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今年末において、中国の各銀行からの貸出総額は、GDPの50%に達する可能性があり、深刻な結果は避けられないという。写真は、中国の中央銀行・中国銀行の上海の支店(PHILIPPE LOPEZ/AFP/Getty Images)

中国経済回復に関する不安定要素

 【大紀元日本9月3日】今年4月以降、中国経済に関するニュースは朗報ばかりだった。これが、世界的な経済回復に希望をもたらすかのようだ。しかし、中国経済に関するポジティブな数字が、必ずしも中国経済の回復につながるのだろうか。フランスで中国問題を専門とするフランソワ・ダンジョー氏は、この視点から、中国問題関連サイトに「経済回復に関する不安定要素」と題する論文を発表した。中国経済の回復が、世界の経済発展を牽引するという論理に疑問を投げかけている。

 論文では最初に、金融危機に対する中国政府の迅速な対応と、タイムリーな景気刺激策を肯定し、数カ月前に国際社会から金融管理の未熟さを指摘されていた北京当局が「青は藍より出でて藍より青し」(弟子が先生よりすぐれていることのたとえ)になったと指摘する。

 中国の第2四半期の経済成長率は、8%という意外な好成績を収めた。海外の一部の専門家は、中国の内需の伸び14・8%という統計データに楽観的になっている。

 しかし、多くの専門家は、こうした中国経済に関する一連のポジティブな数字に対して、保留の態度をとっている。中国の統計数字への不信もあるが、中国の景気刺激策は、中長期的に見て中国経済に負の影響をもたらすという懸念がその主な理由である。

 国有銀行から企業に資金を流入することをメインとする中国の景気刺激策は、もともと不良債権問題から抜け出せなかった中国の銀行を、さらに泥沼にはまり込ませたと専門家は指摘する。このため中国経済が直面する危機は、より深刻だ。

 ダンジョー氏の指摘によると、今回の金融危機が起こる前の十数年間、中国政府は、国有銀行に氾濫する不良債権問題の解決に注力してきた。しかし、金融危機で、これまでの中国政府の努力は水の泡となった。今年6月、景気刺激策により、各銀行の貸出割合は前年同期比で33%の伸びとなり、貸出総額は、未曾有の1兆ドル規模に達した。このペースで進めば、今年末において、中国の各銀行からの貸出総額は、GDPの50%に達する可能性がある。UBSの中国アナリストは、これだけの短期間にこれだけ巨額の貸出をすれば、 深刻な結果は避けられないと警鐘を鳴らす。

 また、ダンジョー氏は、 銀行の過剰貸出により、主に三つの悪効果が現れるだろうと分析する。 第一に、銀行が十年前に開始した貸出制度が終了する前に巨額な貸出しを行えば、銀行の資金収支の均衡がとれなくなる。第二に、欧米市場が衰弱する中、巨額の投資を行えば、必然的に過剰生産が発生し、工業生産の歯止めが効かなくなる。第三に、過剰な資金や製品は、必ず投機性の高い不動産市場、証券市場に流入し、バブルを発生させる。上海の株式市場、不動産市場は、今年初めに比べてそれぞれ90%、30%上昇しているが、この現象は決して偶然の産物ではない。

 論文は、中国国務院マクロ経済研究所所長・魏建寧氏の言葉を引用し、更に以下のように指摘している。中国が景気刺激策を打ち出した後、中国の銀行は、関係が密接な国有企業に対し、既に1750億ドルの違法な貸出しをしたが、これらの資金は、全て株式市場、不動産市場へと流用された。モルガンスタンレーのアナリストによると、中国の株式市場、不動産市場のバブル化現象は深刻であり、5割も過大評価されているという。また、ある投資会社の専門家は、中国政府が局面を転換させる政策を打ち出さなければ、経済、社会、政治面で深刻な危機が発生すると警告している。

 ここで二つの見解があることをダンジョー氏は指摘する。楽観派は、中国政府が90年代において多くの危機を乗り切ることに成功したと強調し、中国経済には、 多額の外貨貯蓄、回復をみせる内需、確固たる工業の成長率、低廉な労働力など多くの切り札が備わっていると考える。一方、慎重派は、中国の銀行が国有企業に対して多額の貸出を行うことで市場のバブル化がもたらされ、中国の投資計画が長期的な見通しを欠くものになると見る。

 中国の景気刺激策では、予算の45%が住宅などのインフラ建設に投資され、教育、衛生などの長期的なプロジェクトへの投資がなおざりにされている。昨年12月、中国共産党中央党学校の周天勇氏は次のように指摘している。中国の公共サービス向け投資の総額は、先進国を大幅に下回っており、特に教育と衛生分野は、世界の最貧国水準と同等である。児童入学率は下降し続けており、一部の地区における 教育・衛生状態は、1978年の水準を下回る。また、国民の70%は退職後の保障がない。退職金があったとしても、支給額が173兆円相当にのぼり、退職基金管理委員会は破産の瀬戸際に立たされている。逆に中国政府の行政支出は、国家予算の24・7%と、世界のトップに位置しており、米国の10%、フランスの6・5%を大きく上回っている。

 中国政権は、「経済成長率」に頼っており、政府が効果の出やすい景気刺激策を優先するのは当然だと論文では解説している。

 同論文は最後に、中国経済が好転するかが問題ではなく、今後、好転したとしても経済が持続できるかが重大な課題であると締めくくっている。

 (フランス国際ラジオ放送(RFI)より転載)

(翻訳・小沢)

 (09/09/03 02:26)  





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