米研究:植物とクモ、同じ獲物を争奪

【大紀元日本5月24日】自然界では日々、動物と植物が同じ獲物を獲得するための争奪戦が繰り返されている。米科学者らによる最新研究発表が、英国の科学者にとってパイオニア的な機関である英国王立協会の「英国王立協会B紀要」(Proceedings of the Royal Society B)(※1)に掲載された。

研究チームは、フロリダ州の湿地で実際に生息しているコモリグモ(wolf spider)と食虫植物モウセンゴケ(pink sundews)(※2)の関係について観察研究を行った。獲物の少ない時に、コモリグモは獲物を捕まえるチャンスを増やすために、より大きな網を張る。しかし、それによって、モウセンゴケは獲物を捕まえるチャンスが妨げられ、犠牲になることが分かった。

モウゼンゴケはロゼット状の葉を持ち、その先端の粘液で獲物を捉える。獲物は粘液にくっ付くと身動きができなくなる。一方、コモリグモの巣にも似たような粘性があり、モウセンゴケと同様に、白トビムシなどの節足動物や、小型のハエ、蟻を捕る。

また、実地観察の他に、クモの存在やエサの量に対するモウセンゴケへの影響をみるために、研究チームは研究室でも実験を行った。40個のガラスタンクにそれぞれ6株のモウセンゴケを入れ、「クモと豊富なエサ」「クモと少ないエサ」「クモ無し、豊富なエサ」「クモ無し、少ないエサ」「クモ無し、エサ無し」の5グループに分けて実験を行った。実験の結果、コモリグモの存在がモウセンゴケの花の茎と種子の数を減少させるなど、複数の悪影響を与えることが判明した。

研究チームを代表するサウス・フロリダ大学のデービッド・ジェニングズ氏は、「実地観察と室内の実験結果で、コモリグモとモウセンゴケの獲物争奪戦が続いていることが分かった」と結論を出している。

植物と動物が同じ類のエサを捕るために、地上で激しい争奪戦を行っていることが初めて確認された意義ある報告となった。ジェニングズ氏は「今回と逆に、モウセンゴケのコモリグモに対する影響についての研究もしたい」と今後の研究テーマを提示している。

※1 「英国王立協会B紀要」(Proceedings of the Royal Society B):生物科学に関する研究報告を掲載する科学誌で、生態学、行動生態学、進化生物学を取り扱う。

※2 モウセンゴケ:英語名は、陽光の下で輝く粘液滴を露に見立ててSundew(太陽の露)と呼ばれる。日本では、群生地で赤に毛羽立った葉を緋毛氈(アカモウセン)に見立てたのが名前の由来。

(翻訳編集・豊山)