ゆったりと雑事をこなすことが 新陳代謝と心血管の健康を促進

こんな午後を過ごしたことはありませんか。部屋から部屋へとゆっくり歩き回り、気の向くままにちょっとしたことをしているうちに、特に目的もないのに、不思議と心地よく爽やかな気分になっている―。

これこそが、「ゆったりと雑事をこなすこと(Puttering)」の力です。

研究によれば、このような気軽でのんびりとした、計画性のない行動は、時間の無駄ではありません。むしろ気分を改善し、新陳代謝や心血管の健康を促進し、さらには寿命を延ばす助けにもなるのです。

「ゆったりと雑事をこなす」とは?

あれこれ少しずつ手を付けたり、気ままに片づけたり、ちょっとしたことをいじったり、あちこち見たり触ったりする―。どのように表現しても、このような自由気ままな行動には、運動や本格的な家事とは大きな違いがあります。それは、効率を高めるためでも、何かの作業を完了させるためでもないという点です。

このようなゆったりとした時間は、人を自然でリラックスした状態へ導きます。自分がやりたい小さなことを一つ始め、そこからまた別の小さなことへと移っていく。そして、それを最後まできっちり終わらせるかどうかは、実はそれほど重要ではありません。

JAMA Network Openに掲載された長期追跡研究では、座りっぱなしの時間を軽い身体活動に置き換えることが、健康改善に関連していることが示されました。

軽い活動の意義

本来の人間の身体の状態と比べると、現代生活では人々は長時間座る事が多くなり、便利になった一方で、運動量は減っています。

公認運動生理学者であり、コロンビア大学医療センターの行動医学助教授でもあるキース・ディアス氏は、最も簡単でありながら見過ごされがちな解決策の一つが、時々立ち止まり、ゆったりと雑事をこなすことだと考えています。

「ここ数十年、人々はずっとジムに行くことを重視してきました。『苦労なくして成果なし』という考え方です」と、ディアズ氏は大紀元の取材で語りました。「しかし近年では、あらゆる形の運動が健康に良いことが徐々に認識されてきました。とにかく身体を動かせば、それだけで効果があるのです」

ディアズ氏は、短時間の身体活動に置き換えることで死亡リスクに変化があるかを調べる全国規模の長期研究を主導しました。その結果、毎日30分の座位時間を30分の軽い活動に置き換えるだけで、長期的には死亡リスクが17%低下することが分かりました。また、彼が参加した別の研究では、軽い活動が血糖値や血圧を明らかに下げることも示されました。

さらにディアズ氏は、運動は疲労感や「ブレインフォグ(頭がぼんやりする状態)」の軽減にも役立つと述べています。しかし、新型コロナウイルス流行後、社会は徐々に「便利文化」へ向かっています。以前は自分で出かけたり動いたりしていたことが、今では外部サービスに置き換えられているのです。例えば、以前は買い物に出かけていたものが、今ではオンライン注文で自宅配送になっています。

彼はまた、「店へ買い物に行くのでも、家の中を適当に歩き回るのでも、『完全に運動するか、まったく動かないか』のどちらかで考える必要はありません。どんな活動にも価値があります。私たちの身体は、本来長時間じっとしているようには作られていないのです」と語りました。
 

誰でも参加できる

運動は病気予防だけでなく、日常の活力や自立にも関わっています。セントルイスにあるワシントン大学医学部の元教授で、産業医学、神経学、ソーシャルワークを研究分野とするキャロリン・バウム氏(83歳)は、そのライフスタイルを通してまさにそれを体現しています。

彼女は、「家の中を気ままに歩き回り、ちょっとしたことをするだけでも、人は身体を動かし、異なる方法で物事を行うことになります。それが認知機能や脳の可塑性を促進するのです」と話しています。

研究者たちは一般的に、年齢を重ねるにつれて脳を活発に保つことが、私たちにできる最も重要なことの一つだと考えています。そのため、バウム氏は、日常生活の中で習慣を少しずつ変えることを勧めています。

「新しいことに挑戦してみてください」と彼女は言います。「たとえお気に入りの家庭料理に、少し違う香辛料を加えるだけでも、良い影響があります」
 

なぜ「ゆったりと雑事をこなすこと」に罪悪感を覚えるのか?

もしこれほど健康に良いのであれば、なぜ私たちは、効率的でない自分に罪悪感を抱いてしまうのでしょうか。

ボビー・ホフマン氏は、そのすべてが「モチベーション」に関係していると考えています。ホフマン氏は教育心理学博士であり、セントラルフロリダ大学の教育心理学准教授でもあります。

また彼は、人々は「ペースを落とすこと」の重要性を過小評価していると述べています。彼は講演者でもあり、行動科学と日常習慣を結びつけた著書を多数執筆しています。2017年の著書『Hack Your Motivation(あなたのやる気を守る方法)』の中で、ホフマン氏は「ペースを落とすことは、生産性を高める戦略であり、怠惰ではない」と書いています。それは脳を休ませ、リラックスさせることで、その後さらに多くのエネルギーと活力を回復させる助けになるのです。

私たちを動かすもう一つの重要な物質がドーパミンです。ホフマン氏によると、この神経伝達物質は非常に重要で、不足するとソファから立ち上がる気力さえ失われる可能性があります。

幸いなことに、小さくても満足感を得られる行動、特に自分で自由に選んだことは、より持続的な形で脳の報酬系を活性化できます。たとえ台をひと拭きしたり、本棚を整理し直したりするだけでも、「何かをやり遂げた」という達成感が生まれ、さらに続けようという意欲につながります。

時間が経つにつれ、こうした穏やかなポジティブフィードバックは、ドーパミンレベルの調整に役立ち、感情をより安定させ、身体に活力を与える可能性があります。
 

心身を癒す現代的アプローチ

著名な栄養士であり健康講演家でもあるモナ・シャルマ氏は、心臓手術という健康危機を経験した後、現在の健康理念を形成し、自身の健康観を根本から見直しました。

「私のところに来る人の多くは、何もしていないから疲れているのではなく、『健康のため』という名目で、自分を追い込み過ぎて疲れているのです」と、彼女はエポックタイムズに語っています。「健康というものが、いつの間にか別の『パフォーマンス』や、達成しなければならないノルマになってしまっています」

彼女は、ゆったりと雑事をこなすことは、健康産業がめったに提供できないもの、つまり、「絶えず自分を最適化し続けることをやめる」感覚を与えてくれると考えています。こうした緩やかな活動そのものが、人を地に足の着いた状態にしてくれるのです。

彼女は、「植物に水をやったり、引き出しを整理したり、目的もなく散歩したり、あるいはただ空を見上げたりすると、神経系はめったに受け取らないメッセージを受け取ります。それは、『あなたは安全であり、今この瞬間、最適化される必要はない』というメッセージです」と語っています。

シャルマ氏によると、生理学的には、ゆったりと雑事をこなすことは、コルチゾールを低下させ、ストレス反応を弱めることで、副交感神経系を活性化し、脳を高度な警戒状態から解放する助けになります。

さらに彼女は、もっと深い変化も起きていると補足しています。多くの古代の伝統では、癒やしは反復や儀式、そして未来への不安を持たないことから生まれると考えられてきました。

「ゆったりと雑事をこなすことは、そうした古代の知恵へ通じる現代の扉なのかもしれません」と彼女は言います。

ゆったりと雑事をこなすことが伝えているのは、外部からの要求ではなく、自己調整のシグナルです。シャルマ氏は、人が本当に自分に「ゆったりすること」を許したとき―それをご褒美ではなく、生理的な必要として受け入れたとき―非常に明確な変化が起こると述べています。

「呼吸が深くなります」と彼女は言います。「思考は柔らかくなり、食欲にも変化が現れ、創造力も戻ってくるのです」

シャルマ氏による「ゆったりと雑事をこなすこと」を実践するためのアドバイス:

• 自分の身体の声を聞く

身体は、評価されているときには癒やされません。耳を傾けられたときにこそ回復します。ゆっくりすること自体が知恵であり、身体が再び自己調整を学ぶための空間を与えてくれます。

• 自分のリズムに従って行動する

無理に常に効率的でいようとしなくなると、かえって効率や集中力が高まり、物事に入り込みやすくなり、より調和の取れた状態になります。それは、自分を追い込むのではなく、自分自身のリズムに適応するということです。

• 「ゆったりと雑事をこなす時間」を予定に入れる

大切なのは、意識的にその時間を確保し、日常的で生涯続けられる習慣にすることです。毎日たった10〜20分でも、気持ちが軽くなり、頭がすっきりし、意欲も湧いてくるかもしれません。

(翻訳編集 解問)