デイジーを抱きしめ、うっとり目を閉じるリス 奇跡の一枚が話題に

二本の小さな前足で一輪のデイジーを抱きしめ、うっとりと目を閉じる、一匹の可愛らしいリス。オランダの野生動物写真家ディック・ファン・ダイン(Dick van Duijn)氏が撮影したこの写真が話題を呼んでいます。小さな生き物が、信じられないようなことをしている瞬間、そう、立ち止まって花の香りを嗅いでいる姿をとらえているのです。

200回のシャッターと、数時間にわたる忍耐強い撮影の末、ファン・ダイン氏はついに、何匹ものヨーロッパジリスが花に鼻先を埋める、愛らしい瞬間をカメラに収めることに成功しました。この写真は瞬く間にインターネットで拡散され、『ニューヨーク・ポスト』や『デイリー・メール』といった、遠く海を越えたニュースメディアにまで取り上げられるほどの反響を呼びました。

(写真:ディック・ファン・ダイン氏提供)
オーストリアのウィーン郊外の緑地で、ジリスが花の香りを嗅いでいる様子。(写真:ディック・ファン・ダイン氏提供)

ファン・ダイン氏は、オランダのノールトウェイクにある、そよ風の吹くにぎやかな海辺の遊歩道で、海鮮屋台を営んでいます。今年の初夏、彼はウィーン郊外に広がる草地へと車を走らせました。そこは、野花と、ヨーロッパ在来のジリスの群れが暮らすことで

知られる場所です。

早朝の草地は、静けさに包まれていました。色とりどりの花がレースのように織りなす中、そよ風が草をなびかせ、鳥のさえずりが絶えることなく響いています。ファン・ダイン氏は、リスの群れがいる気配に気づきました。草むらのあちこちから、ひょいと顔をのぞかせては、あたりの気配を警戒しているのです。

このアマチュア写真家は、リスたちを追いかけるのではなく、あえて小さな土山のそばに咲く一輪の花にレンズの焦点を合わせ、リスたちが自然にリラックスするのを待つことにしました。やがて、一匹のリスがフレームの中に入ってきました。花との触れ合いは、始まったかと思うとすぐに終わってしまいましたが、ファン・ダイン氏はすかさず連写しました。

「その瞬間、このリスは花の香りを嗅いでいるように見えて、ちょうどいいタイミングでシャッターを切ることができました」と、41歳のファン・ダイン氏はエポックタイムズに語りました。「みなさん、リスがわざわざカメラに向かってポーズを取っていると思われがちですが、実際にはこうした仕草は1、2秒しか続きません。完璧な瞬間は、こちらが反応するより先に終わってしまうこともあるので、いつでも構えておく必要があるのです」

(ディック・ファン・ダイン氏提供)
(写真:ディック・ファン・ダイン氏提供)
花と戯れるリスの撮影を、ファン・ダイン氏は辛抱強く待ち続けた。(ディック・ファン・ダイン氏提供)

この出会いにすっかり心を奪われたファン・ダイン氏でしたが、本当の意味で「魔法」が姿を現したのは、帰宅してパソコンの画面と向き合ったときでした。メモリーカードの写真を一枚一枚確認していく中で、ついにその一枚を見つけたのです。黄色いデイジーに鼻先を押し当て、うっとりと両目を閉じるジリスの姿でした。

「パソコンで写真を見返して、ようやくいちばん強い一枚に気づいたんです」と彼は言います。「何十枚もある写真の中に、リスのポーズと表情、そして花が、まさに完璧に重なり合った一枚がありました」

この写真をインスタグラムに投稿すると、たちまち各SNSで数百万回もの閲覧を集めました。ファン・ダイン氏が撮った「花の香りを嗅ぐリス」は、レディットで一気に広まり、人々を元気づけるミームとしても拡散。彼の写真販売サイトの売り上げにもつながりました。

(ディック・ファン・ダイン氏提供)
ウィーン郊外で撮影された、花の香りを嗅ぐリスの写真は拡散し、遠くニューヨークのメディアからも注目を集めた。(ディック・ファン・ダイン氏提供)

しかし、ネット上のファンたちが、「立ち止まって花の香りを嗅ぐ」という人間的な決まり文句をこの光景に重ね合わせる一方で、ファン・ダイン氏はもっと地に足のついた現実を明かしてくれました。このリスたちは、ただ食べ物を探していただけなのです。

「あまり知られていないかもしれませんが、ヨーロッパジリスは、もともと好奇心旺盛な動物なんです」と彼は言います。「花を調べたり、前足でつまみ上げたり、時にはそのまま食べてしまうことも、よくあるんですよ」

それでも、ちょうど良い瞬間さえ切り取れれば、こうした何気ない仕草も、カメラの前では魔法のような一枚に変わるのです。

この写真が巻き起こした反響の大きさに、ファン・ダイン氏自身も驚かされているといいます。それでも彼は、自分はあくまで熱心なアマチュアにすぎないと話します。普段からカメラを携えてヨーロッパ各地を歩き回り、アカリス、オオヤマネコ、フクロウなどを探し歩いており、遠くコスタリカまで、色鮮やかな鳥を撮影しに出かけたこともあるそうです。

「時間をかけて少しずつ育ってきた趣味が、気づけばちょっと『行き過ぎ』てしまったのかもしれません。もちろん、良い意味でですが」とファン・ダイン氏は語ります。「でも、これを本業にするつもりはありません」

地元が夏本番を迎えている今、このアマチュア写真家はしばらくカメラをしまい、海辺の店の切り盛りに専念しています。けれども今年の秋、この海辺の町がふたたび静けさを取り戻したら、ファン・ダイン氏はまたそっとカメラを手に抜け出して、愛らしい仕草を見せてくれる小さな生き物たちを探しに行きたいと考えています。

 

(翻訳編集 日比野真吾)

カナダのカルガリーに拠点を置くライター兼編集者。主に文化、人間の興味、トレンドのニュースについて執筆。