流行語で読み取る激変の中国(7)

【大紀元日本10月5日】

原語= 正龍拍虎

和訳= 周さんが虎を撮る

『水滸伝』には、武松が空手で虎を打ち殺した話があり、英雄談として代々伝えられている。武松が打ち殺した虎は、大型の東北虎かそれとも小型の華南虎か、未だに定まらない。

07年10月12日、中国陜西省林業庁は記者会見を行い、鎮坪県内で絶滅に瀕している野性の華南虎を発見したと伝え、目撃者の村民・周正龍氏が10月3日に撮った2枚の写真を公表した。陜西省林業庁は、野性華南虎の発見により周氏に2万人民元(約30万円)を与えて奨励し、またぼう大な予算を組んで華南虎探しプロジェクトを立てた。

しかし、同月の15日、ネット住民たちは公表された写真を鑑定したところ、写真編集ソフトを使ってモンタージュした可能性が高いと指摘した。19日に、中国科学院研究員傳徳志氏も写真が偽造だと断言した。

一方、23日、陜西省林業庁は官僚を派遣し、周氏とともに国家林業局に事情報告した。24日、国家林業局は、専門家調査チームを鎮坪県に派遣し華南虎の生息状況を調査すると決定した。

11月16日、ネットで「滝の傍で腹ばいになる虎」という年画(中国で旧正月に壁に張るめでたい絵)が載せられ、画中の虎の姿勢や斑紋は周氏の撮った虎に酷似していることが指摘された。

12月2日、ネット網易は民間機構による鑑定報告を公表し、周氏の撮った虎の映像は本物ではないと断定した。12月19日、国家林業局は写真への再鑑定を命令したが、09年6月29になって、ようやく陜西省林業庁長は北京で記者会見を行い、虎の写真は虎の絵を撮った偽物だと認め、偽造者周氏を逮捕したと伝えた。これで、9カ月ほどにも及んだ虎騒ぎがついに終息した。しかし、国民の不信や憤りはなかなか静まらず長引いていた。

周氏は2年6カ月の実刑判決を言い渡されたが、社会の信用が日増しに低下している中で、一般の国民はこの判決に不服を示し責任は周氏だけに追及してはならず、関連した官僚も責任を負うべきだと主張していた。それで、13人の政府官僚も軽い行政処分を受けざるをえなかった。

偽物であることは事件が発生した当初から指摘され、事実が明確になったにもかかわらず、なぜ陜西省の関係官僚は依然として「虎支持派」の姿勢を崩さなかったのか?そこに利益や出世につながる何かの秘密があるのではないか。そして、こういったようなことははたして華南虎事件だけに存在しているのか、と国民からの疑問や詰問が山積みである。

興奮や歓喜が大きかっただけに、失望や憤りも相当大きいのである。そのエネルギーはある種のパワーに変えられ、「正龍拍虎」という言葉もいきなり08年10大流行語に押し上げられた。