現代社会は利便性を中心に作られています。人生の目標は、日々のあらゆる場面からできる限り摩擦(手間や不便さ)を取り除くことのようにも見えます。
確かに、そのおかげで人生は多くの面で過ごしやすく、快適になりました。しかし、その大きな便利さの裏には見過ごされがちな欠点も潜んでいます。
人生が楽になるほど、残されたわずかな不便がより苦痛に感じられるようになります。私たちの期待値が高まるにつれて、平凡な日常や、ときに不格好で、時間がかかり、非効率な現実に満足しにくくなっていくのです。
根本的な問題は、デジタル世界が摩擦を極端なまでに取り除けるため、現実の物理的な世界がそれに太刀打ちできないことです。オンライン上の生活は、これからも「現実世界」の生活より簡単で魅力的に感じられるでしょう。
私は、このような便利さが長い目で見ると私たちを無気力で怠惰にし、人生に深い意味を与えてくれる、困難ではあっても価値のあることを追求する意欲を失わせるのではないかと懸念しています。
より良い人生につながる、あえて不便な6つの選択
私は、意図的に少し難しい現実の体験に身を置くことで、この無気力さに抗っています。それは、現実に立ち向かうための心と精神のトレーニングであり、避けられない不便さが訪れたときに柔軟に対応できる力を養う方法だと考えています。これまで効果を感じている例をいくつか紹介します。
1. 短いオンラインコンテンツではなく、本を読む
スマートフォンをスクロールしながらコンテンツを消費していると、気づかないうちに1時間が過ぎてしまうことがよくあります。しかし、その時間をスマートフォンで過ごした後は気分があまり良くなく、良い本を数章読んだ後に感じる穏やかな満足感とは大きな違いがあることに気づきました。本を読むには、内容がゆっくり展開するため、より多くの集中力と努力が必要です。しかし、その代わりに得られる体験ははるかに豊かで、人生に対してより前向きな気持ちになれます。
2. 軽い買い物なら歩いて食料品店へ行く
私たちの家から近所の食料品店までは徒歩で10〜15分ほどかかるため、歩いて行くとかなり時間がかかります。車中心の社会では、わざわざ歩く不便さを受け入れる人はほとんどいないでしょう。
それでも私は、目的を持って歩くことや、買い物袋を持って帰宅する際のほどよい負荷に満足感を覚えます。すべてが簡単になってしまうと、そうした小さな達成感は失われてしまいます。私たちは物事を生活の一部ではなく「面倒な用事」として扱うようになった結果、人生を便利にした一方で、退屈なものにもしてしまったのかもしれません。
3. 退屈を消費ではなく行動で解消する
退屈は、現代社会からほとんど追放された数少ない摩擦の一つです。少しでも退屈を感じると、私たちはすぐに手近で即効性のある刺激を求めてしまいます。
しかし、その代償として日常生活の喜びも落ち込みもどちらも弱まり、まるで万能な麻酔薬のように感情が鈍くなっています。
退屈から逃げず、正面から向き合ってみてください。受け身で何かを消費するのではなく、自ら何かをすることを決意するのです。そうすれば、あなたの世界は少しずつ広がり、新たな可能性が見えてくるでしょう。
4. 天気に関係なく毎朝歩く
私たちは数多くの技術的進歩を遂げてきましたが、天候を解決することはまだできていません。どこに住んでいても、不快な天気を経験することはあるはずです。
多くの人は温度管理された建物や乗り物の中でほとんどの時間を過ごし、太陽、風、雨、雪といった太古から存在する自然の力に触れる機会がほとんどありません。
しかし、屋外で過ごすことは私たちにとって良いことであり、暖房や冷房といった室内の快適さへの感謝も深めてくれます。ときには汗をかいたり、寒さで震えたりすることは、人生に豊かな変化を与え、屋内生活の単調さから私たちを解放してくれます。
5. 妻とともに5人の子どもを育てる
人生における最大級の挑戦であり冒険でもあるのが、妻とともに大家族を築くことを選んだことです。私たちは最近、第5子であり、おそらく最後となる子どもを迎えました。
親になったことのある人なら、この選択に伴う感情の浮き沈みについて説明する必要はほとんどないでしょう。それは困難な道ですが、私が人生で取り組んだどんなことよりも大きな満足感を与えてくれています。
私たちの旅行は、多くの同世代の人たちよりも確かに大変です。しかし、この「困難さ」こそが、私たちが時間を投資できるどんな別の方法よりも人生を豊かにしてくれたと感じています。
6. 教会で出会う見知らぬ人と世間話をする
私はもともと人と過ごすことが好きですが、それが必ずしも見知らぬ人との交流に結び付くわけではありません。
知らない人と話すには、便利な生活をしていては交流は難しく、努力が必要です。それでも私は毎週日曜日に教会へ行くたび、周囲の人々にあいさつし、あまり面識のない人とも話すよう自分を促しています。
その結果、この1年で、人生の忙しい時期には想像もしなかったような新しい友情に恵まれ、私の人生はより豊かなものになりました。
私も他の人たちと同じように、多くの便利さを享受しており、それに感謝しています。実際のところ、ほとんどの場合、私は困難な道ではなく、最も簡単で便利な道を選びます。
それでも心の奥では、本当に充実した人生とは単に楽な人生を送ることではなく、より大きな価値を得るために、どのような困難を引き受けるかを選ぶことだと分かっています。
だからこそ、ときには人生に少しだけ摩擦を取り戻すことも大切です。それは、この便利さに満ちた世界で、あまりにも快適さに慣れすぎないための大切な思い出し方なのです。
(翻訳編集 井田千景)
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