THE EPOCH TIMES

中国企業 10年来で最も経営困難な局面に 背景は内外需要の鈍化

2012年05月18日 12時13分
 【大紀元日本5月18日】海外からの受注の激減や内需不振、企業経営コストの高騰などを背景に、中国の多くの企業が、この10年間で最も困難な局面に直面している。大紀元傘下の中国語誌『新紀元』が報じた。

 「世界の工場」に重い閉塞感

 広東省東莞市で毛織物加工会社を10年以上経営する肖偉さんは、「多くの工場経営者がすでに、加工用の機械を全て売り払って工場を閉めてしまった。私が住むこの辺では、もう数十社もの中小加工工場が倒産した」と話す。

 そう語る肖さんは、現在のこの業界の状況は、2008年の世界金融危機の時よりも深刻だという。

 「今年、業界の市場価格が下落しており、受注も低価格になっているが、会社の経営コストは上がる一方だ。また、賃金が低いといって、辞めてしまう従業員も多い。加工生産に使う機械は一台で十数万元かかるが、この機械一台を24時間稼働しても、1日の儲けは数十元にしかならない。いろいろなコストを除けば、1カ月の利益がほとんどゼロの月もある。しかし、そのような状況でも、銀行からの借金を返すためには受注して生産を続けなければならない」と、肖さんは嘆く。 

 このほど温家宝首相が言及した、国内の中小企業を対象とする融資優遇や税減免などの措置について、肖さんは「まだこの地方ではそのような措置を目にしたことはない」と苦笑いする。

 中国当局の統計によると、現在登録している中小企業数は全国の企業総数の99%以上を占めており、それらの中小企業が国内総生産(GDP)の70%、また国の税収の50%に貢献しているという。

 広東省東莞市の中小企業の経営状況は、中国全体の中小企業の縮図だ。中国国家統計局や国務院発展研究センターなどの政府機関が共同で設立した調査研究機関である中国企業家研究システムは、4月14日に発表した調査レポートで、現在の企業経営難について「利幅縮小」「過剰生産能力」「資金調達難」および「従業員の獲得困難」がその主因だと示した。この調査に協力した企業は主に非国有企業と中小企業だという。

 工業収益減少、原因は「材料高騰、販売低迷、コスト増加」

 中国企業の経営難は、このほど発表された工業収益からも窺うことができる。国家統計局が4月27日に発表した今年第1四半期(1~3月期)の、一定規模以上の工業関係企業による収益は、前年同期比で1.3%減少した。収益減少の原因として、原材料仕入れ価格の高騰、製品販売の低迷、製造・生産コストの増加などが挙げられている。

 また、国家統計局が5月11日に発表した統計によると、4月の工業生産は前年同月比で9.3%増だが、前月の3月と比べて2.6ポイント減速している。工業生産の伸び率が10%台を下回ったのは、リーマン・ショック以来約3年ぶりだ。

 一方、業界関係者によると、現在の販売状況から見た中国企業の経営状態は、統計局の発表した数値よりも深刻だと指摘する。

 山東省のある企業リサーチを行うアナリストは、次のような企業販売統計データを示した。

 それによると、今年第1四半期の鋳造業の販売は前年同期比で69%減少。自動車部品製造業は同46%減少。また、建築業(鉄筋構造)は同31%、化学装置製造業は同33%、風力発電基本設備製造は同90%、造船補助装置製造は同50%、それぞれ減少したという。

 輸出不振と内需鈍化、中国経済に迫る2つのピンチ

 長い間、中国の経済成長のけん引力の一つであった輸出セクターが、欧州債務危機や米国経済の停滞で大幅に低迷していること、および内需の鈍化も、多くの中国企業が経営難を生じた主な原因だとされている。

 中国税関総署が10日に発表した4月の貿易統計によると、輸出は前年同月比で4.9%増の1632億5000万ドル。輸入は、前年同月比でほぼ横ばいの0.3%増の1448億3000万ドル。当月の貿易黒字は184億2000万ドル。

 4月の輸出入の伸び率の低下は、中国の外需と内需の鈍化を改めて示した。輸出の伸び率は3月の8.9%から大幅に下落。輸入の伸び率も、3月の5.2%から約5ポイントも落ち込んでいる。

 国内外のエコノミストは、今回の輸入の急激な鈍化に注目し、中国内需不振の深刻さを懸念する。内需は、投資と消費から成り立つ。中国経済は特に投資に依存しているが、不動産価格抑制政策による不動産市場の減速、および株式市場の低迷により、人々の投資意欲が、後退しているのが現状である。

 一方、個人消費は長い間不振のままだ。都市部と農村部との間の所得格差や国民の社会保障への不安などが、個人消費の拡大を阻んでいる。中国政府は近年、内需主導型経済に転換することを何度も表明してきたが、いまだに所得格差の問題や社会保障に関する改善策を出していない。

 経済評論家「利下げできる幅は残ってない」

 4月の工業生産や輸出入などの経済指数が悪材料(株価を下げるマイナス情報)となり、中国経済の行方がますます不透明になっている中、中国人民銀行(中央銀行)は12日、市中銀行が預金総額のうち中央銀行に預け入れる額の比率である預金準備率を18日から0.5%引き下げるという追加緩和策を打ち出した。今年2月以来、3カ月ぶりの利下げとなる。

 これについて、在米中国経済評論家の廖仕明氏は、「中国経済成長の鈍化や企業の経営難などの問題を解決し、経済を刺激するために、中国政府は流動性供給拡大を目的に利下げをはじめとする追加金融緩和を行っていくだろう。しかし現在、中国ではインフレ圧力がいまだに大きいため、利下げできる幅はそれほど残っていない」と指摘する。

 また、多くの業界関係者は、中国政府が投資を促進するための新たな景気刺激策を打ち出す可能性はないとの認識を示している。その理由として、2008年末に中国政府が打ち出した4兆元規模の景気刺激策によって生じた不動産バブルで、さんざんに頭を悩まされてきた指導者たちが前轍を踏むことはないと見られるからだ。

 広東省東莞市で毛織物加工会社を経営する肖偉さんは、今後の経営について、「一番忙しいシーズンであるこの5月に、経営が良くなることを願っている。今月良くならなければ、今年はもう終わりだ。しかし今の状況から見ると楽観はできない」と話した。

 (記者・高紫檀、翻訳編集・張哲)
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