直訴者逮捕、1人につき20万元罰金 中国政府の必殺技

【大紀元日本3月7日】 中国では中央政府の主要会議の会期中に、全国各地からは大勢の人が北京に押し寄せて、直訴を試みるのが慣例だ。一方、社会の安定を脅かすなどの理由で、このような直訴者は往々にして地元に強制送還される。今年は、その取締が一層強化された。内部情報筋によると、逮捕した1人につき、その居住地の地方政府は北京市警察当局に20万元の罰金を払わなければならない。

3月は「両会」、10月には「十八大」という最高指導部の主要会議が開催される。それを受けて、2月末、北京市では社会安定を維持するための緊急会議が召集された。市共産党委員会の副書記長・王安順氏はその席で、社会安定の維持は最重要の政治任務であると通達した。

インターネット情報によると、今回の「両会」の期間中に、警備にあたる人数は計70万人、「両会」の参加者を多めに予測して5千人と想定した場合、平均1人の参加者は140人の警護を受けることになる。

北京市政府機関に勤めるある幹部は大紀元時報の取材に対して、その一部を証言した。

それによると、今回、直訴者を逮捕したら、警察当局はこれまでのように監禁するのではなく、直接地方政府の北京駐在局に身柄を引き渡す。そして、1人の直訴者につき、地方政府は20万元(約260万円)の金を上納する。その狙いは、警察当局の取締強化を刺激するほか、各地方政府に陳情者を地元に封じ込めさせる。まさに一石二鳥の策である。

この幹部曰く、去年年初中東やアフリカで発生した民主活動・ジャスミン革命が北京で勃発するのを防ぐためだという。

「重慶市の副市長・王立軍が成都市の米国領事館に逃げ込み、政治庇護を求めたこと、そして、王立軍の身柄を取り戻すため、その上司、同市の共産党委員会の薄煕来・書記長は70台のパトカーを動員して、同米国領事館を包囲したこと。このような大事件すら、最高指導部は会期中の安定維持のため、隠し通そうとしている」と同幹部は分析した。

河北省在住の直訴者・李鳳華さんは大紀元時報の電話取材で実体験を証言した。

それによると、直訴を受付ける中央機関「国家信訪弁公室」では3月1日、各地方政府の関係者が溢れ出していた。その風景はまるで警察と競って、陳情者を奪い合っていた。2月28日、彼女は北京南駅で警察官らが直訴者を逮捕する現場を目の当たりにした。大勢の警官が人間の壁を作って直訴者らしき人物を包囲し、現場から強制連行していた。現場を写真撮影することすら出来なかった。

「多くの直訴者は強制送還されてから、監禁施設に投獄されたり、自宅で監視されたりしている」と李さんは話した。

ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の関連報道は、遼寧省在住の直訴者・馮偉さんの遭遇した状況を伝えた。それによると、馮偉さんは北京に到着した当日、「国家信訪弁公室」に訪れてから、旅館に戻った直後、警官数10人が旅館に押し寄せ、彼女を地元に送り返して投獄した。

取締の対象は直訴者だけではない。全国各地の民主・人権活動家たちも、「重点な警戒対象」として厳しい監視を受けている。VOAによると、山東大学の元教授の孫文広氏は例年通り「特別な世話」を受けている。警察チームは4交代で24時間の監視体制を敷き、このような状況は「両会」が終了するまで続く見込み。

人身の自由が制限されるのを避けるため、一部の政権異議者は自ら北京を離れた。また、公で不謹慎な発言を自粛するという誓約書に署名を強要された人も少なくない。ウェプサイトでは、一部の有名人権・民主活動家のIDが使えなくなったという。

中国政府がこのほど公表した2011年の統計によると、社会安定を維持する経費ははじめて軍事費用を超え、6240億人民元(約8.1兆円)に達した。

 (記者・唐銘、翻訳編集・叶子)

※タイトルと一部文章を修正しました。(3月9日10時)

関連記事
人口約740万人の香港では、中共ウイルス(新型コロナ)の感染者が急増している。衛生当局によると、2月28日に3万4466人の感染者が新たに確認され、死者は87人。1日の感染者数としては過去最多となった。
改革開放以来、中国でかつていなかった超富裕層が急ピッチに増えた。中国共産党(以下、中共)は一時、彼らを体制に迎え入れ、歴代の最高指導者も彼らの心を和ませる言葉を贈ったり、中共の仲間になったと思い込ませた。しかし、幸せな日々は終わりに向かっているようだ。
カタールの放送局アルジャジーラの独占調査レポートで公開した、密かに海外移住した人の多くは中国共産党の最高意思決定機構「両会」のメンバーであることを明らかにした。
中国当局は現在北京で両会(全国人民代表大会と全国人民政治協商会議)を開催している。当局は過去最高レベルの維穏(社会安定の維持)態勢を整えている。一部のネットユーザーによると、国内の携帯電話の通信速度を4G(第4世代)から2G(第2世代)に変わった。専門家は、中国当局はネット規制のため、意図的に通信速度を低速化したと指摘した。
中国では年一度の政治行事である両会(全国人民代表大会と全国人民政治協商会議)の開催を迎えた。3月3日中国当局の国政諮問機関、全国人民政治協商会議(政協)第13期全国委員会第2回会議が北京で開幕した。中国共産党中央政治局常務委員で、党内序列4位の汪洋・政協主席は同日、2000人以上の政協委員に向けて活動報告し、中国共産党政権は現在「様々なリスクと課題に直面している」と強調した。