中医学では、脾と胃は体内の栄養吸収と代謝を担う重要な器官とされています。脾が弱ると、消化機能が低下するだけでなく、血糖や血中脂質の代謝にも悪影響を及ぼすおそれがあります。この記事では、脾と胃の働きを助ける四つの身近な食材をご紹介し、糖尿病の予防や改善につなげる方法をお伝えします。
現代医学では脾はあまり重視されていませんが、中医学では脾と胃腸は同じエネルギー系統に属しており、体の栄養吸収や代謝を調整する中心的な役割を担っています。脾が弱くなると、食べ物をうまく消化・吸収できず、筋肉がたるんだり、顔色が暗くなったりすることがあります。これらは脾胃の働きが低下しているサインと考えられます。また、脾が弱いと代謝によって生じる老廃物が体内にたまりやすくなり、中医学で「痰湿(たんしつ)」と呼ばれる状態を招き、糖尿病や高脂血症などの代謝性疾患のリスクを高めてしまいます。
現代の研究でも、糖尿病の患者さんの多くに、胃の動きが遅い、腹部の張り、消化不良などの胃腸症状が見られることがわかっています。腸内で分泌されるホルモンの一部は、糖や脂質の代謝を調整しており、糖尿病の患者さんでは腸内細菌のバランスが崩れていることが多いです。善玉菌(プロバイオティクス)を補うことで腸内環境が改善され、糖尿病の症状の緩和につながる可能性もあるとされています。
このように、消化器系の健康は全身の代謝機能にとって非常に重要です。長芋、かぼちゃ、さつまいも、れんこんといった四つの食材は、消化を助けるだけでなく、胃潰瘍の予防、便通の改善、さらには血糖値の安定にも役立ちます。
長芋:腸内環境を整えて血糖値を下げる
長芋は生薬としても使われる一方で、野菜としても親しまれています。漢方薬局で販売されているのは、乾燥させた干し長芋で、市場などでは生の長芋もよく見かけます。生の長芋は切ると白い粘液が出てくるのが特徴です。
この粘液には多糖類が豊富に含まれており、多糖類は腸内の善玉菌によって発酵されることで、短鎖脂肪酸など健康に有益な成分が作り出されます。これにより、炎症の抑制や血糖・血中脂質の代謝を整える働きが期待できます。伝統医学と現代の研究の両方において、長芋には血糖値や血中脂質、血圧を下げる複合的な効果があると認められています。
長芋は生のままでも食べられますし、スープなどにして加熱調理しても美味しくいただけます。おすすめは「長芋とスペアリブのスープ」です。スペアリブにはコラーゲンやカルシウムが豊富に含まれ、長芋の植物性ゼラチンと相まって、家族みんなで楽しめる健康的な料理になります。特に、成長期の子どもにもうれしい一品です。

長芋とスペアリブのスープ
材料:スペアリブ 600g、長芋 500g、ナツメ 10個、しょうが 2枚、塩 適量
作り方:
長芋は皮をむいて大きめに切り、ナツメは水でよく洗い、しょうがは薄切りにします。スペアリブは冷水からゆでてアクを取り、茹でこぼします。すべての材料を鍋に入れ、材料より少し多めの水を注いで火にかけます。強火で沸騰させた後、弱火にして約1時間、長芋とスペアリブが柔らかくなるまで煮込み、塩で味を調えれば完成です。
長芋にはさまざまな種類があり、たとえば日本でよく見られる太めの長芋は水分が多く、生で食べるとシャキシャキとした食感が楽しめます。煮込み料理に使う場合は、大きめに切ると崩れにくくなります。先にスペアリブだけを煮て、仕上げの15分前に長芋を加えると、ちょうどよい仕上がりになります。また、硬めの「鉄棍山薬(長芋)」のような種類を使う場合は、しっかりと時間をかけて煮込むことで、より食感がよくなります。なお、長芋の粘液は皮膚を刺激することがあるため、調理の際は手袋を着用するのがおすすめです。
甘味のあるスープがお好みの方は、ナツメをあらかじめ包丁で切り込みを入れておくと、より甘味が出やすくなります。ナツメを多めに加えることで、味わいが深くなるだけでなく、脾と胃の働きを助ける効果も期待できます。
長芋は、台湾の伝統的なスープ「四神湯(ししんとう)」の主要な食材でもあります。血糖値のコントロールを目指す方は、四神湯に長芋を多めに入れて主食の代わりにすると良いでしょう。
かぼちゃ:胃の不調を改善
かぼちゃには、脾と胃の働きを整える効果があります。研究によると、かぼちゃは糖尿病、がん、心血管疾患の予防や改善にも役立つとされています。また、かぼちゃの種には、胃潰瘍の予防、抗菌作用、傷の回復を促す作用があることが知られています。
仕事のストレスが多く、胃痛を感じやすい方の多くは、食事の時間が不規則であることが共通しています。こうした方には、週に1〜2回かぼちゃを食事に取り入れて胃をいたわることをおすすめします。かぼちゃにはペクチンが豊富に含まれており、胃腸の粘膜を保護することで、胃炎や胃潰瘍の予防に効果が期待できます。
かぼちゃは、キビと一緒にお粥にすると、さらに効果的です。中医学では、きびにも脾胃を補う作用があるとされており、現代の研究でも、きびは白米より栄養バランスに優れ、食物繊維、ビタミン、植物性化合物が豊富で、大腸がんの予防にも寄与すると考えられています。

かぼちゃと粟のお粥
材料:かぼちゃ 200g、粟 50g
作り方:かぼちゃは一口大に切り、粟は水で洗ってから、沸騰したお湯に一緒に入れます。弱火で30分ほど煮込み、とろみが出てきたら完成です。焦げつかないように、途中で何度かかき混ぜながら煮てください。
さつまいも:血糖値を下げ、便通を促す
さつまいもには、血糖値や血圧を下げ、便秘を改善する効果があります。腸内でガスを発生させたり、腸の後半部分の水分量を増やす働きがあり、排便をスムーズに促すとされています。
多くの人が、さつまいもはでんぷん質の多い食品であるため、血糖値のコントロールには向かないと考えがちです。しかし、研究によると、さつまいもに含まれるでんぷんの多くは「難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)」で、急激な血糖値の上昇を引き起こすことはありません。また、この難消化性でんぷんは腸内の善玉菌のエサとなり、腸内環境を整えることで血糖値や血中脂質の改善にもつながります。さらに、さつまいもに含まれるフェノール酸、フラボノール、フラバノン、アントシアニンなどの成分には、抗糖尿病作用があると報告されています。不安な方は、まず少量を試して血糖値に大きな変化がないかを確認してから、継続的に取り入れることをおすすめします。
ある総合研究では、人を対象とした22本の研究論文を分析し、さつまいもの摂取がビタミンAの補給、血糖値や血圧の安定、肝機能の改善、排便の促進に役立つことが示されています。

れんこん:炎症を抑え、脂肪肝を改善
夏は辛いものや油っこい料理を食べる機会が増え、口臭や口内炎、口角炎など、炎症による症状が出やすくなります。中医学では、こうした状態を「脾胃に熱がこもっている」と表現し、原因となる炎症を「火」と捉えます。れんこんは、この「火」を鎮め、脾胃の状態を整えるのに適した食材です。脾胃を整えることで、こうした不調を予防することができます。
研究では、れんこんが血糖を下げる効果、抗炎症・抗酸化作用をもつポリフェノールを豊富に含んでいることが明らかになっており、動物実験では、糖尿病のラットにおける脂肪肝の改善にも有効であることが確認されています。また、別の動物実験では、発酵れんこんエキスが胃潰瘍の治療に効果を示すことも報告されています。
夏にぴったりの飲み物として、「れんこん茶」もおすすめです。

れんこん茶
材料:れんこん 1節、水 1000ml、氷砂糖 少々
作り方:れんこんをよく洗って皮をむき、薄切りにします。鍋に切ったれんこんと水1000mlを入れて火にかけ、沸騰したら弱火にして40分煮込みます。最後に氷砂糖を加えて冷ませば完成です。煮たれんこんは、そのまま食べても、他の料理に活用しても構いません。
(翻訳編集 華山律)
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