【佛家物語】 妄念を捨てなさい

これは目犍連尊者の修行中の物語です。

 ある日、釈迦牟尼佛は目犍連に「あなたの債権者がもうすぐ来ます」と言いました。

 目犍連は、「私は神通力を持っているから、須弥山を乗り越えることもできます。もし私の債権者が東から来たら私は西へ、もし北から来たら私は南へ行きますので、私を見つけることができないでしょう」と答えました。佛は「罪の報いと福の報いからは、逃れられない」と目犍連に伝えました。

 目犍連は神足通を使い、絶え間なく飛び続けました。しかし、彼は突然山の奥に落ち、丁度そこにいたお爺さんの目の前に落ちてしまいました。そのお爺さんは車輪の修理人でした。突然目の前に落ちて来た目犍連を見て、不吉な人物だと思い、お爺さんは思い切り車輪を振り回し、目犍連を骨折させました。目犍連は痛いのをじっと堪え、佛への一心な気持ちで耐えました。釈迦牟尼は彼を憐れみ、彼に神通力を伝授しました。目犍連は心を静め、徐々に本来の姿に戻りました。

 釈迦牟尼は、「あの爺さんは前世ではあなたの父親だった。彼と喧嘩した時、あなたは心の中で、骨折して大けがをしたらいいのにと思っていた。このような邪念により、ひどい目に遭ったのだ。肝に銘じておくべきことは、人に善行を施し、衆生に慈悲を持って接し、常に自分の言動、心念にも気をつけることだ」と目犍連に告げた。目犍連はついに因果を悟り、すべての妄念を払う事に努め、修行に専念した。彼は、慈悲に満ちた心で衆生を感化させ、最後には修行が成就したという。

 人は常に善念を持つべきであり、妄念、邪念を生じてはいけません。自分の中にある不正な考えは常に取り除き、善悪に報いがあることを知り、道徳を重んじることで良い結果を得ることができるでしょう。
 

(翻訳編集・蘭因)