課し、子どもが「自分らしくいる」機会を奪ってしまうケースがあると話しています。一方で、子どもを過剰に甘やかし、人間関係の調整や挫折への対処を経験させないことで、困難に立ち向かう力が育たない場合もあります。こうした状況の中で、子どもは現実から逃げるようになり、悪循環に陥り、場合によっては自傷行為に至ることもあるとしています。
 

不安や落ち込みを抱える子どもへの寄り添い方

抑うつ状態にある人にとって、家族からの「励まし」が、かえってプレッシャーになることがあります。そのような場合、韓氏は、次の5つの視点から家族が関わることを勧めています。

1.話を聴き、理解する

抑うつ状態にある大人や子どもは、「周囲の人が自分を理解してくれていない」と感じやすいものです。たとえば、「励ましの言葉をかけられても、私には全然響かない。本当につらいのに、『気にしすぎだ』『大丈夫』と言われるだけだ」と感じることがあります。

韓氏は、子どもが学校に行きたがらない場合、背景にいじめがある可能性も考えるべきだと例を挙げています。その際に親が「勉強しなさい」「学校には行かなければならない」と言ってしまうと、子どもはさらに追い込まれ、気持ちが沈みやすくなります。まずは子どもの話を聴き、「学校がつらい」と言ったら、「誰がどんなふうにつらくさせているの?」と尋ね、いじめている側を一緒に問題視する姿勢を示すことで、子どもは安心して本音を話しやすくなります。

2.具体的な解決策を示す

共感し理解したうえで、次に大切なのは、問題解決の道筋を一緒に考えることです。いじめの場合であれば、警察に相談する、教師に伝える、相手の保護者に知らせるなど、現実的で実行可能な選択肢を示し、子どもに「道はある」と感じてもらうことが大切です。

3.外出を促す

家族同士では、言い方や考え方が固定化しやすく、かえって距離が広がることもあります。韓氏は、子どもが信頼でき、安心できる友人と外出するよう促し、「その人に導いてもらう」ことも一つの方法だとしています。

4.人を助ける経験を通じて気持ちを和らげる

「抑うつ状態にある人の気持ちを和らげる最良の方法の一つは、誰かを助けることです」と韓氏は述べています。たとえば、慈善コンサートなど意義のある活動に参加することで、感謝される体験が前向きな感情につながり、「もっと人の役に立ちたい」という気持ちが生まれるといいます。

2016年に学術誌『Emotion』に掲載された研究では、参加者を4つのグループに分け、①自分に親切にする行動を3つ行う、②他人に親切にする行動を3つ行う、③社会や世界のためになる行動を3つ行う、④従来通りの生活を続ける、という条件で日々の行動を記録してもらいました。その結果、自分自身のための行動よりも、他者や社会のために行動したグループのほうが、愛情や信頼、感謝、誇りといった前向きな感情が増え、不安や罪悪感、悲しみといった否定的な感情が減少する傾向が見られました。

さらに、利他的な行動は持続的な幸福感につながり、プログラム終了後2週間の追跡期間においても、他者や社会のために行動したグループでは、気分の改善が続いていました。

5.生活スキルを学び、達成感を育てる

多くの親は学業に重点を置きがちですが、料理やキャンプなど、「勉強とは直接関係のない活動」も大切だと韓氏は指摘します。こうした日常的な体験を通じて、子どもは学びや楽しさを感じることができます。

韓氏は次のようにまとめています。「大切なのは、子どもが自分の問題を口に出し、私たちがそれに共感し、支え、ひとりではないと感じてもらうことです。そのうえで、一緒に良い行いをしたり、活動に参加したり、自然の中に出かけたりすることで、少しずつ光を浴びる時間が増えていきます。そうすると、脳内のドーパミンも増えやすくなり、人は次第に明るい気持ちになっていきます。」
 

研究:親の育て方は子どもの性格に影響する

研究でも、親の養育スタイルが子どもの性格形成やストレスへの耐性に大きく関わっていることが示されています。

ポルトガルで行われた研究では、2つの公立中学校の生徒とその保護者を対象に調査が行われました。その結果、「専制型の養育」は、子どもが完璧主義的な性格を身につける要因となりやすく、親の厳しい批判を内面化し、「失敗は許されない」と感じながら、常に他人の期待に応えようとする強いプレッシャーを抱えることが分かりました。また、放任的で過度に甘やかす親のもとでは、自分に過剰な基準を課してしまう「不適応型の完璧主義」が生じやすく、先延ばしや不安などの否定的な行動や感情につながりやすいとされています。

一方で、「権威型の養育」は、愛情をもって子どものニーズに応えつつ、適切なルールを示し導く関わり方であり、このスタイルは「不適応型完璧主義」を減らすのに役立つことが分かりました。特に女子において、その効果がより顕著に見られたと報告されています。

英文大紀元が提供する医療・健康情報番組「健康1+1」の司会者を務める。海外で高い評価を受ける中国の医療・健康情報プラットフォームであるこの番組では、コロナウイルスの最新情報、予防と治療、科学研究と政策、がんや慢性疾患、心身の健康、免疫力、健康保険など、幅広いテーマを取り上げている。
張瑛瑜