親の約7割がスマホに気を取られる経験 子どもの心と愛着への影響とは

ピュー・リサーチ・センターの世論調査では、親の約7割が、子どもと一緒にいるときにスマートフォンに気を取られることがあると認めています。ある研究によると、思春期の子どもは、親の注意が自分以外にも向いていることに気づいています。こうした親の注意散漫な状態は、思春期の子どもが親との絆をどのように築くかに影響し、不安型や回避型の愛着スタイル(身近な人との情緒的な結びつき方の傾向)につながる可能性があります。こうした傾向は、成人後も続くことがあります。

心理学誌『フロンティアーズ・イン・サイコロジー』に掲載されたこの研究では、親のデジタル機器の使用と、思春期の子どもの愛着スタイルとの関連を調べました。安定した愛着を持つ子どもは、親がいつも自分の気持ちを受け止めてくれると感じています。一方、不安定な愛着を持つ子どもは、そのようには感じていません。

親がデジタル機器を使うことで、親子のやり取りが妨げられることが多いと回答した思春期の子どもほど、不安型や回避型の愛着傾向を示す可能性も高くなっていました。不安型の愛着を持つ人は、拒絶されることを心配し、相手の気持ちを繰り返し確かめて安心を得ようとすることがよくあります。一方、回避型の愛着を持つ人は、感情的に親密になることに居心地の悪さを感じやすく、他者と距離を置くことがあります。
 

スマートフォンによる注意散漫が子どもの愛着に及ぼす影響

子どもは、生まれて間もないころから親とのやり取りを通して、人間関係とはどのようなものなのかを学びます。

愛着理論では、親がいつもそばで支え、子どもの求めに応じることで、子どもの安心感が育つと考えられています。親が頻繁にデジタル機器に気を取られていると、思春期の子どもは、親が自分の気持ちを十分に受け止めてくれないと感じるかもしれません。無視されている、話を聞いてもらえない、大切にされていないと感じる経験が繰り返されると、時間とともに人間関係の捉え方に影響し、不安定な愛着の形成につながる可能性があります。

親は、自分のスマートフォンの使い方を子どもがどう受け止めているのか、気づいていないかもしれません。メディア心理学者で依存症カウンセラーでもあり、この研究の筆頭著者であるドン・グラント氏は、エポックタイムズの取材に対し、親は十分に注意を向けているつもりでも、子どもは自分に目を向けてもらえていないと感じていたことが、後になって分かるケースは珍しくないと語りました。

20年にわたり家族の支援に携わってきたグラント氏は、次のように述べています。「愛着は、あくまでも子どもの側で形成されるものです。親の行動や、自分への関心、自分が注目してほしいときや何かを必要としているときの親の応じ方、そしてその応じ方の一貫性を、子どもがどう受け止め、どう捉えるかによって決まります」

資格を持つ心理療法士で、家族カウンセラーでもあり、『健やかな10代を育てる』の著者であるトム・カースティング氏は、エポックタイムズの取材に対し、この研究結果は、親のスマートフォン使用による影響が思春期になってから始まることを必ずしも意味しないと話しました。

「親のデジタル機器の使い方は、おそらく子どもがもっと幼かったころから続いていたのでしょう。その時期は、親子の絆にとって極めて重要です」とカースティング氏は述べています。「言い換えれば、子どもは、それを認識できるほどに成長したときに、親との心の隔たりに気づくのです」
 

「新たな形のネグレクト」

思春期は自立心や自主性が高まる時期ですが、子どもは依然として親に導きや安心感、支えを求めています。親子の愛着は、健やかな発達にとって引き続き極めて重要です。愛着の安定性には、親によるネグレクト(子どもに必要な世話や関わりを怠ること)、薬物やアルコールなどの乱用、心の健康上の問題、慢性的な対立、仕事への過度なのめり込み、身体的虐待など、さまざまな要因が影響します。

近年、研究者たちは、デジタル機器に注意を奪われることも、子どもが安心感を得るために必要な、親の応答や気持ちの受け止めを妨げるのではないかと調べ始めています。

研究者は、デジタル機器の使用によって会話やその他の交流が中断される状況を、「テクノフェレンス(デジタル機器が人とのやり取りを妨げること)」や「ファビング(目の前の相手よりスマートフォンを優先し、相手をないがしろにすること)」という言葉で表しています。親によるファビングを「新たな形の社会的ネグレクト」とまで呼ぶ研究者もいます。

2020年の研究では、親のファビングと、子どもの不健全な携帯電話の使用との関連が見つかりました。また、ほかの研究では、ファビングと思春期の子どもの生活満足度の低さとの関連が示されています。

親子の遊びを調べたある研究では、画面であれ紙であれ、親の注意がほかに向くと、子どもが発するサインや意思を伝えようとする働きかけに対する反応が鈍くなることが分かりました。それに伴い、子どもも人とのやり取りにあまり関わらなくなりました。

研究者によると、非常に幼い子どもでも、親の注意がそれていることに気づきます。その結果、子どもはやり取りから身を引き、相手に注意を向けることが減り、前向きな感情をあまり表さなくなり、意思を伝えようとする働きかけも少なくなることがあります。

13件の研究を検討した2023年のレビューでは、親が頻繁にスマートフォンに気を取られていると感じている思春期の子どもは、心の健康状態がより悪いと報告していることが分かりました。こうした子どもは、自分に目を向けてもらえていない、話を聞いてもらえていない、支えてもらえていないと感じている可能性があります。
 

不安定な愛着がもたらす長期的な影響

不安定な愛着の影響は、子どもと親との関係だけにとどまりません。約1,700人の子どもを対象としたある研究では、11歳の時点で、親が自分の感情を顧みてくれないと感じていた子どもは、15歳までに精神疾患を抱える可能性が高くなっていました。

この愛着スタイルは、不安や抑うつ、その他の感情面の問題が生じる割合の高さとも関連づけられています。考えられる説明の一つは、不安定な愛着によって人間関係に否定的な予想を抱くようになり、脅威を感じやすくなったり、感情の調整に苦労したり、他者に支えを求めることが難しくなったりする可能性があるというものです。

愛着は、安定した愛着と不安定な愛着の土台の多くが築かれる乳幼児期との関連で語られることがよくあります。しかし、研究者は一般に、愛着を固定されたものではなく、比較的変化しうるものと捉えています。肯定的な経験も否定的な経験も、思春期から成人期にかけて、引き続き愛着のあり方を形づくる可能性があります。

「周囲の状況や置かれた立場、人生で起こる出来事によって、10代であっても、安定した愛着が不安定な愛着に変わることがあります」とグラント氏は述べています。「その逆もありえます」

つまり、親は、幼少期に築いた強い絆がそのまま自然に保たれると思い込むべきではありません。親が応じてくれる経験を重ねることで愛着が強まるのと同じように、気持ちを受け止めてもらえない経験が繰り返されると、愛着は徐々に弱まる可能性があります。
 

ミレニアル世代の親は注意が必要です

グラント氏は、すべての親に、デジタル機器の使用が家族関係にどのような影響を及ぼすのかを、もっと意識してほしいと述べています。なかでも、ミレニアル世代(一般に1980年代初めから1990年代半ばごろに生まれた世代)に伝えることが特に重要かもしれないといいます。

初めての「デジタルネイティブ(幼いころからデジタル技術に親しんで育った人々)」の世代であるミレニアル世代は、インターネットやスマートフォン、SNSが急速に普及する時代に育ちました。そのため、多くの人が人生のかなりの時間をデジタル機器とつながって過ごしており、スマートフォンを習慣的に使う傾向に陥りやすい可能性があります。

グラント氏によると、ミレニアル世代の親の多くは、自分が子どもとデジタル機器の間で、どれほど頻繁に注意を分散させているかに気づいていないかもしれません。この世代の多くが自分の子どもを育てている今、今回の研究結果が、デジタル機器の使い方をより意識するきっかけになればと期待していると話しています。
 

スマートフォンを使わない時間をつくりましょう

愛着は弱まることもあれば、強まることもあります。子どもの求めに一貫して応じ、注意を向け、気持ちを受け止めることは、時間をかけて安定した関係を築き直し、維持する助けになります。

親はまず、自分の行動の傾向に気づくことから始められます。会話中に頻繁に通知を確認していないでしょうか。退屈したときや会話が途切れたときに、スマートフォンを手に取っていないでしょうか。子どもが何かを話そうとしているときに、上の空で聞いていないでしょうか。

食事中や車での移動中、就寝前の会話などにスマートフォンを使わない時間をつくると、親はその場で子どもによりしっかりと向き合い、日々のつながりを深めることができます。

グラント氏は、デジタル機器と健全に付き合うために、いくつかの習慣を勧めています。

  • デジタル機器の使用に一定の線引きを設けます。特に在宅勤務をしている親には大切です。
     
  • 食事中や家族で活動するとき、車での移動中には、スマートフォンを使わない時間をつくります。
     
  • 子どもと過ごす時間には、スマートフォンによる不要な中断を減らします。

グラント氏は、デジタル機器を完全に使わずにいるのは現実的ではないと述べています。多くの親が在宅で働き、仕事の連絡にスマートフォンを使い、一日を通して複数の役割や用事をこなしています。

子どもは必ずしも、常に自分に注意を向けてほしいと思っているわけではありません。ただ、親が自分を見て、話を聞いてくれていると分かりたいのだといいます。

「子どもが注目してほしい、あるいは何かの求めに応えてほしいと働きかけてきたら、まずはそれを受け止めてください。あなたのことを見ている、話を聞いている、あなたは大切な存在なのだと伝えてください」とグラント氏は述べています。

デジタル機器の使用を中断できない場合は、対応できるようになったら応じると子どもに伝え、その約束を必ず守ることが大切だといいます。

何よりもグラント氏が親に勧めているのは、自分のデジタル機器の使い方が子どもにどのような影響を与えているのか、率直に話し合うことです。親がスマートフォンを使っているせいで、無視されている、話を聞いてもらえない、大切にされていないと感じたことがあるか、子どもに直接尋ねてみるよう提案しています。そのうえで、親子で協力して、より健全なデジタル機器の使用習慣をつくり、機器のせいで親の注意がそれているときには、遠慮なく伝えてよいと子どもに知らせることができます。

子どもに注意を向けて関わることは、大切な会話の間はスマートフォンをしまう、目を合わせる、話をさらに聞くための質問をする、子どもの考えや経験に心から関心を示すといった、簡単な行動から始められます。親と思春期の子どもが動画や記事などを共有したり、インターネット上での経験について話したり、一緒に興味のあることを探究したりすれば、デジタル技術もつながりを育む道具になります。

目指すのは、子どもに対して率直であることだとグラント氏は述べています。例えば、こんなふうに伝えることかもしれません。「気づいていなかったけれど、今は分かったよ。これからは、その行動を改めていくね」
 

(翻訳編集 井田千景)

執筆活動を始める前、レイチェルは神経疾患を専門とする作業療法士として働いていた。また、大学で基礎科学と専門作業療法のコースを教えていた。2019 年に幼児発達教育の修士号を取得した。2020 年以降、さまざまな出版物やブランドで健康に関するトピックについて幅広く執筆している。