ストレスとがんの関係性:医師がすすめる回復力を育む2つの方法

慢性的なストレスは、睡眠や食習慣、体の回復力にまで影響を及ぼすことがあります。ある患者は、昇進によって仕事量と絶え間ない重圧が増したあと、まさにそれを身をもって経験しました。仕事を離れてもくつろぐことができず、不眠が続くようになったのです。それから6カ月後、体調の悪さを感じて受診したところ、がんと診断されました。

ストレスだけでこの病気を引き起こしたとは言えませんし、ほとんどのがんは何年もかけて進行するものです。それでもこの経験は、長く続いた心身の負担が、自分の健康全体にどう影響していたのかを、彼に考え直させるきっかけとなりました。

台北の京禾中医クリニックで中医学のがん専門医を務める陳博聖医師は、こうした話は患者のあいだでよく耳にすると言います。

「診断の半年から1年前に、生活に何か変化がなかったかを、患者さんによく尋ねます」と、陳医師は新唐人テレビの番組『健康1+1』で述べました。

「返ってくる答えは、『フライドチキンを食べる量が増えた』といったことではなく、ストレスが増えて眠れなくなり、不安や緊張が長く続くようになった、ということが多いのです」と、陳医師は述べました。

陳医師はまた、感情を長く抑え込んできた人は乳がんや一部の婦人科がんの患者に多く、仕事の重圧が強く、責任感が人一倍強い人は肝がんの患者に多い、という傾向を診療の中で感じているといいます。

ストレスはいつも取り除けるわけではないため、陳医師は互いを補い合う2つの方法を勧めています。ストレスの原因となっている環境から、いったん離れること。そして、プレッシャーとの向き合い方そのものを変えることです。
 

その場を離れて、神経を休ませる

厳しい職場や、張り詰めた家庭環境に長くいると、脳は高い警戒状態を保ち続けてしまうことがあります。交感神経系、つまり体の「戦うか逃げるか」に備える神経系が反応の準備を続けたままになり、特に何かをする必要がないときでも、なかなかリラックスできなくなるのです。

そうしたときは、必ずしもその場で問題を解決する必要はない、と陳医師は言います。一時的にその環境から離れるだけでも、緊張が続くサイクルを断ち切るのに十分な場合があるのです。

近くの喫茶店や公園、あるいはコンビニエンスストアで過ごす30分の休憩でも、空気が変わり、心を落ち着かせる機会になります。これは問題から目をそらすことではなく、意図的に立ち止まる時間です。そうすることで、むしろ落ち着きと冷静さを取り戻して、元の場所へ戻れるようになります。

陳医師自身は、ハイキングによって心身を回復させており、台湾の玉山、そして日本の富士山にも登ったことがあるといいます。しかし、その恩恵を受けるために、頂上を目指したり、過酷な登山をやり遂げたりする必要はない、と強調します。

「ただ谷あいに立っているだけでも、十分なことがあるのです」と、同医師は述べました。「自然が持つ癒やしの力は、何ものにも代えがたいものです」

自然の中で過ごすことの回復効果については、研究によってますます裏付けが得られています。森林を歩く効果を調べた研究では、感じるストレスや、いくつかの生理的なストレス指標が低下することが分かっていますが、結果は場所や時間の長さ、参加者によって変わります。自然の中で過ごす時間は、無理のない運動を促し、日々のプレッシャーから心の距離を取ることにもつながります。

陳医師は、友人たちと自転車で台湾を一周した、別の出来事も振り返りました。4、5日間、ほとんど道と景色、そして走ることそのものに意識を向け続け、立ち止まるのは食事と休憩のときだけだったといいます。

仕事のことを四六時中考えずに過ごすうちに、心と体が少しずつほぐれていくのを感じたそうです。意志の力だけでは不安を止められないときは、身を置く環境そのものを変えることが、その勢いを断ち切る助けになる、と陳医師は述べています。
 

プレッシャーの捉え方を変える

ストレスの原因となる環境から離れることで、一時的に楽になることはあっても、どうしても避けられないプレッシャーも存在します。そこで陳医師が勧めるのが、2つ目のアプローチです。難しい状況をどう解釈するか、その枠組みそのものを組み替える、という方法です。

同医師は、ある王様の話を紹介してくれました。王位に就く準備を進める中で、不安に押しつぶされそうになっていたその王は、うまく国を治められないのではないかと心配するあまり、夜も眠れなくなっていました。そんな王に、ある賢者が「これもまた、過ぎ去る」という言葉を刻んだ笏(しゃく)を手渡したといいます。

この言葉は、のちに陳医師自身にとっても、ストレスを感じる瞬間に思い出す、大切な心の支えとなりました。

患者を診察するときも、取材を受けるときも、人前で話すときも、うまくできるだろうかと不安になることがあるといいます。そんなプレッシャーを感じたとき、陳医師は自分自身にこう言い聞かせるそうです。「たとえ本当にうまくいかなかったとしても、明日もまた太陽は昇る。すべては過ぎていくし、また一からやり直せばいい」。

これは、責任から目を背けるということではありません。むしろ、目の前の一つの出来事を、もっと大きな視点の中に位置づけ直すことで、あらゆる失敗や不確かさを「取り返しのつかないこと」として捉えてしまう傾向を和らげる、ということなのです。
 

ストレスと睡眠、免疫はどう関わり合っているのか

ストレスの影響は、単に心理的なものにとどまりません。ストレス反応が活性化した状態が続くと、睡眠や代謝、炎症、そして免疫細胞の働きにまで支障をきたすことがあります。

中医学では、長く続く心配事や考えすぎが、消化や、食べ物をエネルギーに変える働きを司る「脾(ひ)」の機能を弱めるとされています。この考え方は現代の生理学とは異なるものですが、どちらの立場も、感情的な負担や睡眠不足、栄養不良が、体の回復力を低下させ得るという点では一致しています。

中でも、睡眠は特に重要です。睡眠は、ただ体を「一時停止」させるだけのものではありません。免疫の働きを整え、組織を修復し、記憶を定着させ、ホルモンのリズムを調整する役割を担っています。睡眠不足や、体内時計の乱れが続くと、炎症に関わる信号や免疫の反応にまで影響が及ぶことがあります。

中医学では、伝統的に午後11時から午前3時までの時間帯を、胆の経絡と肝の経絡に結びつけ、この時間帯は眠っているのが望ましいとされてきました。現代の睡眠科学は、異なる枠組みに基づいていますが、やはり同じように、自然な明暗のリズムにできるだけ沿った、十分で規則正しい夜間の睡眠の大切さを強調しています。

陳医師は、ある乳がん患者の治療を振り返りました。その患者はリンパ球が白血球全体のわずか5%しか占めておらず、検査の基準値を大きく下回っていました。彼女のがんは、のちに再発したといいます。もちろん、一度の血液検査の結果だけで再発を予測したり、免疫の状態すべてを把握したりすることはできません。しかし、通常よりも著しく低いリンパ球の値は、とりわけがん治療を受けている人の場合、医学的な評価を受ける価値のあるサインだといえます。

また、免疫の状態の良し悪しは、本人がどれだけ元気に感じているかだけでは判断できません。臨床的に必要と判断されれば、医師は白血球数などの検査結果を、症状や治療内容、栄養状態、そして患者の全体的な状態とあわせて評価していきます。
 

バランスの取れた栄養で、回復力を育てる

食事もまた、体の回復力を支えるもう一つの重要な土台です。コレステロールやがんを心配するあまり、過度に食事を制限し、肉類などの主要な食品群をまるごと避けてしまう人もいます。食欲が落ちている人や、消化に不安のある人、あるいは栄養の必要量が増えている人にとっては、これがたんぱく質をはじめとする必須栄養素の不足につながることがあります。

陳医師は、赤身肉のすべてを不必要に避けたり、生野菜や果汁ばかりに偏ったりするのではなく、バランスの取れた食事を心がけるよう勧めています。十分なたんぱく質は、その人の体調や必要性に応じて、魚、卵、乳製品、赤身肉、大豆製品、豆類、ナッツ、種子など、さまざまな食品から摂ることができます。

また、消化器が敏感な人には、空腹の状態で冷たい果物や野菜のジュースを大量に飲むことには注意するよう助言しています。果物そのものや、火を通した野菜のほうが、食物繊維やより幅広い栄養素を摂取できるうえ、人によってはかえって体に負担をかけにくいこともあります。

ストレスの管理も、質の良い睡眠も、バランスの取れた栄養も、それだけでがんを防いだり、進行を止めたりすることを約束するものではありません。たばこを避けること、健康的な体重を保つこと、飲酒を控えること、そして適切な医学的治療を受けること。こうした、すでに確立された対策が欠かせないことに変わりはありません。

とはいえ、日々のこうした心がけは、代謝や免疫、そして心の健康を支え、ストレスや病気、回復期にあるときも、体がより高い回復力を保つ助けとなり得ます。

「自分の体をよくいたわってあげてください」と、陳医師は言います。「そうすれば、体はきっと、それにふさわしい形で応えてくれるはずです」

 

(翻訳編集 日比野真吾)

英文大紀元が提供する医療・健康情報番組「健康1+1」の司会者を務める。海外で高い評価を受ける中国の医療・健康情報プラットフォームであるこの番組では、コロナウイルスの最新情報、予防と治療、科学研究と政策、がんや慢性疾患、心身の健康、免疫力、健康保険など、幅広いテーマを取り上げている。
Shan Lam