人生に調和をもたらすために、穏やかであることを選ぶ

穏やかさ(Calm)。この言葉を口にするだけで、実際に穏やかな気持ちになります。緊張がほぐれ、呼吸や心拍数はゆっくりになり、心は穏やかで高揚した気分になります。

これほどの平和をもたらすものが、なぜしばしば手の届きにくいもののように感じられるのでしょうか。

また、なぜ、ある人は他の人よりも簡単にそれを得ることができるのでしょうか。それはおそらく、その人たちが穏やかさのもたらす恩恵を経験し、理解しているからでしょう。ストレスが減り、言ったことを後悔することが減り、衝動的にとった行動の修正が必要になることが少なくなります。

穏やかさは、人生が順調で、思いどおりに進んでいるときだけ与えられるものではありません。穏やかさが最も必要とされ、同時に最も得るのが難しい瞬間とは、まさに人生が混乱しているとき、予期しない出来事が起きたとき、ストレスが生じた瞬間です。そうした瞬間こそ、私たちは試されます。怒りや恨み、不親切な態度に流されるか、それとも、一歩引いて穏やかさを保ち、恐れや苛立ちから反応するのではなく、理性的に状況を見るのかが試されるのです。

穏やかさは、決して受け身ではなく、積極的な選択です。私たちが反射的に反応するとき、私たちは他人や状況に主導権を明け渡しているのです。身体は緊張し、考える前に言葉があふれ出し、緊迫感と感情に突き動かされます。反応は瞬時に起こり、ときには正当である場合もありますが、多くの場合、問題を解決するどころか悪化させてしまいます。
 

行動における穏やかさ

衝動的に反応してしまったときのことを思い出してください。その後、どのように感じましたか。一方で、困難な状況の中でも穏やかさを保てたときの感情は、物事がより軽く、より明確で、対処しやすく感じられたのではないでしょうか。荒れた水面のように、ストレスを受けた心は現実を歪めます。しかし、穏やかな心は明確さを浮かび上がらせ、本能的に反応するのではなく、意図的に応答することを可能にします。穏やかであることは、気にかけないという意味ではなく、思慮深く反応できるほど気にかけていることです。そして、自分が世界に発したものは、やがて自分に返ってくることを理解しているということでもあります。

私たちは周囲の世界をコントロールできないかもしれませんが、自分がどのように応答するかはコントロールできます。そのためには、その瞬間の自分の考えに気づき、「この状況から良い結果を得たいのであって、ただ議論に勝ったり自分の正しさを証明したりしたいのではない」といったように、物事の見方を変えることでより良い結果につながる土台を築くことができます。また、少し立ち止まって相手の視点に目を向けることもできます。その人は、たまたま悪い一日を過ごしているのかもしれませんし、私たちの知らない個人的な問題を抱えているのかもしれません。穏やかさと思いやりの気持ちを持って相手と共感することにより状況が好転し、人生がより調和のとれたものに感じられるようになることさえあります。

すべての瞬間において簡単とは限りませんが、穏やかさを保つことには常に価値があります。それは無力感や絶望感に代わって、自分には力があるという感覚をもたらします。穏やかさは理解への扉を開きます。問題はより対処しやすく感じられます。他人の言葉や行動を個人的な攻撃のように感じにくくなります。自分の失敗も、それほど悲惨なものではなくなります。穏やかさは物事を客観的に見る力を与えてくれます。ストレスや感情のレンズを通してではなく、物事をありのままに見る力です。

穏やかでいることは、忍耐力、落ち着き、人格の強さを反映し、他人に良い印象を残します。本当の強さは、ときに私たちが思い込んでいるような、大声で相手を打ち負かしたり、議論に勝ったりすることの中にはありません。それは、自制心、他者への配慮、そしてたとえ不親切な扱いを受けたとしても、思いやりを示す能力の中にあるのです。
 

健康と調和

精神的・感情的なメリットに加え、穏やかさが身体の健康にも具体的な影響を与えることが、科学によって示されています。2020年に『Psychoneuroendocrinology』誌に掲載された研究では、心配やストレスは身体を高度な警戒状態に置き、ストレス時に分泌されるホルモンを増加させ、心臓の機能を乱す一方で、穏やかでリラックスした状態はストレスホルモンを低下させ、免疫システムを支えることが分かりました。

また、『Brain, Behavior, and Immunity』誌に掲載された別の研究では、「認知的再評価」と呼ばれる適時に感情調整戦略を頻繁に用いる高齢者は、ストレスの多い人生の出来事の後でも、炎症レベルが低く、免疫機能の老化もより健康的であることが示されました。これらの結果は、効果的な感情調整が免疫システムを保護し、加齢に伴うストレス関連の健康リスクを軽減する可能性を示しています。

穏やかさの美しさは、それが常に利用可能であることです。それを得るために、完璧な状況や静寂、あるいは人生からの休暇は必要ありません。交通渋滞の中でも、困難な会話の中でも、失望の瞬間でも、穏やかさを選ぶことができます。ときには、ゆっくりと一度呼吸をし、「感情に左右される必要はない」と自分に言い聞かせること、それだけで十分なのです。

穏やかさを選ぶ回数が増えるほど、それはより自然なものになります。それは、あなたの話し方、聞き方、そして一日の過ごし方を形作ります。やがて人生は、自分に降りかかるものではなく、自分が意識的に参加しているもののように感じられるようになります。穏やかさは逃げることではなく、弱さでもありません。穏やかさとは意識的な選択であり、自信、思いやり、そして自制心を持って対応する選択なのです。

次に困難に直面したとき、つまり人生で必ず起こる、人や状況が予想外の出来事を投げかけてきたとき、少し立ち止まって自分自身に問いかけてください。「ただ反応するだけだろうか、それとも冷静な心と精神で対応できるのだろうか?」

選択するのはあなたです。

(翻訳編集 井田千景)