【モンゴル「草点」便り】モンゴル口琴をポケットに

【大紀元日本10月20日】私の手元にモンゴル国の金属製の口琴があります。口琴は口に含んで上下の歯に当て、口の中で共鳴させて音を発する小さな楽器です。舌のポジショニングや唇のかぶせ方、口腔内の容積によって、発する音を微妙に変化させることが出来ます。風鈴の舌に当たる細長い振動板が真ん中にあって、人差し指で弾いて上下の歯の隙間を素早く往復させて上手く通し、振動する音をしっかり歯に伝えて口腔内で増幅します。子供たちに聞かせると、カエルのケロヨンが冗談を言っているような音が出るので、くすっと笑います。でも本当はとても厳かな宇宙音なのです。

アイヌの木製のムックリは口琴の一つのタイプです。びゅんびゅん、ひゅるるんとアイヌの人達が奏でるムックリの音を聴かれたことはありませんか?

口琴は大別して、竹などで作られた木製のものと、鉄などでできた金属製のものがあります。金属製の口琴は、馬の蹄鉄の原型を加工したような形が一般的ですが、民族によってさまざまな美しいカタチがあり、独自の装飾が施されていたりします。口琴文化圏はシャーマニズムと密接につながって、世界各地に存在しています。

私が最初に手に入れたのはハンガリーの口琴でした。最初は鳴らし方が分からず、細長い振動板を弾いて上下の歯の間を通過させる時に、何度も唇を挟んでしまって、随分と痛い思いをしました。初心者の通過儀礼を卒業して上達すると、口琴の発するシンプルで味わい深い音にすっかり嵌ってしまいました。嵌ってしまうと、上達はとても速いのです。

眠りに就く薄明かりの部屋の中で、びょんびょんと奏でる音は幻想的で、安らかな眠りを誘う揺り篭のような癒しの音が広がります。民族によっては、お母さんが赤ちゃんをあやす子守唄の楽器として活躍しています。泣き叫んでいる赤ちゃんに口琴を聴かせると、スヤスヤと泣き止ますことが出来たりします。私も試してみたことがありますが、その通りなことが起きて、ビックリしました。赤ちゃんを寝かしつけるのに格闘する日本の若いお母さんに、是非教えてあげたい楽器です。

私が持っているモンゴルの口琴は、モンゴル国でお土産用に売られていた一品で、白鳥のカタチをしています。口琴をびょんびょん奏でると、白鳥の姿カタチをしたモンゴルの精霊がやってくるので、白鳥のカタチになっているのです。スタンダードなカタチの口琴を、日本の子どもたちに何に見えますかと聞くと、キーホルダーという答えが返ってきたりします。楽器ですというと、びっくりします。鳴らしてみると、不思議そうに好奇心で、目をまん丸にします。鳴らし方を教えて手に持たせると、やりたくて一斉に飛びついてきます。

口琴は息を吸うときにも吐くときにも、音を出すことが出来ます。息を吸いながら音を出すと、口琴の振動音が肺の中に伝わり、かすかな幸福感が広がるように思えてきます。ハッピーでピースフルなバイブレーションに満たされるのです。

モンゴル口琴をポケットに、自転車をハイ!ドードーの馬代わりに跨れば、たちまち都会のアスファルトジャングルは子ども心一杯のモンゴル草原に変わるのです。

(ヤポンバヤル)