中国、金正日総書記の訪中で「米国の東アジア戦略を威喝」=専門家

【大紀元日本8月31日】中国新華社通信は30日、北朝鮮金正日・総書記が26日から30日に、胡錦濤・国家主席の招待で中国を非公式訪問し、27日に長春市で胡錦濤・国家主席と会談したと伝えた。

26日に中国入りした金総書記一行はまず吉林省の吉林市を訪問、27日、28日に同省の長春市を訪れ、胡主席との首脳会談した。29日に黒竜江省のハルピン、30日に同省の牡丹江を経由し、延辺朝鮮族自治州の図們に到着、午後7時頃に北朝鮮の南陽に渡ったという。

また、27日の金総書記と胡主席の首脳会談の中、金総書記は「北朝鮮は朝鮮半島の非核化に向けた方針に変わりはなく、朝鮮半島の緊張を望んでいない」と主張。「中国との緊密な連携と協力を通じ、6カ国協議の早期再開を推進し、朝鮮半島の緊張緩和と平和安定を望んでいる」と述べたと、新華社通信が伝えた。

今回の訪中目的については、三男ジョンウン氏への権力移譲のための中国側の支持や、北朝鮮国内の深刻な水害への援助要請、訪朝したカーター元米大統領を振って中国訪問で中朝親善をアピールするためなど、さまざまな見方がある。その一方で一部の専門家の間では、今回の金総書記の訪中は、中国政府が米韓合同軍事演習や米国の北朝鮮制裁を含む東アジアでの新戦略への牽制を図るために利用したと分析している。

米国の「中米精神心理学研究所」顧問・孫延軍氏は、金総書記がカーター元米大統領の訪朝期間中に中国を訪れることは、米国に「意地」を見せていると分析している。また、北朝鮮が「意地」や「見栄」を張れる背景には政治・経済・軍事などすべての面での中国当局の後ろ盾の存在があると指摘した。

孫氏によると、米国の東アジアでの新戦略を牽制・威喝したい中国当局にとって、北朝鮮は残り僅かのカードである。このカードを切ることでその脅しをより赤裸々なものにしたと孫氏は分析する。

中国政治情勢評論家で、米中国語政治情報誌・中国事務の伍凡編集長もこの点について、米国はアジア版NATOの構築を進めており、中国共産党政府への包囲と牽制を強めていると述べた。特に「天安艦」事件以降に、米国は韓国との軍事同盟を強化し、ベトナムとの軍事演習に空母を派遣するなど積極的な動きを見せている。これらの動きに対し、中国当局は警戒と恐喝を示すために、金総書記の訪中を利用したと分析している。

北朝鮮の衰弱した経済に、米国が主導する国際社会からの経済制裁や、最近の水害が追い打ちとなっている。このような状況下で、中国は北朝鮮の唯一頼れる国だ。9月に開催される党大会の前になんとしても援助に漕ぎ付け、国民の不満を紛らわしたいとの金総書記の狙いが窺える。実際、金総書記の専用特別列車が帰国の途に着いたやいなや、北朝鮮メディアはすでに中国が北朝鮮に緊急救援物質を提供する意向だと報道している。

一方、クリントン米国務長官は26日、6カ国協議の再開は、北朝鮮の具体的な行動・挑発行為への自粛を条件とし、これによって初めて協議は効果的なものとなると述べた。

(翻訳編集・張YH)
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