愛ほど優れた命の肥やしはない

米国の田舎に、一人の可愛い男の子が住んでいた。彼がよちよち歩きをはじめた頃、不幸にも小児麻痺にかかり、歯並びは悪くなり、足も引きずるようになってしまった。

 他の子と一緒に遊ぶ時、みっともない歯のために笑われ、時には腕白な子供たちから足を引きずる様子を真似されながら「ばか」と呼ばれることもあった。男の子の心は沈み、一日中家にこもることが多くなった。あまり話もしなくなった。

 ある春の日、男の子の父親がうれしそうに1束の苗木と村中の子供たちをつれて家に戻ってきた。父親は男の子を中庭に呼び出し、全員に向かってゆっくりと話し出した。「みなさん、私が今日ここに持って来た苗木は普通のカエデの木ではない。これはりっぱな苗木で、ひとりひとりの明日と未来を予測することができる。もし誰かの植えた苗木が速く健全に育てば、その子は将来有名な人、あるいは立派な事業家になるのだ。一緒に植えて見よう」。父親は子供一人一人に苗木を配り、子供たちと一緒に全ての苗木を家の中庭に植えた。

 このカエデの苗木たちは急速に成長し、緑の生き生きとした葉はひとつひとつが子供の手のひらのように柔らかく、新しく生まれた枝は青緑色の光沢があった。しかし皆を驚かせたのは、男の子が植えた木が最も速くて健全に育ったことだった。父親はいつも男の子を中庭に呼び出して、男の子の木を指しながら話した「ほら!君が植えた苗木がいちばん大きくて健全に育っただろう!君は将来必ず立派な人になるに違いない」。口数の少ない男の子は頭をもたげて自分の植えた木を見た。本当に父親が言うとおりに自分の植えた木が一番大きくて立派で美しかった。男の子の目には明るい微笑が浮かんだ。

 男の子は歌を歌いながら友達のところへ遊びに出かけるようになった。仲間から自分の歯と足のことを笑われても、男の子は胸を張りながら「みすぼらしい歯と足を引きずることは、大したことじゃないさ。僕は将来きっと君たちより立派な人になるんだ!信じられなければ、僕が植えた木を見に行ってごらん!」と言い放っていた。

 男の子が16、7歳になった時、彼は村でいちばんの立派な青年になった。彼の歯は確かにみすぼらしかったが、学校の講演会では鋭い舌戦を繰り広げ、多くの人から喝采を得た。足を引きずることにもこだわらず、彼の成績は常にクラスでトップだった。彼は学校で最も活発な、多くの人が羨むスターとなった。

 夏休みのある夜、男の子はどこからか聞こえてくる微かな音が気になり、中庭に出た。すると、あのすくすく育っている林の中で、父親が自分の植えたカエデの木に水をかけ肥料をまいているのが見えた。その一瞬、彼は自分の植えたカエデの木がなぜそんなに早く健全に育ったのかという謎が解けた。明るい月の光の下で、男の子は父親に聞いた。「お父さん、この十何年間、ずっと水と肥料をやって世話してくれたの?」

 父親は笑いながらうなずいた。彼は父親の肩先で泣き出した。父親は、「泣かなくてもいい。私はただこの木にわずかな肥料を補充したたけだ」。男の子は涙を拭き、父親に感謝しながら言った。「違うんだ。おとうさんは僕の心に肥やしをまいて、僕に自信をつけてくれたんです」。

 数十年経って、あのカエデの木が空に届くほど大きくなった時、足を引きずっていた男の子は本当に立派な人、アメリカの大統領になった。アメリカ史上唯一の、重度の身体障害を持つ大統領。そして、全世界の人が敬愛する偉大な大統領になった。彼の名はフランクリン・ルーズベルト。

 一株の苗木に愛をこめて肥料をやると、それが天に届くほどの大木になる。人の心に愛の肥やしを与えると、人の心は世界を愛で包めるほどの立派な人物に成長する。この世で愛ほどいい肥料はない。愛は命にとって最も良い肥やしだ。愛は奇跡を生みだすことができる。

 

 (翻訳編集・盛徳)
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