がんに対抗するため、科学者たちは新しい治療方法の開発を進めています。それは、改造された細菌に腫瘍内部で栄養を吸収させ、最終的に腫瘍を内部から分解させるという方法です。この治療法の鍵は、無酸素環境で生存できる細菌を利用する点にあります。というのも、腫瘍の中心部は酸素が不足した環境だからです。この治療法は現在、前臨床研究の段階にあり、まだ人体での試験には入っていません。
カナダのウォータールー大学は2月24日に発表したニュースリリースの中で、同大学の研究者が特別に改造した細菌を利用し、腫瘍を内部から分解する新しいがん治療法を開発していると述べています。
この戦略は、もともと無酸素環境で生存できる細菌を利用するものです。多くの固形腫瘍の内部は理想的な標的となります。なぜなら、腫瘍の中心部は死んだ細胞で構成されており、しかも酸素が不足している環境だからです。
同大学の化学工学教授オコイン氏は次のように述べています。
「細菌の胞子が腫瘍に入ると、腫瘍内部が栄養に富みながら酸素が不足していることに気づきます。これはまさにこの微生物が好む環境であり、そこで栄養物質を吸収し始め、成長を続けるのです」
この方法の鍵となるのは、クロストリジウム・スポロゲネスと呼ばれる細菌です。これは土壌によく存在する細菌で、完全な無酸素環境でしか成長できません。この細菌は、腫瘍内部の無酸素環境に適しています。
しかし、ここには生物学的な難題があります。これらの細菌が腫瘍の外縁に到達すると、酸素にさらされ、腫瘍を完全に破壊する役割を果たす前に死んでしまうのです。
この問題を解決するため、研究者たちはまず、比較的酸素耐性のある関連細菌の遺伝子をこの細菌に導入し、標的となる腫瘍の周囲でもより長く生存できるようにしました。
その後、研究者たちは「クオラムセンシング」と呼ばれる現象を利用して、適切なタイミングでこの耐酸素遺伝子を作動させる方法を見つけました。これは、血液などの酸素が豊富な環境で細菌が誤って増殖するのを防ぐために非常に重要です。
簡単に言えば、クオラムセンシングとは、細菌が化学シグナルを放出する仕組みのことです。腫瘍内の細菌数が十分に増えたときにのみ、そのシグナルの強度が耐酸素遺伝子を作動させるレベルに達し、早すぎる段階でこの現象が起こらないようにしています。
以前の研究では、研究者たちは遺伝子改変によってクロストリジウム・スポロゲネスの酸素耐性を高めることができることを示しました。その後の実験では、細菌が緑色蛍光タンパク質を生成するように遺伝子を組み込み、クオラムセンシングの設計をテストし、このシステムが予想されたタイミングで作動することを確認しました。
同大学の応用数学教授イングルス氏は次のように述べています。
「私たちは合成生物学を利用して、回路のような仕組みを構築しました。ただし使うのは電線ではなくDNAの断片です。それぞれの断片には役割があり、正しく組み合わさることで、予測可能な方法で動作するシステムが形成されます」
研究者たちは現在、耐酸素遺伝子とクオラムセンシング制御システムを一つの細菌に組み込み、前臨床試験において腫瘍に対する治療効果を評価する計画です。
これらの研究成果は、『ACS Synthetic Biology』誌に掲載されました。
(翻訳編集 解問)
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