新疆・チベットなどに9.2兆円開発プロジェクト 専門家「金では民族問題を解決できない」

【大紀元日本7月9日】7月5日、新疆ウイグル自治区でウイグル人による大規模抗議事件が発生して1周年にあたる日に、中国の政府機関「国家発展および改革委員会」は、新疆を含む西部地区開発プロジェクトの最新内容を発表した。23項目に及ぶ重要なプロジェクトが新たに追加され、投資総額は6822億元(約9兆2千億円)に達する。

発表によると、同開発プロジェクトの範囲は新疆の北西部、チベット、内モンゴル、四川、雲南などの省・自治区にわたり、今年からスタートする。主に鉄道、道路、空港、炭鉱開発、原子力発電所、電力供給ネットワークに投じられる。中国市場の内需を拡大し、西部地区の経済発展を促進することが目的だ。

中国が最近発表した二つの経済指数から、6月に製造業が鈍化したことが読み取れる。温家宝首相が中国経済の情勢について「多くのジレンマ」と発言した直後の発表であるだけに、専門家の注目を集めている。

米国のミズーリ州立大学で中国問題を専門とする楊力宇・名誉教授はメディアの取材に応え、同開発プロジェクトについて、次のような見解を示した。

「中国政府が北西部の開発にこれほどの巨額資金を投じる理由は、主に3つ考えられる。1)北西地区の戦略的な地位の確保、特に新疆。2)現在、大量の資源が必要。特に石油と天然ガス。新疆はこの2種類の資源に非常に恵まれている。3)西部大開発を通して、これらの地区の貧富の差を縮小させる」

中国政府発表のデータによれば、2000年から2009年までに、西部大開発には120項目の主要プロジェクトに対して、2.2兆元(約30兆円)が投じられたという。

一方、米国民間機構「中国情報センター」の楊莉黎氏は、同プロジェクトに否定的な見解を示す。

「(同開発プロジェクトを)楽観的に受け止めてはならない。中国政府は、北西部地区でここ数年にわたって起きている重要な問題を認識していないのではないか。すなわち、民族の問題、宗教信仰、もちろん、政治体制の問題は、これらの地区が抱えている重要な問題である」

「経済手段でこれらの問題を解決するやり方は、漢族が集中する東部地区では一定の効果を上げた。つまり、金儲けと聞くと、夢中になって取り組み、多くの政治問題には以前のように関心を持たなくなった。一方、北西部地区で、金銭への魅力が宗教の信仰、民族の問題などを薄れさせることができるだろうか。薄れさせる可能性はとても低いと思う」と楊氏は語っている。

そのほか、ドイツの日刊紙「南ドイツ新聞」は本件に関連して、「北京は金銭で安定を買う」と題する記事を掲載。新疆での大規模抗議活動から1周年経ったその日に、中国政府がこの開発プロジェクトを発表したのは、決して偶然なことではないとして、「新疆の民族衝突への関心をそらすため」と評している。

(翻訳編集・叶子)
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