意志力に頼らない習慣づくり──続けたくなる工夫とは

私たちは通常、新年の目標を自信満々に始めます。もっと体を動かそう、よく眠ろう、賢く食べよう、と。

しかしその一方で、アプリやインフルエンサー、アルゴリズム(検索やSNSなどで情報を自動的に選別・表示する仕組み)が、静かに別の方向へあなたを誘導しています。

スマートフォンが通知音を鳴らし、あなたはタップします。気づけばお得そうなデリバリーを注文し、計画していた夕食は後回しになり、運動も結局しないままになります。

一見すると些細に思えるこうした「ささやかな後押し」は、あなたの一日や選択、意図そのものを形づくっています。

それが「影響力」です。

ここで重要なポイントがあります。他人が私たちに影響を与えることを可能にしている同じ心理は、自分自身に向けて使うことができ、しかも良い目的のために使えるのです。

行動研究者たちは、一貫して特に強力な3つの要素を指摘しています。それは「アイデンティティ(自分はどういう人間かという認識)」「言語」「感情」です。これらを意識的に使えるようになると、習慣の変化は意志力の試練のように感じられなくなり、「自分という存在が変わっていく感覚」に近づいていきます。
 

アイデンティティ:それを「する人」になる

あるランナーは、夜明け前に靴ひもを結び、走りに出ます。彼女が考えているのはカロリーではありません。それは「彼女がそういう人だから」です。どんなモチベーションポスターよりも、彼女の習慣を動かしているのはアイデンティティです。

アイデンティティは行動を動かします。マーケターはこれをよく理解しています。彼らは単にスニーカーを売っているのではなく、「それを履いてゴールテープを切るあなた」を売っているのです。私たちは、自分が属していると信じているアイデンティティに従って行動します。

まず、自分のアイデンティティを捉え直しましょう。

「何をしなければならないか」ではなく、「どんな人になりたいか」を軸に変化を考えるほうが、より動機づけになります。認知行動療法(考え方や行動のパターンに働きかける心理療法)を専門とする臨床心理学者のテリー・ベイコウ氏は、メールでエポック・タイムズにそう語っています。

「10ポンド痩せる」といった目標は一時的ですが、「健康でいる」「成長し続ける」といった価値観は、モチベーションが薄れた後も行動を導き続けます。

アイデンティティを捉え直すことで、新しい習慣はより簡単に感じられます。10分の散歩は「運動」ではなく、「健康を大切にする人が自然にすること」になります。仕事終わりに通知をオフにするのも、意志力のテストではなく、心を守る行動の一部になります。

次に、それを信じ、手本にしましょう。

「自分を、これから達成しようとしている目標を実現できる『タイプの人間』だと考えてください」と、同じく認知行動療法の専門家である臨床心理学者ローレン・オフラハティ氏は、エポック・タイムズへのメールで述べています。

彼女が勧める方法の一つは、すでにそれを実践している人の習慣を借りることです。尊敬する人物を思い浮かべ、「この瞬間、その人ならどうするだろう?」と自分に問いかけてみてください。それを次の一歩の指針にします。

これを試してみてください:

「週に3回運動しなければならない」から、「私は自分の体と健康を大切にする人になりつつある」へ。

「延々とネガティブなニュースをスクロールするのをやめなければならない」から、「私は心に休息の余白を与える人になりつつある」へと、言い換えてみましょう。

新しいアイデンティティを始めるには、自然なリセットの瞬間を使いましょう。

UCLAナッジ・ユニット(行動科学を活用して人の行動を後押しする研究組織)の共同ディレクターであるヘンチェン・ダイ氏によると、1月1日を待つ必要はありません。彼女の研究では、月曜日、誕生日、新学期といった節目が心理的な「新しいスタート」を生み、新しい目標を追求しやすくすることが示されています。

「こうした瞬間は、人が過去の不完全さと心理的に距離を取り、『今の自分は変化できる人間だ』と捉える助けになります」と、行動科学者のダイ氏はエポック・タイムズへのメールで語っています。
 

環境でもそれを強化しましょう。

玄関にウォーキングシューズを置く、コーヒーメーカーの横に水を置くなど、これからなりたい自分を支える環境を整えてください。こうした小さな合図が、「自分はその人間だ」という確認として機能します。

言語:ライフコーチのように自分に語りかける

「これをやりなさい」と決して言わず、「今日いちばん大切なのは何だろう。エネルギー、睡眠、ストレス?」と問いかけるコーチを想像してください。すると、プレッシャーの代わりに明確さが生まれ、最初の小さな一歩が現実的に感じられます。これが質問の力です。セルフトーク(自分自身への語りかけ)も同じように働きます。

命令よりも、質問のほうが人を行動させます。

キャンペーンやコーチングで質問が使われるのは、情報を集めるだけでなく、選択へと自然に導くからです。

まず、プレッシャーではなく好奇心を使いましょう。

自己批判や強制よりも、好奇心に基づく質問のほうが人はよく反応すると、ベイコウ氏は言います。これは、オープンな質問を用いて本人の中にある変化の理由を引き出す「動機づけ面接」というカウンセリング手法にも通じています。質問は明確さを生み、その明確さが行動を生みます。

次に、主体性を強める言葉を選びましょう。

使う言葉は、新しい習慣の感じ方そのものを形づくります。

ベイコウ氏は、「〜すべき」「〜しなければならない」といった抵抗を生みやすい言葉を避け、「私は選ぶ」「私は望んでいる」「私は学びつつある」といった主体性のある表現を使うことを勧めています。変化は、義務ではなく「自分の決断」だと感じられるほど定着しやすくなります。

三つ目は、正直で柔軟であることです。

セルフトークが機能するためには、正直である必要があるとオフラハティは言います。なぜ変わりたいのか、そしてなぜ自分の一部がそれに抵抗しているのかを、正直に認めることです。

ダイ氏は、柔軟な言葉づかいが「すべてかゼロか」という極端な思考を防ぐと指摘しています。目標に余裕を組み込んだほうが、人はうまくいきます。例えば、今週7回運動することを目標にしつつ、1〜2回は「緊急スキップ」を想定しておくことです。1日抜けても失敗ではなく、まだ軌道に乗っています。

これを試してみてください:

次の行動の前に、次の3つの質問を自分に投げかけてみましょう。

1.この変化は自分にとってどれくらい重要か。

2.自分にはそれを実行できる自信がどれくらいあるか。

3.始める準備はどれくらいできているか。

答えを見ることで、足りないものが分かります。それが明確さなのか、自信なのか、準備なのかを見極め、選択を強調する言葉で補いましょう。「今夜は歩くべきだ」ではなく、「エネルギーを保つために、歩くことを選ぶ」と言い換えてみてください。

また、優しくも現実的なお祖父さんやお祖母さんが話しかけてくるように、自分に語りかけてみるのもよいでしょう。厳しくも励ましてくれ、あなたの味方でいてくれる存在です。

他人にもその言葉を響かせましょう。

新しい言葉づかいを共有してください。週の目標を友人に伝えたり、支え合えるグループに参加したりすると、言語と責任感が強化され、社会的な後押しが加わることで変化が続きやすくなります。
 

感情:直す前に、まず感じる

新しい習慣を始める前から、感情がすでにハンドルを握っていることはよくあります。不安、落ち着かなさ、疲労感。こうした感情は、簡単な一歩さえ険しい崖を登るように感じさせます。しかし、感情の状態に対する小さく意図的な働きかけによって、体と心を動きやすい方向へと傾けることができます。

マーケターは昔から、感情が行動を動かすことを理解してきました。希少性、FOMO(見逃すことへの恐怖)、そして「仲間に属している」という微妙な引力が、商品を売っているのです。日常生活でも、まず感情があり、論理はその後についてきます。

まず、感情を情報として扱いましょう。

感情に気づき、名前をつけることは、「感情的チューニング(自分の感情に意識的に合わせること)」と呼ばれ、行動を形づくりやすくし、より持続的な変化を予測すると研究で示されています。

オフラハティ氏は、感情をデータとして考えることを勧めています。「あなたがある感情を感じているのは、脳と体が状況について何かを伝えようとしているからです。感情は情報ですが、必ずしも事実ではないことを理解しながら耳を傾けてください」と彼女は言います。

ストレスは過負荷を意味しているかもしれません。退屈は新しさが必要なサインかもしれません。不安は、最初の一歩が大きすぎるという合図であって、変化が不可能だという意味ではありません。

次に、行動する前に状態を切り替えましょう。

感情的・精神的な不快感を無理に押し切るのではなく、まず足場となる感情を整えます。ベイコウ氏は、支えになるセルフトーク、グラウンディング(意識を「今ここ」に戻す方法)、呼吸、励ましてくれる人との会話といったシンプルな手段を勧めています。「自分で自分を励ませないなら、誰かに励ましてもらいましょう」と彼女は言います。

目的は感情を消すことではなく、行動を支える感情へと移行させることです。

これを試してみてください:

新しい習慣を始める前に、感情の状態を整えましょう。

  • エネルギーや集中力を高める音楽をかける。
     
  • 軽いストレッチで体と気分を切り替える。
     
  • キャンドルに火を灯すなど、落ち着く視覚的な合図を使う。
     
  • 誰かを助けた場面や、プロジェクトをやり遂げた瞬間といった「ヒーローの瞬間」を想像し、その感情に乗って行動する。

望ましくない習慣を断ち切るときは、30〜60秒立ち止まり、ゆっくり息を吐きながら足の裏を床に押し付けてください。こうした小さなリセットが、無意識のスクロールや衝動的な間食といった自動運転の行動を中断します。

つまずきを想定し、すぐに立て直しましょう。

つまずきはプロセスの一部です。ダイ氏は、それを失敗ではなく「リセット」として扱うよう勧めています。1日の始まりや週の始まりに気持ちを切り替え、出来事から距離を取り、前に進みましょう。

感情と報酬を結びつけましょう。

お気に入りのお茶、特定の習慣のときだけ聴くポッドキャスト、心の中での「よくやった」という一言。こうした小さく即時的な報酬は、新しい行動が心地よいものだと脳に教え、繰り返しやすくします。
 

すべてをまとめる

影響力は至るところにあります。広告、フィード、友人関係。しかし、同じ仕組みを自分自身の成長のために使うこともできます。

習慣のスタッキング(すでにある習慣に新しい行動を結びつける方法)で、すべてを統合しましょう。合図は分かりやすいものであるべきだと、ベイコウ氏は説明します。「仕事のメールを2〜3通返したら、個人的なメールを1通返す」といった具合です。

6ステップの影響ループ:

1 アイデンティティを定める:どんな自分になりたいか。小さな行動を一つ選ぶ。

2 習慣を重ねる:既存のルーティンに結びつける。

3 言語を整える:行動を促す質問と励ましの言葉を使う。

4 環境を整える:役立つ合図を加える。

5 感情を動かす:報酬やポジティブな感情と結びつける。

6 繰り返す:継続し、必要に応じて調整する。

ダイ氏は、あまりに曖昧すぎる、または野心的すぎる目標はうまくいかないと警告しています。新年が重く感じられるなら、無理に頑張らないでください。次の「ごく小さな一歩」に集中しましょう。

自分自身に影響を与える方法を学ぶと、他の何かが自分に影響を与えようとしているときにも、それに気づきやすくなります。

「人間には、前へ進もうとする力があり、それは簡単には止められません」とベイコウ氏は言います。「特に小さな一歩から始めれば、習慣が自然に積み重なっていくため、そこまで必死に頑張らなくても、勢いは次第に生まれてくるのです」

(翻訳編集 井田千景)

フリーランスのライターであり、ホリスティック健康教育者。ニューヨークのパシフィック・カレッジ・オブ・ヘルス・アンド・サイエンスで12年間教鞭をとり、クーパー・ユニオンでは工学部の学生を対象にコミュニケーション・セミナーを担当。現在は、統合医療やホリスティックなアプローチに焦点を当てた記事を執筆している。