スクリーンから離れること自体は、たいてい難しくありません。本当の課題は、以前の習慣に逆戻りすることなく、再びスクリーンを使えるようになることです。

デジタルデトックスを長続きさせるには? スマホ習慣を変える方法

スマートフォンから離れることと、その状態を維持することは別の問題です。

発達精神科医のクリフォード・サスマン医師は、スクリーン依存から抜け出そうとしている一部の患者に、意外なアドバイスをしています。それは、「ロックバンドに参加すること」です。

音楽を演奏することに治療効果があるからではありません。演奏するには、スマートフォンを置かなければならないからです。すると、そこから不思議な変化が起こります。

SNSや際限のないスクロール、ゲームから数日間離れるだけで、多くの人は以前よりよく眠れるようになり、頭の中が散漫になる感覚が減り、それまでスクリーンが自分の注意力をどれほど奪っていたのかに気づくようになります。

ところが、日常生活に戻ると、店で列に並んでいるときなど、ふと気づくとスマートフォンをスクロールしていることがあります。いつの間にかスマートフォンを再びベッドに持ち込むようになり、ほんの少しだけニュースアプリを開いたつもりが、気づけば45分も経っていた、ということもあります。

このような急激な揺り戻しは、デジタルデトックスが長続きしないことが多い理由の一つです。課題は単にスクリーンを遠ざけることではなく、私たちを再びスクリーンへと引き戻す「習慣」と「報酬」を変えることにあります。
 

意志の力だけでは失敗しやすい理由

「デジタルデトックスでは、スクリーンそのものを問題と捉え、使用を断つことを解決策としています」と、依存症精神科医で神経科学者、『The Craving Mind(渇望する心)』の著者でもあるジャドソン・ブリューワー医師は、エポックタイムズへのメールで述べました。「しかし、習慣は本当の意味では、その対象そのものによって生じるわけではありません。その根底にある『報酬に基づく学習ループ』によって形成されるのです」

多くの人は、退屈や孤独、心もとなさを感じるたびにスマートフォンを手に取ります。時間が経つにつれて、脳はそうした感情と、スマートフォンによって得られる即座の気晴らしとを結びつけて学習するようになります。

「スマートフォンを手に取れば、確実に気をそらしたり刺激を得たりできるということを、脳はすでに学習しています」とブリューワー医師は言います。「意志が弱いのではありません。脳が十分に訓練されてしまっているのです」

こうして身についた習慣を克服することがさらに難しいのは、デジタルデトックスを終えた人が、デジタル機器を使いたくなるきっかけであふれた環境に戻るからです。画面に現れる通知、振動するスマートフォン、自動再生される動画、際限なく続くフィードは、単に端末を確認するよう思い出させるだけではありません。断ち切ろうとしている習慣を絶えず強化してしまうのです。

ほかの多くの依存的な行動とは異なり、スマートフォンやスクリーンは日常生活に深く組み込まれているため、デジタル機器を使いたくなるきっかけを避けることは、ほぼ不可能です。

「パブロフの犬のように、私たちは依存を誘発するきっかけに反応して『よだれを垂らしている』ような状態になり、そのうえで、それに抵抗するために膨大な意志の力を使わなければなりません」と、スタンフォード大学医学部で依存症医学のメディカルディレクターを務め、『ドーパミン中毒』の著者であるアンナ・レンブケ医師は、エポックタイムズへのメールで述べました。

「こうした依存を誘発するきっかけ自体が、脳の報酬系(快感や満足感などに関わる脳内の仕組み)でドーパミンを放出させるため、使用を控えることがさらに難しくなります」

インターネットゲーム障害の認識と治療における先駆者であるサスマン医師は、以前の習慣に逆戻りしやすいからといって、デジタルデトックスが無意味というわけではないとエポックタイムズに語りました。

刺激の強いデジタルコンテンツからわずか数日離れるだけでも、自分のスクリーン利用の習慣がどれほど無意識かつ自動的になっているかに気づくための、十分な距離を置くことができます。

しかし、完全な断絶を前提とする方法と違い、現実には、ほとんどの人が最終的に、仕事や学校、日常生活のためにスクリーンへ戻らなければなりません。では、その後はどうすればよいのでしょうか。

専門家によると、そこからが本当の課題であり、長期的な変化が生まれる重要な段階だといいます。
 

得られる「報酬」への好奇心

ブリューワー医師は、スクリーン利用の習慣を変えたい患者に対し、自分の行動を好奇心を持って観察するよう勧めています。

スクロールしたいという衝動を歯を食いしばって我慢するのではなく、その行動によってどのような「報酬」が得られると期待しているのか、そして実際にその報酬が得られているのかを、判断や批判をせず、注意深く観察するよう促します。

「多くの場合、実際に得られる報酬は、脳が予想していたほど満足できるものではないことに気づきます」とブリューワー医師は言います。「予想していた報酬と実際の報酬との食い違いによって、学習内容が更新されるのです」

例えば、退屈や不安から解放されることを期待してスマートフォンに手を伸ばしたものの、30分後には、以前よりも気が散り、精神的に消耗し、圧倒されたように感じていることに気づくかもしれません。何がきっかけでその衝動が生まれたのか、何を得たいと思っていたのか、実際にはどう感じたのか。その差に気づくことで、習慣の支配力は徐々に弱まっていきます。

「習慣の支配力が弱まるのは、力ずくで抑え込むからではなく、より明確に見えるようになるからです」とブリューワー医師は述べています。
 

空いた時間の埋め方

自分の行動を意識することで、習慣の引力を弱めることはできます。しかし、意識するだけでは、それまでスクロールに費やしていた時間や注意力を埋めることはできません。

デジタルデトックスをすると、スクリーンが普段どれほど多くの「空白の時間」を吸収していたのかに気づき、戸惑うことがあります。コーヒーを待っている時間、一人で昼食をとっている時間、作業と作業の合間、夜に眠れず横になっている時間などです。そうした習慣が中断されると、予定のない何時間もの空き時間を、どう埋めればよいのか分からなくなる人が多くいます。

そこで出てくるのが、サスマン医師の一風変わった「ロックバンドに参加する」というアドバイスです。サスマン医師は、まったく新しい自分になろうとするのではなく、患者がすでに持っている興味や関心をさらに広げるよう勧めています。目的は単に刺激の一つを取り除くことではなく、本当に満足感を得られる別の活動を見つけることです。

最も効果的な代替活動は、意欲的な自己改善プロジェクトではなく、人との交流があり、実際に身体を動かし、受け身でスクロールする手軽さに対抗できるだけの一定の枠組みがある活動だ、とサスマン医師は言います。例えば、スポーツリーグへの参加、ボランティア活動、美術教室への参加、友人との料理、あるいは単に、デジタル機器を交流の中心に置かずに、ほかの人と一緒に過ごす時間を増やすことなどです。
 

自制心の「借り方」

スクリーン利用の習慣をうまく変えられた人であっても、意志の力だけでは長続きしないことがあります。1週間ずっとSNSを見ずに過ごせた人でも、ストレスの多い一日の後には、夜の時間をまるごとスクロールに費やしてしまうことがあります。

そのため、レンブケ医師は「セルフ・バインディング(自分の行動をあらかじめ制限する仕組み)」を勧めています。これは、自分と、最もやめにくいデジタル行動との間に、実際的な障壁を設ける方法です。例えば、スマートフォンを寝室の外で充電する、SNSアプリをホーム画面から外す、SNSを利用する時間帯を限定する、食事や睡眠の時間・場所をデジタル機器禁止にする、といった方法があります。

「ドーパミンが過剰に刺激されるこの世界の中に、使用を促す絶え間ないきっかけから自分たちを守るための『別の世界』を作る必要があります」とレンブケ医師は述べています。

周囲の人からのサポートも重要です。多くの人にとって、その支援は家庭から始まります。家族やパートナーは、食事中はデジタル機器を使わない、寝室にはスマートフォンを持ち込まないといった共通のルールを設けることで助けることができます。また、家族全体の習慣や規範は、子どもだけを対象にしたルールよりも効果的である傾向があるため、親自身が子どもに身につけてほしい習慣を実践して見せることもできます。

「周囲の人たちに、自分がこれに苦労していることを知ってもらう必要があります」とサスマン医師は言います。「そうしなければ、結局また同じ環境に戻ってしまいます」

問題のあるテクノロジー利用に対する支援体制は、アルコールやギャンブルなどの問題に対する支援と比べると、まだはるかに整備が遅れています。

「デトックス後に何が起こるのかを実際に練習できる場所は、あまりありません」とサスマン医師は述べています。

サスマン医師は、行動変容の中でもより難しい段階を乗り越えられるよう、患者をグループ形式で支援しています。その一例が「デジモーター・ゲーム・セラピー」です。これはゲームと身体活動を組み合わせ、子どもたちが以前の行動パターンに逆戻りすることなく、再びスクリーンを利用できるようになることを支援する方法です。

「これは、実行機能(計画を立てたり、注意や行動をコントロールしたりする脳の働き)を強化し、前頭前野を鍛えることで、子どもたちがドーパミン刺激の少ない活動へ移行する力を身につけられるよう設計されています」とサスマン医師は説明しました。
 

逆戻りは想定内

スクリーン利用の習慣を変えようとしている人は、しばしば以前の行動パターンに戻ってしまいます。削除したアプリを再インストールしたり、ストレスの多い1週間を過ごした後に夜の時間をスクロールで失ってしまったり、もう抜け出したと思っていた慣れ親しんだ習慣に再び戻ったりします。

「再発は行動変容の一部です」とサスマン医師は言います。「重要なのは、何が引き金になったのかを理解し、どれだけ早く立て直せるかということです」

テクノロジーとのより健全な関係は、週末に思い切ってデジタルデトックスをしただけで生まれるものではありません。自分の行動をより深く意識すること、より良い生活習慣を作ること、支えてくれる環境を整えること、そして途中で何度も軌道修正を重ねることによって、少しずつ築かれていきます。

目指すべきなのは、スマートフォンのない生活ではありません。何もすることがない一瞬一瞬に、スマートフォンが自動的な答えにならない生活を築くことなのです。

 

(翻訳編集 井田千景)

フリーランスのライターであり、ホリスティック健康教育者。ニューヨークのパシフィック・カレッジ・オブ・ヘルス・アンド・サイエンスで12年間教鞭をとり、クーパー・ユニオンでは工学部の学生を対象にコミュニケーション・セミナーを担当。現在は、統合医療やホリスティックなアプローチに焦点を当てた記事を執筆している。